2005/12/25

スタントウーマン大河ドラマ出演の巻 その4  乗馬と馬について

ボスからの依頼でスタントを引き受けたものの、一体どう乗るのか心配だった。私はボスに電話をかけた。ボスは「あー、台本を送るよ」と軽くあしらった。数日後に送られて来た台本には、私の役どころ…なんて何処にも書いてなかった。隅から隅へと探していると、当り前だが、台詞ではなく、ト書きの所に赤鉛筆で印が書いてあった。『密書を持ち、早馬に乗り走るが途中で矢に打たれてしまう』→『少年兵士役』。
クリックすると元のサイズで表示します
『しょ、少年兵士?』せめて、矢に打たれたお姫様役にして欲しかった。いや、『くの一』でもいい。そう思って、ボスに電話して抗議するも、取りあってももらえず、台本が変えられる事はなかった。「準備するものは、度胸だけ」とも、ボスには言われた。何だか嫌な予感がして来た。そんな不安を他所に家族は、知人に「ほたるが、大河ドラマに出るよ」と自慢して話し歩いていた。私は、とうとう引くに引けなくなってしまった。不安に包まれながらも、当日を迎えた。ロケにはぴったりの雲一つ無い晴天だった。
クリックすると元のサイズで表示します「信長」のDVD…この映像から私を探すのは至難の業だ

ロケは長良川河川敷で行われた。しかしその前に、市内から30分程の『信長』の舞台セットの場所へ連れていかれた。見学の人だかりが出来ていた。ボスと一緒に「スタッフ」のIDを下げて入っていった。すると『信長』役の緒方直人の姿が見えた。的場浩司やマイケル富岡もいた。ボスは、すたこらと歩いて行き、鎧を着たある武将に話しかけている。いたく親しげだった。私もボスに呼ばれて近づいて行くと、秀吉役の仲村トオルだった。驚いた。仲村トオルもボスに乗馬を習った1人だったのだ。私は、すっかりミーハー気分で、今から自分が何をするのか?忘れてしまった程だった。
クリックすると元のサイズで表示します
暫くすると、長良川方面へ移動する事になった。その時、衣装係りの人が鎧と兜を持って来た。どうするんだろう?よく見ると『矢』が刺さったように接着されてあった。私はその鎧のガチャガチャという音が、やたら気になっていた。車は河川敷に到着した。既にカメラはセットされていた。車を降りると衣装係りの女性が寄って来て、「(鎧)着けられないよねー。自分では」と言った。当り前である。当時から着付も習っていたが、鎧なんて着た事がない。衣装係りの人は私服の上から着せてくれた。「えっ?これでいいのですか?」と聞いた私に「遠いから見えないよ。メイクも無しね」と彼女はさり気なく答えた。
クリックすると元のサイズで表示します
助監督らしき人が、私の傍に来て説明をし始めた。話が進む度に、恐らく私は後ずさりをしたと思う。矢に打たれるシーンは、役者さんで撮影済みだから、打たれて走るシーンから撮影する、そして馬は落ちそうになった少年を乗せたまま走り去る…『なんですって?落ちそうになったままですと?』私は、また声にならなかった。そして用意された馬にまたがった。ガチャガチャというプラスチックの触れ合う音に、馬は既に興奮して鼻を鳴らしている。私は武者震いか、はたまた、本当に震えて来たのか分からないが、震えてきた。ボスが「大丈夫、保険はちゃんとかけてるから」と言いに来た。冗談じゃなかった。
有名な役者さんが乗った大人しい馬達 クリックすると元のサイズで表示します

私が馬にまたがったら、馬の首に掴まり、左に寄り気味になるよう指示された。手を回し、半身落ちそうな体位になった途端。ボスが馬を鞭で強く叩いた。馬は、いなないて、走り始めた。全力疾走である。地面が物凄い速さで過ぎて行った。無茶無茶恐かった。それに私がいつも乗るのは、駆け足までで、全力疾走する馬のモンキー乗りは、競馬の騎手でもあるまいに、した事がなかった。きっと500メートルはあっという間だったのだろうが、とても長く感じた。1回でOKが出て終わったものの、『もう2度とするものか!』と心に誓った。(↓こらっアニメの馬達、踊ってる場合じゃないよ)
クリックすると元のサイズで表示します
そして、待ちに待った放映日がやって来た。TVの前で家族一同、固唾を飲んで見入っていた。親戚や知人も観ているとの電話もあった。中には「サインして」という者もいた。ところが、ところがである。実際に写ってみると「あれ、あれが私!」と指刺さないと誰も判らない状態だった。スタント(代役)なのだから当り前なのだが、淋しいものがあった。ボスに電話した。「あんな危ない目に遭って、あれだけですか?」と。。ボスは「危なくて役者さんにさせられないから、ほたるちゃんに頼んだんだ。あんなもんだよ」と笑いながら答えられてしまった。確かに!、ごもっともである。私は返す言葉がなかった。その後、ギャラの3万円は藻屑と消えたが、NHKがエキストラの人用に配布した『手ぬぐい』は今も残っている。良い思い出ではないので、そろそろ布巾にでも使おうかと思っている。
クリックすると元のサイズで表示します
以上が、私の聞くも涙、語るも涙のスタント体験の話である。実は私…もう1度だけ、TVに出た事がある。それは民放の天気予報のバックで、馬に乗って障害を越えているシーンだった。私の名誉挽回の為に書くが、これは格好良かった。どこかにVTRも残っているはずだ。そのテープは、彼方此方回覧したので、何処にあるか?ちゃんと探して置かなければと言い聞かせた。この天気予報の撮影については、また後日、別の日記で……。
0



この記事へのトラックバックURLはありません
トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ