古い話だがDSC-W1について書くのだ。
いつものように歳末ジャンクカメラを見回ってたらソニーのDSC-P(なんとか)の4メガモデルを見つけた。Pシリーズはひとつもないのとメモリースティックが三本付属というのにグラングランしたが、その場は冷静になって店を出たのだ。
しかし3千円でバッテリーもチャージャーもついてるし、PROじゃないスティックは旧型のソニーデジカメには必需品(しかも手元にいっぱいあるのだ)。「メモステだけでも買う価値あるなぁ」と考え直して出向いたら案の定売れてました。
この傷ついた物欲を癒すには「新たなデジカメをお迎えするしかない」なははは(^_^;)
なんて考えながら久しぶりにバザールに行ってみたら「移転しました」の張り紙が。なぁんと表通りに面したビルの1Fにちゃんとしたお店を構えてるじゃありませんか。「賃料払って利益出るのかな」なんて心配になりつつもお店にはいるのだ。
お店は立派になっても商品は同じなのが何だか嬉しい。店内も狭いせいかそこそこ混んでます。グルグル見回したけど物欲を刺激するカメラはなかった。
それでも新装開店祝いに何か一つくらい買って帰るのだ。
そこで見つけたのがこれ。正直言って現役時代はその存在すら知らなかった。だってちっともソニーらしくない。エンブレム変えたらエプソンかニコンのデジカメみたいだもん。これじゃ気がつきません。
そんでバッテリーは何型なんだろうと蓋を開けたら単3仕様だった。いきなり燃え上がる物欲。だってそれ以上の投資がいらないでしょ。(^_^;)
このW1、家系的にはSシリーズの血を引いていると思うのだ。ご存じSシリーズと言えば比較的ノーマルなスタイルで、逆に言うとサイバーショットの中では異端なデザイン。
SシリーズはVシリーズへと移っていくんだが、その廉価版として誕生したのが初代W1ではないじゃろか。
W1は現在のメインストリームであるTシリーズの初代T1と同時に発売された。そしてT1との差も歴然だ。外装にステンレスを用いたT1はスタイリッシュだけじゃなく高級感バッチリ。また同じ2.5インチ液晶でもW1のそれはT1より格下のものが使われているのだ。
何より「単3電池」というのが廉価の証左だ。この時代、既に一次電池仕様デジカメは一部を除いて「安売りの目玉品扱い」というのが各社の販売戦略になっていたのだ。
廉価という性格上、単3電池を使うコンパクトといえば簡便タイプでフルオートとシーンモード以外選択できないモデルが多いんだけど、W1にはちょっとした味付けが施されていた。
一つ目がレンズアダプタ装着可能なことだ。ソニーは長い間デジイチ市場に参入しなかったこととビデオカメラメーカーだったこともあって、意外とレンズアダプタが用意されているモデルが多いのだ。他社では普通このクラスに盛り込まれることの少ない機構だ。
またこのアダプタ用リングはレンズ周りを大きく見せることで外観上も有効なアクセントになってる。そう格好良いのだ。
もうひとつ気に入ったのがマニュアルフォーカス。0.5、1、3、5、7、∞のステップ式だけど、コンパクトデジカメの泣き所である薄暗いところでのAFの遅さをカバーできる。
最後にマニュアル露出。廉価版デジカメには珍しい機能だ。実際は絞りが二つしか選択できないから絞り優先派にはそれほどメリットがあるとは思えない。しかし実はシャッタースピードを選択固定できるというのにメリットがあるのだ。
最近のデジカメは「手ぶれ補正」が売りだが、いくら手ぶれ補正が効いても「被写体ブレ」は補正不可能。
これを防ぐには感度を上げるか、暗部のつぶれに目を瞑ってもシャッター速度を固定する必要がある。この時代は最高でISO400が限界、しかもその画質はノイズまみれとなると、シャッター優先かマニュアルのほうがありがたい。
S85の実質的後継モデルV1と比べるとデジカメは日進月歩だということを実感する。その恩恵を受けているのが液晶サイズ。V1の1.5型とW1の2.5型では比較にならない。W1の圧勝である。Vシリーズは後継モデルのV3で2.5インチになったがボディも大柄になってしまった。
そして「速さ」だ。中でも起動時間はV1の半分になった。そしてこの時間、レンズの飛び出さないT1より速いのだ。またシャッタータイムラグも全押しは1.3秒と普通だけど、シャッター半押しからのタイムラグは0.0009秒。これも速い。どちらもこのクラスからは想像できないスピードだ。
V1の泣き所だった小型バッテリー採用による「持ちの悪さ」は大幅に改善された。倍以上持つのだ。当然T1より持つ。黎明期の「蒸発単3バッテリー」に泣かされた私には夢のようなタフネスぶりだ。
最後に「分厚いなぁ」と感じたサイズなんだが、これが何故か今ではすっかりお気に入りなのだ。デジカメなんだけどどことなくノスタルジックな雰囲気が実に魅力的だ。
スクエアボディには両手で保持しやすいというメリットもある。光学ファインダーもあるから銀塩コンパクト感覚で撮影できる上に手ぶれも大幅に軽減できる。
全くノーマークだったソニーの廉価デジカメ。しかし、その中身を知るにつれ想像以上にカメラ好きの私を満足させる一台だったのだ。
Wシリーズは今も現役だが、バッテリーをリチウムに変更し薄型モデルになり、単3モデルは3機種で打ち切られた。やはり国内で単3仕様は売れないんだにゃ(特にソニーは)。
後日、ワイドコンバージョンレンズを発見した。見るとアダプタリングもついている。その日は買わなかったが、ヤフオクで見るとリングだけの落札価格より安いではないか。慌てて翌日買いに行く私。アホです(^_^;)


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