2009/10/4
顕微鏡で見る俯瞰図
勉強の合間にちょっと脱線して、Len Lyeの処女作”Tusalava”(1929)を観る。「ヨーロッパ前衛芸術とポリネシアの原住民の画像が混じり合う」作品らしい。題名『テュサラバ』はサモア諸島の言葉で「万物は循環する(究極的にすべてのものは同一であるとも)」という意味らしい。
最初、縦三つに区切られた空間において、抽象図形がそれぞれの早さ、動きでもって上へ上へと移動していく。一番右の領域には水泡のような円が浮かび、円の連なった芋虫のような図形が現れる。真ん中の領域には、左右それぞれの要素を取り合わせたような図形がうごめいている。独特の動きはウィルスや微生物にも似て、眺めているうちに顕微鏡で観察しているような不思議な気分に陥る。そうこうするうちに、新たな動きが現れる。右の領域にあった図形が境目を侵犯し、右の領域へと入り込むのだ。ここから、元々は違った図形同士互いに影響を与え合い、結合、進化を繰り返しながら、常に新しい形へと変貌を遂げていくかのように見えるのだが、実際は、世界に存在する物質量は変化しないので、形象の変化だけが起こっているのだという事実に気がつく。しかしその形象の変化があまりにも複雑な様相を呈するので、我々の目はくらまされてしまいそうになる。
人間はもしかすると、「変化」を「進化」と勘違いしているだけなのかもしれない。フィルムの最後、生き物のような形をしたものが、最初は卵形だった図形をいじくり回し、変形させ、吸い取っているように見える場面が出てくる。それはポリネシアの原住民が搾取される様子とも取れるし、もっと大きな枠組みでとらえると、人間が地球を消耗品として利用する様を表しているようにも思われるのだ。
1
