2009/7/27

小説 母と私とTシャツ(短編)  小説

制服からフードつきTシャツとズボンのルームウェアに着替えると、
ルルは冷凍庫からアイスクリームを取った。
TVを見ようとリビングに行くと、布張りのソファに洗濯物が無造作に置かれていた。

(あ、探していたTシャツだ)

それは、ルルのお気に入りのTシャツ。
渋谷109のショップで見つけていたものの、高くて買えなかったTシャツ。
セールで半額になり、やっと手に入った物だ。

手にとって広げると、丸首のネックがだれている。
プリントの女の子が、まるでダイエットを辞めてリバウンドをしたようだ。
ルルはつけない、きつい香水の香りが鼻につく。

(ああーっ、お気に入りなのに。おまけに臭いー!)

「お母さん、これ、どうしたの?」

母は、庭の木や花にホースで水をやっていた。

「友達と会った時、たまたまあったから着ちゃった」

お母さんが大きな体を揺らしながら、首からさげたタオルで暑そうに汗を拭いている。

「のびてんだけど。これ、私のお気に入りなんだよー!
サイズが違うんだから、無理して着ることないじゃん!」
「ゴメンね、急いでたのよ。あ、伸びちゃってるわねー」

母がTシャツを見て、のんきな声で言う。

「伸びちゃってるじゃないわよー!これ、お気に入りなのにー!」
「なら、さっさとしまいなさいよ。出しておくから着られちゃうんじゃない。
それから洗濯物、たたみなさいよ。ほとんどあんたのもんなんだからね!」

母が大きな声で言った。

アイスをスプーンですくいながら、ルルは「はーい」と返事をした。

次の日。
母が夕方まで外出のため、夕食はお弁当だ。
TVを見ながら食べていると、母が帰ってきた。

「これ、おみやげ」

そう言うと、きれいな色の手提げから、ビニールの袋を取り出した。

「友達と一緒に探したのよ。これ、ルルに似合うんじゃない?」

ビニールにはブランド名が。
あ、これ、超お上品で知られているブランドだ。
見ると、レースのフリフリが流行遅れな感じで飾られている。

「ありがとう」

笑顔でお礼を言った。

「よかった、ルルが気に入ってくれて」

母はほっとしたようである。

ありえないデザインのTシャツ。
でも、母が一生懸命探してくれたもの。

「お母さん、今度の日曜日、どこかに出かけない?」

ルルはTシャツを着ている自分を思い浮かべていた。








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タグ: 小説 文学 





2009/8/7  18:06

投稿者:rain

つるさん、コメントありがとうございます。
レスが遅くなってすみません。
設定を変えたので、これからは普通にコメントできます_(__;)ゞ ごめんなさい

つるさんは、ルルのお母さん寄りですか。
私もお母さん寄りですねー。

Tシャツとか、自分の気に入った物は相手も好きだろうって思って買ってきちゃうほうです。

この話は、おしゃれなルルの服をおっちょこちょいのお母さんが着て伸ばしたあげく、変な服を買ってきちゃったっていうコメディのつもりです。

これが本当の話だとしたら・・・
好みもあるし、好きな人にプレゼントをするって、
難しいですね(^^;)








2009/8/7  16:27

投稿者:つる

ああ、おかあさんの気持ちわかります。うしろめたいくせに反撃にでちゃうのよね。
わたしも、頼まれもしないのに、勝手にこどもたちのTシャツとか買ってくることありますよ。受け取ったからって、気に入ったわけじゃないって、わかってはいるんだけど。
完全に母よりに感情移入して読みました。ルルがやさしい子でよかったわ。

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