「【天皇陛下ご即位20年】(中)ご負担軽減 議論の時。」
社会情勢
産経新聞【天皇陛下ご即位20年】の中編。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/090105/imp0901052216002-n1.htm
>昨年12月2日、天皇、皇后両陛下は東京都北区の都障害者総合スポーツセンターを訪れ、さまざまなスポーツに励む障害者を激励された。気温9度。12月としては厳しい寒さのなか、常に笑顔で話しかけられる。障害者スポーツの振興は皇太子・同妃時代から取り組まれたライフワークでもある。
「どうぞお元気で!」。お帰りの際、陛下が見送りの人々にかけられたお声はいつになく大きかった。
ご体調に異変があったのはその日の夜。血圧が普段より明らかに上昇し、翌3日から一時ご公務を控えられた。5日の胃カメラ検査で胃や十二指腸にただれや出血跡が見られ、「急性胃粘膜病変」と診断された。原因は精神的、肉体的なストレスが考えられるという。
「陛下は決して『疲れた』という言葉を口にされない」と側近の一人はいう。
だが国民に見せる笑顔の裏で、陛下は胃がただれるほどのストレスに耐えられていたことになる。
ストレスの原因をめぐってはさまざまな憶測を呼んでいるが、宮内庁関係者の話から確実にいえることは、陛下の日々のご生活は質素で規則正しく、そしてご多忙だということだ。
側近によると、陛下は毎朝午前6時にはお目覚めになり、まず、テレビニュースをごらんになっているご様子だ。日々のお食事も決して豪華なものではなく、普通の家庭のごくありふれたメニューをバランスよく召し上がる。時には、皇后さまがお作りになった品が並ぶこともあるという。食べ物の好き嫌いをいわれることはない。
おそばで仕える侍従も「さん」付けで呼ばれる。ご執務のある日は、御所から徒歩で宮殿に向かわれることが多い。法律の公布など国事行為に関する書類に目を通し、ご署名と捺印(なついん)をされる。昨年の誕生日までの1年間でその数は1074件に上った。
また、同じ期間に地方8府県を公式にご訪問、東京都内や近郊へのお出かけも49回に上った。その他、国内外の要人との面会や宮中祭祀(さいし)などもあり、「毎日のスケジュールは分刻み」(元側近)だ。
お目覚めが早いので早くやすまれるのかとも思うが、夜は午後10時半以降になっても文書作りなどお仕事の準備をされていることもあるという。
すでに75歳。一般国民なら“後期高齢者”に当たる世代だが、陛下はリタイアすることはできない。多忙で禁欲的なご生活はこれからも続く。
陛下は平成15年初めに前立腺がんの摘出手術を受けられている。しかも、その治療の一環で現在も腹部にホルモン注射を打つ治療を定期的に受けられている。74歳になられた皇后さまも19年3月に腸壁からの出血が確認されるなど、ご健康面で心配な面もある。両陛下のご負担をできるかぎり軽減することでは、だれにも異論はないだろう。
実は、陛下のご負担軽減は、宮内庁にとって以前からの懸案事項だった。
昨年3月、宮内庁は「両陛下のご負担を軽減する観点から、祭祀の態様について所要の調整を行う」として、ご即位20年を超える今年から宮中祭祀のあり方を見直す方針を明らかにしている。陛下はなるべくご自身でお仕事をなさりたいご姿勢だが、宮内庁が祭祀のご負担を考慮して陛下に軽減をお願いした形だ。
昨年末の体調不良を受けた今回のご負担軽減は、医師団から申し出て受け入れられた。金沢一郎・皇室医務主管は「陛下が受けてくださったのはお珍しい。ありがたいこと」と述べている。
宮内庁は年末年始のご負担軽減について、(1)今すぐやらなくていいものは延期する(2)時限性があり先延ばしができないものは行う(3)記者会見などご負担が相当あると判断されるものは個々に検討する(4)宮中祭祀は原則として代拝−とのガイドラインを示している。
宮内庁の羽毛田信吾長官も昨年12月11日の記者会見で「陛下は確かにご多忙だが、『陛下でなければ』というお務めでもある。入念な準備の上、相手と心が通う形で大切にやっておられる。そういうプロセスを抜きにして、ただ『ご多忙だから』ということでこの問題をとらえられるのは抵抗がある」と述べている。
当面、行事をバッサリ切ることはせず、時間短縮などの方法でご負担軽減を図ることになりそうだが、今後の長期的なご負担軽減にあたっては、宮中祭祀をどうするかが大きな問題として残る。
祭祀は陛下にとって肉体的ご負担が大きく、国民の目にも触れにくい行事ではあるが、国家・国民の安寧、五穀豊穣(ほうじょう)を陛下が自ら祈られる点で、極めて意義が大きい。
旧皇族の竹田家に生まれ、明治天皇の玄孫(やしゃご)に当たる作家、竹田恒泰氏は「確かに昭和末期にも祭祀は簡略化されたが、陛下のご即位後は旧来のスタイルに戻されている。陛下は国民の幸せを祈られているのであり、祭祀の簡略化をするなら、あくまで暫定的なものとすべきだ」と強調する。
「国と国民のために尽くす」という姿勢を貫かれている陛下のご負担の軽減に、国民も無関心ではいられない。国民も参加して十分に議論する必要がある。