とある晴れた日、友人宅にて私は『お宝』を発見しました。
「あっローラースルーゴーゴー!!懐かしー」
「なんですかそれ。これはキックボードというものです。または『けりんちょ』とも」
「(聞いていない)いいないいな〜、ねえ貸して乗せて触らせて!」
「…いいですよ」
友人はしぶしぶ貸してくれました。
こどもの頃欲しくて欲しくて、でも買ってもらえなかった乗り物。
今はもっとスピードが出る乗り物に乗ることができるようになっても、幼かった頃のあのワクワク感は忘れていない。
私は車輪の付いたものが大好きだ。自転車バイク三輪車ローラースケート、自動車だけはちょっと苦手。
頼りないハンドルを手に滑り出すボード。おお、なかなかの乗り心地ではありませんか。片足を乗せて順調にスピードアップし始めたころ、背後から声が掛かった。
「あっ。その先坂道になってますから気をつけてー」
えっマジですかー?でもたぶん平気よスピードには慣れてるから(じょじょに加速)
「ただの坂道じゃないすよ、カーブついてますー危ないですうー」
ええっ?そうだったの??あっ…本当にカーブ…(さらに加速)ねえっこの車ブレーキどこおおー!?
「付いてませんよブレーキなんか。だって本来そんなスピード出す車じゃないし…てゆーかありえないーその速度ーーー!!キャーーー!!」(友人すごい後ろから叫ぶ)
エエエエまーじでーーーー??(がっしゃーーーん)
正味50km/hくらいは出ていたと思います。その勢いで横倒しに地べたへ叩きつけられ、呼吸が止まりそうになるなか、ポケットから携帯がすっ飛んでいくのを見ながら
「携帯壊れたらたいへん、こないだトイレに水没して換えたばっかりなのに。それより怪我したら明日の仕事すごい困るし…そんで今ここで誰も通らないといいな恥ずかしいから。そんで今目の前に…目の前に犬のうんちが…やばかった…」
みたいなことを0.02秒くらいで高速で考える。
でも私はバースカラー紫苑の女。
紫苑つよいこ!!紫苑負けない!!
打たれ強い!!使命感!!(←今はあんま関係ない)
気力で立ち上がろうとサンショウウオのようにもがく私の背中からシャッター音が聞こえます。
「ちょっと……なに撮影してんの…(激痛&怒)」
「いや、イイトシした人がはしゃいであんなに見事に転倒したの見たの初めてだったんで。記念にと思って」
「記念とかってアンタ…それより早く起こして…」
よろばう私を助け起こしてくれた友人の頬には涙の筋が光っていました。笑い泣きの涙が。
人間は年を取ると体の痛みより
心の打撲のほうがこたえるとつくづく思い知る早春の午後でした。
いま、向う脛が両足ともサツマイモみたいな色になっています。
やっぱり私は生まれついての
紫苑の女…

(事故直後の著者近影)