2006/6/8

W杯まで後2日…主審を務める上川徹氏…もう1つのW杯の戦い  サッカー&ワールドカップ・ドイツ大会

サッカーW杯の審判団が、5日フランクフルトにて報道陣の前で、試合に臨む抱負を述べた。昨年1年間の試合のインステプターによる審判テストと、3月末にフランクフルトで開催されたた体力テストをクリアし、栄えあるW杯の審判に合格した上川徹(42才)氏は、「力を入れずにやりたい。皆で協力していい試合を作りたい」と抱負を述べたという。W杯の審判のテスト制は、日韓大会で審判の誤審に対する苦情がFIFAに殺到した事を反省し、今大会から行われるようになった。また、意志の疎通がし易いようにと、同じ大陸連盟に所属する主審と副審2人がチームを形成して、試合を担当するシステムが採用されている。上川氏と組む副審は、広嶋禎数氏、金大英氏(韓国)となり、開幕当日のポーランド−エクアドル戦の審判を務める。日本から2人以上の審判が参加するのは初めての快挙だ。
クリックすると元のサイズで表示します上川氏を主審としたアジアチーム。
右から金氏、上川氏、広嶋氏


W杯の審判は、1試合1試合審査されて認められた優秀な審判だけが、次の試合の笛を吹く事が出来る。上川氏は、前大会も主審を務めたが、担当した試合は、アイルランド-カメルーン戦の1試合だけだった。各審判団は先月26日から、大会中の拠点となるフランクフルトに入り、合宿をしながら、判定基準の統一や体力維持に努めて来た。上川氏は、9日の試合に集中、「しっかり試合をコントロールしないと先はない」と表情を引き締めている。上川氏の目標は、決勝トーナメントで笛を吹く事…。日本チームが決勝まで進んだら有得ないが「出来れば決勝戦の笛を吹きたい」と、NHKの特集番組で語っていた。

上川氏は、元サッカー選手だった。大学卒業後社会人チーム「フジタ」に入団するも、右膝を痛めて現役引退を余儀なく迫られた。サッカーに関っていたい夢を捨てきれず、審判のテストを受けた。そして審判員としてデビューしたのは、けっして早くない28才の時だった。何より試合経験が必要だと自ら希望して試合のある所に出むき、笛を吹いた。その功あって、1996年Jリーグの審判員に昇格する。しかし、主審の権限を駆使し笛を吹き続けた試合は、選手達の反感を買いラフなプレーが相次いだ。試合中、上川氏が吹いた笛の回数は58回。上川氏はその再現VTRを観て「試合をコントロール出来ていない」と反省した。この試合を戒めとし、上川氏が目指したのは、反則を未然に防ぐ試合にする事だった。
主審としてピッチに立つ上川氏 クリックすると元のサイズで表示します

上川氏は、国際審判員に昇格後、反則の内容によって表情を変えるというフェイスコントロールで選手にアピールし続けた。必要に応じてはまた間合いを取ったりし選手達を落ち着かせる事に努めて来た。更に体力トレーニングや試合の流れを読む為の努力はいとわなかった。そんな上川氏が、FIFAからW杯ドイツ大会の審判候補46人に選ばれたのは、的確な判断力もさることながら、試合中の位置取りの良さを認められての上だった。プレー全体を見据えて試合の流れを読み、ボールの動きを推理しての位置取り、特集で流されたVTRでも、上川氏の動きはJリーグ昇格当時とは、うって変わって選手のプレーを見渡せる好位置となっていた。今年1月1日に行われた天皇杯は、日本国内の主審の中で昨年1年間、最も優秀と見なされた主審が笛を吹く。上川氏は、天皇杯の審判を務めた。

そして迎えた3月24日。フランクフルトでの体力テスト。上川氏は、W杯の開幕時には43才を迎える。サッカーの審判の定年は45才の為、今大会が主審として笛を吹ける最後のチャンスとなっていた。サッカーの主審が1試合で走る距離は約12キロと言われ、優秀な選手の走る10キロを上回る。ゆえにFIFAの体力テストは、体力とスピードには自信があった上川氏にとっても並大抵にメニューではなかった。40m走 6・2秒以内で6回走る。その10分後に、150mを30秒以内で、20回走る。スピードと回復力を試されるハードな内容だった。上川氏はサッカー選手時代に痛めた右膝の痛みを抱えていた。半月板が炎症を起して手術も受けた。膝の負担を減らす為に、ふくらはぎ、太腿、腰などの筋肉を鍛えて来た。体力テスト当日、肉離れ等で脱落して行く審判候補達を見ながら、祈るような思いだったという。上川氏はそのテストも無事クリアし、結果、W杯ドイツ大会の主審に選ばれた。

W杯主審決定の連絡があった翌日の4月1日、上川氏は、Jリーグのガンバ-エスパルスの主審を務めた。試合は選手達がボールに集中する好ゲームとなった。この試合で上川氏が吹いた笛の数は僅か12回。上川氏の理想とする「選手達の精神状態をコントロール出来た反則の少ない試合」だった。上川氏はその試合の後、語っている。「理想とする試合運びに近づけた。W杯でも平常心でしっかりと試合をコントロールしたいと思います」。W杯のもう1つの戦い…厳しいテストをクリアした審判達の活躍ぶり…私はまず、9日の開幕日に上川氏が笛を吹くポーランド−エクアドル戦を観ようと思っている。上川氏の長男、隆君(13才)は努力をし続ける父の背中を見て4級審判員の資格を取った。そこには父を尊敬する心があった。開幕中には父の日も迎える。上川氏にとって何よりのプレゼントとなっただろう。今大会…。少し視点を変えて上川氏を始めとする審判員の活躍にも注目したい。

◎当ブログ内 W杯前回大会決勝の主審を務めたコリーナ氏について。
http://diary.jp.aol.com/applet/hotarudesu/20060524/archive

◎お詫び(6/21)
上川氏の社会人チームの名を間違えていましたので訂正させて頂きました。
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