2005/12/2

ニューベットフォードのアートグラス(万次郎番外編)  敬愛する「ジョン・万次郎」

ニューベッドフォードの捕鯨博物館には、捕鯨産業によって生産された様々な製品も展示されていた。中でも「スクリムショウ(Scrimshaw)」は抹香鯨の歯に彫刻を施した高度な芸術品だった。博物館を2階へ上がって行くと、南北戦争の後、ニューベッドフォードで、捕鯨に代わって栄えた産業の工芸品等の展示があった。その中で、私の目が惹きつけられたのは、現在サンドイッチガラスの代表ブランドとも言われているPairpoint社の前身、マウントワシントングラス社のartglass作品だった。因みにPairpointのクリスタルガラスは、この地方の名産品、クランベリーに因んだクランベリー色のガラスが有名で、私もケープコッド半島を訪れた際に、1つずつ買い求めていた。
○Pairpoint社、HP  http://www.pairpoint.com/

クリックすると元のサイズで表示します鯨の歯に彫刻されたスクリムショウ。鯨の歯その物という高価な品から、お土産用キーホルダーまで多種作られている。

マウントワシントングラス社では、19世紀半ばから19世紀後半にかけて、技術的に難しい技法を開発し、優れたアート・ガラスを次々に生み出した。Burmese というタイプは、つや消しで、ピーチスキンのような表面に、色のグラデーションがかかっている。これらに様々な技法で柄付けした物で、マウントワシントングラス社が最も成功した作品であった。1893年のシカゴ万博には、ルビーグラスカンパニーとの契約で、白からピンクに窯変(ようへん)した作品を展示したとされている。

クリックすると元のサイズで表示します 窯変し色が変化した生地に、手描きされた花鳥の絵

レモンイエローからサーモンピンクに陰影がつくこのBurmeseタイプは、熱に敏感で、その窯の熱の加わり具合によって窯変する。(窯変とは、窯〔かま〕の温度が作り出す自然にできる色の柄) Burmeseタイプは、1881年、病欠のガラス職人の代わりに働いていた、フレディリック・シャーリー氏によって作られた。 シャーリー氏は、ガラスを作る為の原石を、色々と工夫する職人で、吹きガラス職人ではなかった。彼はルビーガラスカンパニーで働いていた時に、金色を定着させる為に苦労した経験が有り、その経験を元に原材料の混合物に、いくらかの酸化ウランを加えたのだ。その結果Burmeseタイプ は誕生した。Burmeseタイプは、偶然と経験が生み出した傑作だったのであった。 これは陶器の備前焼の「火襷(ヒダスキ)牡丹餅(ボタモチ))、瀬戸の「瀬戸黒」の誕生と似ている。実はこれら日本古来の焼き物も、偶然が重なり出来たとされているのだ。

クリックすると元のサイズで表示します 貴重なBurmeseタイプQueen's pattern

シャーリー氏が、造った作品の中で、最も有名なデコレーションは「Queen's pattern 」であった。宝石で飾られたドットと金を使用し、渦巻の花のパターンを作成している。このタイプは、英国のビクトリア女王に献上された。しかし、このガラス産業も石炭の値段の高騰とともに衰退の一途を辿り、遂に、大恐慌時には造られなくなってしまった。
現在、黄色或いは、白からピンクへのグラデーションに、窯変しただけの作品は、アンティークのオークションでも見つけられるが、このBurmeseのように飾り付けられたタイプを探すのは、容易ではないそうだ。あの柔らかな色のグラデーションと細かい絵付けを、実際に自分の目で見る事が出来て良かったと、改めて感謝した。

クリックすると元のサイズで表示しますマウントワシントングラス社のアートガラス(捕鯨博物館にて撮影)

○以下、ニューベッドホード、捕鯨博物館HP
http://www.whalingmuseum.org/
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