2007/11/13

ボストン美術館No1…葛飾北斎の肉筆…ビゲローコレクションより  ボストンの思い出

ボストンを訪れる度に、必ず1度は足を運んで来たボストン美術館…。私は勿論、モネを始めとする印象派の絵を間近で眺められるのも、1つの楽しみではあったが、ボストン美術館に所蔵されている膨大な日本の美術品にも惹かれるものがあり、その品質の高さに驚かされていた。私は今回の渡米で、この日本及び中国を始めとするアジアの美術品収集に尽力した人物達…岡倉天心(覚三)、エドワード・シルベスター・モース、アーネスト・フランシスコ・フェノロサ、ウイリアムス・スターシス・ビゲローらについて、紹介された本などを読み、彼らが魅せられた日本美術を紹介しながら書き記そうと思っていた。名古屋ボストン美術館のメンバーシップを持っている私は、今更だが、そのカードでボストン美術館への入館料が無料だと知ると(念の為、名古屋ボストン美術館に問い合わせた所、初の問い合わせだったそうで驚いたが)、時間を見つけては、何度か行ってみようと決めていた。
クリックすると元のサイズで表示します ボストン美術館正面
(ハンチントン通りより、2007年7月撮影)


木立の紅葉も終わりを迎えようとしている11月中旬の週末に、ボストン美術館を訪れると、玄関には長蛇の列が出来ており、初めは特設開催の「ナポレオン展」が人気で混んでいるのかと思っていた。チケット売り場に並び「名古屋ボストン美術館」のメンバーシップカードを提示すると、何と私と友人の分、2枚のチケットが用意され、パスポートの提示は必要なく特別扱いのような優遇で驚いた。(尚、ボストン美術館は入場料が大人17ドル必要だが、その半券で10日間は無料で入館可能だそうだ)。私は早速、日本美術のコーナーへと向かった。初めに目に入って来たのが「相撲の浮世絵」だった。このコーナーも各展示品の前に人だかりが出来ており、かなりの人気ぶりだった。その後「江戸の誘惑」という看板に導かれて入ってみると、そこには私が浮世絵=版画だと印象付けられていた私のイメージを、打ち破るような作品が展示されており、大きな衝撃を受けた。中でも「朱鍾馗図幟」と呼ばれる葛飾北斎の肉筆の絵の前では、身動きが出来なくなる程であった。…と同時に必見すべきは、このコーナーであると確信した。
「朱鍾馗図幟」北斎(1805) クリックすると元のサイズで表示します

解説によると「朱鍾馗図幟」は、縦230センチを超える麻地の幟(のぼり)旗に中国で疫病を防ぐ鬼神と伝わる鍾馗(しょうき)様の立ち姿が、朱色で力強く描かれており、端午の節句に鯉のぼりと一緒に掲げられた品だそうだ。北斎の肉筆の中では最大の幟絵で、ボストンの浮世絵コレクションの中でも、最重要作品の1つだという。呆然としたままの私の目に、次に入ってきた作品は、同じく北斎が縮緬の袱紗に描いた「唐獅子図」で、円の中に墨で描かれた1頭の唐獅子と、枠の外に埋め込まれるように描かれた牡丹の花の鮮やかさが対照的で、時間が経つのを忘れて見入ってしまった。更に真ん中に置かれた提灯には、龍と虎の戦いが描かれていた。北斎といえば「富嶽三十六景」が最も有名で、富士を臨む各地の景色には、西洋画の遠近法等も取り入れられていると言われているが、これら民衆の生活に根付いた作品は、北斎の作品の中でも極めて珍しく、日本にあれば国宝級の作品だと思われる。このコーナーでは、立ち止まってじっくりと観ている人や、メモを取る人も多く、大盛況であり、アメリカに於いて「浮世絵」の人気ぶりが伺えた。
クリックすると元のサイズで表示します 「唐獅子図」北斎(1844)

さて「江戸の誘惑」コーナーに展示されている作品は、全てウイリアムス・スターシス・ビゲローが収集したコレクションである。ビゲローの職業は本来、医師で、モースの導きにより1882年(明治15年)に初来日、日本美術に魅せられて東京に居を構え、モースやフェノロサと共に日本美術品収集の旅をした。更に貧しい日本画家を経済的に援助したり、奈良地方の宝物保存の為の融資を引き受けたりしたそうだ。岡倉天心による日本美術院(横山大観、下村観山ら卒)創設時にも、2万円(現在の金銭価値にして約2000万円)の寄付をして援助している。約7年間の日本滞在中に収集したコレクションは、浮世絵を始め様々な流派の絵画、刀剣、刀装具類、染織品、漆器、彫刻等、広い分野に渡り、その数は約41,000点にも上るという。ビゲローが集めたコレクションは、1つ残らずボストン美術館に寄贈され保管されている。明治維新の開国とともに、西洋化の一途を辿る日本に於いて、軽んじられがちだった日本の美術を再び見出し、収集したビゲローは、貴重な日本の伝統文化を美しく保存してくれた人物の1人として…現代を生きる私達日本人が、手を合わせ感謝するべきだと言えよう。

尚、私は「浮世絵」が今まで余り好きではなく見逃していたが、昨年(2006年)、これらビゲローコレクションは同題目として、110年ぶりに日本へ里帰りしている(神戸、名古屋、東京で展示)。それまで長期に渡ってビゲローの遺志で、門外不出を執り、その数の多さゆえ謎に包まれたままとなっていたが、1997年に日本からボストンへと研究員による調査団が送られ、初めて陽の目を見た作品も多くあったそうである。これらを代表とするビゲローの700点に及ぶ肉筆画のコレクションは、版画とは異なって注文によって特別に描かれた「特注品」の1点物であり、その価値は、到底計り知る事が出来ない…。
「提灯絵 龍虎」北斎(1804〜1818)クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します「鏡面美人図」北斎(1805)

「Li bai admiring a waterfall」クリックすると元のサイズで表示します
北斎(1849) ※(写真は全てクリックで拡大)


※SELEBRETE JAPAN AT THE MFA
2008年2月10日まで、ボストン美術館にて開催
ボストン美術館公式HP →http://www.mfa.org/
★またボストン美術館では「walk this way」と題し、
各時代、各国の様々な形式の『靴』が、会場の彼方此方に展示されていた。
その中で、2007年を代表する靴として、
レッドソックス、松坂大輔使用のナイキ製スパイクも展示されている。

◎参考
「岡倉天心とボストン美術館」…名古屋ボストン美術館発行
「岡倉天心物語」…新井恵美子著
「江戸の誘惑」…朝日新聞社HP

◎私はプレスさんと間違えられたのか?全く注意を受けなかったのですが、
特別展だけは、撮影禁止だそうですので、悪しからずご了承下さい。
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2007/11/20  15:02

 

ボストン美術館で開催中の特別展…ビゲローコレクション、「江戸の誘惑」(Drama and Desaia)は、連日多くの人が訪れており、週末は特に混み合っているという。幻のコレクションとまで呼ばれていた、ビゲローコ 



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