「昨日ライトアップされていたのは、この図書館です。」
朝食は06:30からだというのだけれど、添乗員がなぜか「良いですか、06:30前には食堂に決していかないで下さい」と強調する。中に入ればそりゃ邪魔になるのかも知れないが、外にいてもいけないというのはいったい何を意味するのだろうか。出発が午前8時45分だと強調するので時差の関係から早朝に眼が覚めてしまうのだから指定時間過ぎにすぐ食堂に入った。スコットランドではあるけれどイングリッシュ・ブレックファストの朝食を取り、部屋に帰って荷物をつくる。
テレビのBBC-1の「Breakfast」の画面の時計を見ていて、10分前に部屋を出る。荷物は自分で持っていくのだけれど、エレベーターがなかなか来ない。来ても一杯だ。ようやくロビーに降りるとその添乗員がものすごい剣幕で「何やってんですか、急いで下さい!皆さん待っていますよ!」と怒鳴る。初日から怒鳴られるとはビックリだ。そんなに遅いわけはないはずだけれども、と思ってロビーにある時計を見ると時計が進んでいて8時53分を示している。あれ?おかしいなぁとは思いながら「テレビの時計を見ていたから・・」とまで云うが添乗員は聞く耳を持たない。とりあえず「お待たせして申し訳ありません!」と云いながらバスに乗り込む。バスの時計を見ると8時44分を示している。全く納得ができない。
Edinburghの街に近づくとなんと雨がちらついている。霧雨という雰囲気で視界が効かない。街の中で乗り込んで来られたガイドの方はEdinburgh在住の日本人の中年女性である。実は朝一番の添乗員の金切り声からかなり自分としては不愉快感が醸成されていたものだから、このガイドの方のお話がとても冷静で気に入った。
ニュー・タウンからオールド・タウンへ入っていったと思うのだけれどもあまり地理がわかっていないのでどこにいるのかすっかりわからない。挙げ句の果てにこの霧だから、遠くがよく見えない。必ず観光客が「お〜!」と声を上げるであろうEdinburghのお城が見えるところにやってきても、霧にむせんでいる。
Holyroodの見学、さまざまなモニュメントを通り過ぎ、Edinburgh Castleの中で王室の剣、冠、何タラの石なんかが展示されているものを群がってみて、小さな教会を見ながら霧で全く見られないEdinburghの街並みを望む。しかし、実際の話、頭のチャンネルがまだスコットランド・モードに切り替わっていない状態でこれだけの情報を目の前にすると全く消化しきれなくなるのだと云うことが明確だ。そもそも英国王室がEdinburgh滞在中の公式住居であるthe Palace of Holyroodhouseの門から中を覗き込んでいる時も(時間が許されていなくて中に入ることは全く不可能)、記憶に残っているのは門と、トイレと石垣の壁に残っていたエンブレムくらいのものである。
Edinburgh CastleからHolyroodを結ぶ道路、Royal Mileも昔ながらの街がそのままそっくりと残って観光客を呑み込む巨大非日常空間と化してる気がしてバスを降りてゆっくり歩いてみたい誘惑に駆られる。少なくても2-3日は滞在しないといかんのではないのか、と連れあいにいうと36年前にこの地に3日間滞在したことがあると云われてビックリしたのだけれど、この通りは土産物屋ばかりですぐに飽きるのだというのである。Edinburghに汽車でやってきたという話は聞いていたが3日も滞在していたのか。そうか、土産物屋ばかりだという点では表通りはSydneyでいえばThe Rocksと同じかも知れない。
そういわれて観光客の車やバスで大混雑する中で両側の店を覗き込むと例のスコッツがフォーマルな時に着るというキルトという名前のスカートやタータン・チェックの帽子やら前にぶら下げるバッグ、厚手のストッキングなんてものを拡げている店が軒並みにある。多分こうした街では裏通りに渋い建物が続いているんだろう。(追加:080524:どうやら最近知った話ではキルトはスコットランド特有のものではなかった様である。むしろそのオリジナリティはイングランドにある様だ。)

「エジンバラ城の入口」
Edinburgh Castle正面でバスを降りると、なんと周囲は仮設の座席でぐるりと囲まれている。一体全体これはなんなんだとガイドに尋ねると、え、知らないの?という雰囲気である。ご説明をおうかがいしてみると毎年8月-9月にかけて開かれる「Edinburgh International Festival」のための会場になるからだという。全世界からこのフェスティバルのために観光客がこの町に集まってくるのだというのだが、無知蒙昧の輩である私はこれまでにこのフェスティバルの話を全く聴いたことがなかった。
こちらにそのオフィシャル・サイトがある。
そしてそのイベントのひとつであるEdinburgh Military Tattooというイベントがまさにこのthe Castle Esplanadeで繰り広げられるというわけである。このイベントの様子はCDやDVDの形になって販売されているそうで、金管好きの私としては買ってくるんだったなぁと後悔の念大である。勿論公式サイトで通信購買をするとことも可能のようだけれどもどうも私の通信環境では許してくれていないらしい。このイベントは今年は8月3-25日に催されるという。オフィシャル・サイトによれば30ヶ国にテレビ中継されるというのだから、きっとどこかのチャンネルで見ることが出来るのかも知れない。(2008年は6日-31日)
ちなみにこの「Tattoo」は「入れ墨」じゃなくて「トトトンと打つこと」「(余興として夜間に野外で行う)軍楽行進」という意味でこっちの方が辞書を引くと上に書いてある(ジーニアス英和辞典)。ウェブ上でも切符が買えるのだというのだけれど今頃になってアクセスしてみるとものの見事に「売り切れさぁ〜!」と書いてある。但し2日、つまり公式オープン日の前日のプレビューは半額で非常に限定された数が7月23日の午前10時から販売されると書いてある。Google map, UKで空中写真を見るといつ撮ったのか知らないがお城の入り口にはバスが三台と仮設客席が周囲をぐるりと囲んでいる。ひょとするとあの観客席はいつでも設置されているとでも?まさかぁ・・。

城の中には小さなSt. Margaretという名前の教会がある。大砲の傍である。中に入ってみると本当に小さいもので、何故か知らないがおそろいの赤いウィンド・ブレーカーを着た一行が中のベンチに座ってフランス語で何かを読んで皆がそれに聞き入っている。フランス、あるいはスイスからでもやってきた観光旅行のご一行様に「添乗員」が説明を読んでいるのだろうか。

そのうちスコッツのあのフォーマル・ウェアを着たごっつい感じのまるでラグビーのフォワードかと思われる体格の男が二人肩をゆらしながらやってくる。傍には白いリボンを張り巡らした結婚式用の車が停まっている。どうやらこの小さな教会で結婚式を挙げようと云う連中がいるらしい。今日はまだ金曜日だというのにねぇ。
集合場所とされていたお城の正面に戻ってくると次から次へと結婚式のパーティーに出席するのでなければ今時そんな格好をして霧雨の古城にはやってこないだろうという若者たちが集まってくる。
入口の横の門番用の小屋の前に歳の頃なら70前後とおぼしき女性が二人頭からすっぽりと被るフードの付いたコートを着て立ちつくしている。そのうちの一人はどう見ても東洋人であり、どうやら私の目には日系ではないかと思われるのである。いったい何を、いや、誰を待っておられるのであろうかと思うと同時に一体この方はどんな人生経路を経て今、この年齢でこの地におられるのかと考えてしまう。
このお城の入場料金はゲートに向かって右側に建っているあたかもプレハブのようなほとんど色気のない小屋で買うことができるのだけれど、5歳以上15歳までは£5.50で、16歳から59歳まではひとり£11.00、60歳以上は£9.00である。
私は添乗員の手配で入場したものだから全く値段がわからずに、切符売り場で買いに来る人の案内をしている女性にいくらするの?とお尋ねしたら彼女が霧雨の中胸ポケットから取りだしたのは「Explore Historic Scotland」なるリーフレットで、「EXPLORER PASSを使って5000年のスコットランドの歴史を訪ねよう」と書いてある。裏には75ヶ所の歴史的ポイントが記されており、大人だと5日間有効でそのうち3日間使えるパスが£19.00、14日間有効でそのうち7日間使えるパスが£27.00、30日有効でそのうち10日間使えるパスが£32.00だと書いてある。料金表にはシニア料金(とは書いてなくて英語ではconcessionと記されている)、そして家族料金が設定してあると書いてある。詳細は
こちらにあるがこういうシステムを覗いてしまうと、バックパッカーズを渡り歩きながらこうした切符で巡り歩くなんてことを体力のある時になんでしなかったのだろうかと視野が狭かった、いやすぐに尻込みをして出かけなかった自分がまことに残念だ。今からでも遅くないのか、と自問するがどうだろう。
さて、初日のお昼御飯はニュー・タウンにあるホテルで「スコッチ・エッグ」と書いてあるのだけれども、何もそんなにこてこてなメニューをご覧に入れてくれなくても良さそうなもので、こんなホテルでたった一個のスコッチエッグを半割にして拡げてお皿にのっけ、全くのつきあわせのないものをナイフとフォークで戴くのはどう考えても、いくら「スコッチ・エッグはこうした冷たいものをそのまま食べるのがこちらの食べ方でして、日本ではアツアツにソースをかけて頂くというとビックリされちゃうんですよ、良いですか」と云われても良くはないのだ。百歩譲ってスコッツはそうして食べるのだとしよう。それならそれで、事前にご説明を戴きたいものである。全く味のないただすり下ろした人参と何かを煮ただけとおぼしきスープとともに初日のランチを前にして私は不平不満の塊となり、ますます添乗員への不信感が募るばかりである。彼女のせいでもないのに。じゃ、だれのせいなんだ・・。なぁんて。
そんなことはさておいて、どこを向いてもカメラを構えたくなるEdinburghの街並み、霧にしっとりと包まれた風情は実に悠久の時の流れを語る。しかし、元々選ばれた人たちのための高級住宅街として開発されてきた歴史上の経緯を考え、また現在でも高い家賃で構成されているといわれる地域を考えると果たして暮らしやすい街なのかどうかという疑問はわくが、私たちにとっては誠に非日常的な光景の連続で、初日であるという点を加味しても興味は尽きない。


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