2007/5/7

『ブラッド・ダイヤモンド』を観て…ダイヤの歴史と紛争ダイヤ  好きな映画と本(一部ネタバレあり)

人類が初めてダイヤモンド(以下ダイヤと記す)と出会ったのは、紀元前10世紀から5世紀の間ごろで、インドのゴルコンダと呼ばれる地域だったとされている。硬質で神秘的な光を放つダイヤは、当時の人々にとっても価値ある石とされ、紀元前1世紀にはギリシャ、その後ローマ帝国へと伝わって行ったという。その産地は長年に渡ってインドのみだったが、17世紀にはボルネオ、18世紀にはブラジルでダイヤが産出され、やがて1866年には遂に南アフリカでダイヤの大鉱脈が発見された。
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更に中世からは、ブリリアントカット等、ダイヤに輝きを与えるカットと研磨技術も進化して、支配階級の人々は競うようにダイヤモンドジュエリーを身につけるようになった。フランスのルイ9世に至っては、ダイヤを富や権力の象徴として平民は身につける事を固く禁じる法律まで制定して、その輝きを独占しようとしたらしい。しかし、ダイヤに憧れる女性の思いは、誰にも止められず、まずは社交界の花と謳われた人々やハリウッドの女優達から幅広い層の人々へと広がって行ったそうだ。

ダイヤの原石そのものの歴史は、何と遥か32億年前へと遡る。誕生は、まだ地球上に生物が誕生するよりずっと以前の事だ。地底の奥深くで、想像を絶するような高温と圧力を受けて結晶化した物質は、地球の火山活動によってマグマと共に噴出し、その後数百万年に渡って厳しい自然環境の変化にさらされて来た。この果てしない時間と過酷なダイヤの旅程の中で、もしも自然の力が、少しでも別の方向に働いたとしたら、ダイヤは宝石ではなく、二酸化炭素や黒鉛と化していたかもしれない。燃えたぎった地底で生まれた太古の物質のうち、ダイヤの原石となる事が出来た物質は、ほんの僅かだと言われている。
人類の強欲を表すような クリックすると元のサイズで表示します
キンバリー鉱山の大きな穴(直径465m,深さ1097m)


そして、250トンもの土の中から採れるダイヤは、たったの1カラット(O.2g)に過ぎず、更にカットや研磨を経て宝飾品として仕上げる事が可能な大きさと品質を持つ原石は、驚くほど僅かだという。結局、宝飾品として有史に残るダイヤを、全世界から集めても、その量はロンドンの2階建てバス1台分程度だそうだ。このように世界中の人々が、ダイヤの輝きに魅せられるのは、この宝石が自然界の奇跡が生み出した稀少な存在だからだと言えよう。地球が人類に残した贈り物…32億年の時を超え、未来永劫その煌きを放ち続けるだろう。

婚約指輪は給料の3ヶ月分…これは1970年代にデ・ビアス社が、ダイヤの販売促進に使ったキャッチコピーが日本に定着したのだそうだ。1950年代のアメリカでは、給料の2ヶ月分とされていたが、日本に渡った時、当時の円相場や所得水準で3ヶ月とされたらしい。また、ダイヤの品質を決める指標として、GIA(アメリカ宝石学協会)が考案した"4つのC"は、Color(カラー)色、Clarity(クラリティ)透明度、Carat(カラット)重さ、Cut(カット)研磨、とされているが、映画「ブラッドダイヤモンド」では、もう1つチェックすべきCとして『Conflict=争い』を挙げ、ダイヤモンド鉱脈が見つかった、アフリカのシエラレオネを舞台にした「紛争ダイヤモンド」を巡った史実とフィクションを織り交ぜ、ダイヤの輝きに封じ込められた、アフリカの人々が流した血と涙を、激しい銃撃戦の中で描いている。
舞台は紛争中のシエラレオネクリックすると元のサイズで表示します

主演のダニー・アーチャーを演じたレオナルド・デカプリオ、ダイヤの密輸ルートを暴こうとする女性ジャーナリストにジェニファー・コネリー、予期せずダイヤモンドを巡る紛争巻き込まれ、引き裂かれた家族を、命を懸けて取り戻す勇敢な父親…ソロモン・バンディ役のジャイモン・フンスーらの名演技が光っていたが、ソロモン・バンディの息子、ディア・バンディが、反政府軍(RUF)に連れ去られ、洗脳されて少年兵…コマンダーとなり、無差別殺戮を繰り返す姿には、強い衝撃を受ける。やがて関わった人物が、ヒューマニズム…人間愛を呼び覚まして行き、ラストは涙を流さずにはいられない。
クリックすると元のサイズで表示します ダイヤを巡って織り成す人間模様。

またこの映画の中で描かれている史実の部分…アフリカでダイヤと無縁の生活を送っている人々が、傲慢な人々に操られ、武器調達の為にダイヤを巡って国内紛争まで起こす様には、強く胸を締め付けられる。この紛争ダイヤモンド問題は、2000年、NGO団体により、南アフリカのキンバリー鉱山で、ダイヤモンド原石の国際認証制度=『キンバリー・プロセス』の検討が開始され、2003年に合意。アフリカやヨーロッパ連合(EU)などの計47ヶ国の地域が参加し、『キンバリー・プロセス』の徹底によって、問題は鎮静化したというが、現実は、まだ流通しているという説もある。日本には「キンバリー・プロセス」で認証されたダイヤしか入って来ていないそうだが、その輝きの中に秘められたアフリカの人々の魂の叫びを、決して忘れてはならないと思える作品だと感じた。ダイヤモンド…語源はギリシャ語でadamas =征服できないに由来するという。永遠の愛の証として贈られる品だからこそ、地球がくれた唯一無二の財産として、その煌きのように、流通も清くあって欲しいと願いたい。「ブラッド・ダイヤモンド」…この映画は、レオナルド・デカプリオの渋い名演技も輝いていたが、ダイヤの歴史を知る上でも観ておく価値があると思った。

◎参考 映画パンフレット、家庭画報他。
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