2007/4/10

ノリタケの森を訪れてNo1…森村ブラザーズとオールドノリタケ  日記(今日思うこと)

異文化競合の中から新しい文化を発信し続けて来たニューヨーク…。別名、メルティング・ポットとも呼ばれていたその街で、後に「ノリタケ」の創始者となった森村市左衛文は、今から約100年前の明治9年、まず弟の豊を単身で送り込み、輸入雑貨店を開業、明治11年には自身も渡米しニューヨーク六番街に「モリムラ・ブラザーズ」を開店して貿易業を開始した。当時アメリカに輸入されていたヨーロッパの美しい陶磁器を目の当たりにした彼らは、ニューヨークを代表とするアメリカの文化は、ヨーロッパ文化への羨望と、移民の国としてヨーロッパを追い抜きたいという願望に満ち溢れている事に気付いた。市左衛文は、この美しい磁器を日本で製造したい…2人は新たな夢に向かって、まず技術者をヨーロッパに派遣し当時の最新技術を学ばせた。
クリックすると元のサイズで表示します 日本初のディナーセット(セダン)

更に、ヨーロッパ芸術の普及版をアメリカで商品化しようと考え、ヨーロッパと日本の技術を融合させた本格的な陶磁器製造を決意して、明治37年(1904年)「日本陶磁合名会社」を設立。ドイツから本格的な機械一式を輸入し、陶土に恵まれた瀬戸にも近く、良質の水にも恵まれていた、現在の名古屋市西区則武町に陶磁器製造工場を建設、日本初の大規模な機械工場となった。そしてその年、日本で初めてのディナーセットを製造した。私は、かねてより希望していた「ノリタケの森」を訪問し、まずノリタケ創業100周年を記念して造られた、森村・大倉記念館へと足を進めた。そこには、森村兄弟の国益を重んじた貿易への情熱や、森村ブラザーズのアートデレクターであった大倉孫兵衛の物づくりに対する精神など、創業者の夢と理念が紹介してあった。また記念すべき一号窯の模型から、現在の森村グループである日本碍子のセラミック事業、衛生陶器事業としての東洋陶器(TOTO)等の歴史と未来が凝縮して展示されていた。

森村・大倉記念館全景→  クリックすると元のサイズで表示します
クリックすると元のサイズで表示します 一号窯の模型。


一旦外に出て、クラフトセンターに入ると、3F、4Fはノリタケミュージアムとなっており、オールド・ノリタケの芸術的な作品の数々が展示されている。19世紀末のアメリカは、ヨーロッパの影響を受けつつも独自の文化を生み出そうとしていた。やがて経済的に豊になったアメリカは、ヨーロッパでは上層階級の人々だけ享受出来た世紀末芸術の快楽を、マジョリティにも分け与えようとした。一般大衆の為の芸術…不特定多数のためのアートを、大量生産しアメリカの隅々まで流通させたい。アメリカの中流階級の人達が自宅のマントルピースに置く事が出来た美術工芸品…それがオールド・ノリタケだった。
クリックすると元のサイズで表示します金点盛 薔薇 両手付大プレート
(明治27年製作)


オールド・ノリタケのデザインを分類すると、アールヌーボー、ウィーン工房、アールデコなど多様性に富み、同時代にヨーロッパで流行っていたジャポニズムを感じさせるもの、そして西洋の伝統的な装飾技術を継承したものも見られる。しかも幾つかの装飾様式が同居し調和している事に気付く。この背景にはノリタケの陶器産業発展への情熱を感じる事が出来る。それは、伝統的な絵画技法と新しい流行のディテールの融合こそが、慣れ親しんで来た伝統的絵画と、憧れのヨーロッパの流行の最先端を組み合わせる事になり、アメリカの人々に親しまれる製品になると予想したのである。また、はっきりとしてではないが、ジャポニズムも忍ばせてあり、アメリカの美術愛好家の間では、ヨーロッパを介したエキゾチックな日本美術…ジャポニズムが求められていた事も把握して製作されている。

以上のように、19世紀末から20世紀始めのアメリカ社会で求められた夢を織り交、時代の流れを的確にとらえた製品を製作して来たからこそ、「ノリタケ・チャイナ」として親しまれている現在の「ノリタケ」がある。オールド・ノリタケのデザインの多様化は、そのままアメリカ社会の多様化の反映であり、カルチャー発展の足跡と重なる。作品の一つ一つから、アメリカ社会が求めた芸術と、それに応えようと製品を作り続けたノリタケの情熱が込められており、アメリカと日本の文化史の一ページにその歴史を残す事となったと言っても過言ではないだろう。
レンガ造りの古い工場跡 クリックすると元のサイズで表示します

「ノリタケの森」は、広大な敷地に古いレンガ造りの工場の姿を残し、季節の花々が植えられて都心のオアシスとなっている。中には、上記した記念館・美術館以外に、本物志向の方が買い物が出来るプレステージ・ショップや、アウトレット、職人の技を見学したり、絵付けが体験できるクラフトセンター、喫茶店のスクウェアカフェ、そして本格的なコース料理が美味しくて比較的お値打ちのレストラン・キルンがある。キルンでは、目で食器と料理のハーモニーを楽しみながら、舌を満足させるだけの料理を取り揃え、連日多くの人を迎えているという。

◎「ノリタケの森」公式HP
http://www.noritake.co.jp/mori/index.html

◎「ノリタケの森」この他の写真、「オールド・ノリタケ」の写真と解説は、明日以降UPします。
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