2008/2/6

レッドソックスの首脳陣達No1…岡島秀樹獲得の舞台裏  Boston Red Sox・MLB

2月3日に放送されたNHKスペシャル…『日本とアメリカ』の第三回「日本野球は“宝の山”〜大リーグ経営革命の秘密〜」は、レッドソックスファンの私にとって、大変興味深く観る事ができた。番組は、6年前、経営難に陥っていたレッドソックスを買収した筆頭オーナー…投資家でヘッジファンドの社長である、ジョン・W・ヘンリーさんにスポットを当てていた。ヘンリー氏は、イリノイ州の農家に生まれ、9才の時にメジャーリーグを観戦したのを契機に、大の野球好きとなった。当時から数字には強く、常に頭の中で、選手達の打率や防御率を換算していたという。大学はUCLA等4つの大学で哲学を学ぶも学位は取得せず、父親の死を転機に農場を継いだ。そして、独学で為替ヘッジ(ヘッジとはリスク回避の意)を学び、大豆の先物取引で、まず75000ドルの利益を得た事を始めに大成功を収めた。
クリックすると元のサイズで表示します ワールドシリーズ観戦の首脳陣。
左からJohn W. Henry, Tom Werner, Larry Lucchino(yahoo photoより)


ヘンリー氏は、1980年に独自のトレーディングシステムを作り上げ、1981年には、ジョン・W・ヘンリー・アンド・カンパニーを設立して、マネーマネジャーに就任、以降6つのトレーディングシステムを使用して、通貨から穀物まで多種に渡るトレードを行ってきた。結果、現在では約30億ドルの資産運用をしており、世界で最も優れたトレーダーの1人として、マイケルコベス著の「トレンドフォロー入門(トレンドの魔術師達の売買戦略と成功の秘密)」にもその名をはせている。ヘンリー氏は、投資家として培ったデータ分析を野球にも応用して、球団の運営を行い就任から6年間で、売り上げを2倍に伸ばすと共に、チームを常勝球団へと育て上げて来た。ヘンリー氏は、現在も自らスコア表をつける習慣を続けているという。
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選出された岡島秀樹。(2007年7月撮影)


過去100年のデータを元に、安い品を買い高く売って利益を得て来たヘンリー氏は、投手の「指標」として「防御率」(自責点÷投球回×9)だけではなく、アナリスト(分析家)として採用した、野球愛好家のポロス・マックラゲン氏の論文から見つけた「指標」によって、巨人時代の岡島秀樹投手に注目し、日本ハムへ移籍後は特に岡島獲得へと強い意志を固めたという。ヘンリー氏が見つけた新たな「指標」とは「三振の数÷四球の数」だ。その「第二の指標」は、高い程能力のある投手と言えるそうだが、メジャー投手の平均が2.00に対し、岡島は巨人時代で2.95、日本ハム時代には、何と4.75まで上げ、他のプロ野球選手の中でも抜きん出ていた。2006年11月、レッドソックスが岡島を獲得したというニュースを耳にした時、私は左腕だから…くらいにしか捉えていなかったが、既にこの時、ヘンリー氏は、岡島の成功を裏付けるだけのデータを握っていた事になる。

また、ヘンリー氏は、球団経営を既にボルチモア・オリオールズとサンディエゴ・パドレスの経営を立て直した、ラリー・ルキーノ氏に任せた。ルキーノ氏は、狭くそして、歴史的価値から解体は不可能なフェンウェイパーク(球場)の改装に着手した。リキーノ氏は、まず初めにグリーンモンスターの上に270席の客席を造った。フェンウェイの名物とも言われるグリーンモンスターは、建設当初は、レフト側が狭く市街地が近い為に、ホームランが出難くする為にボールを遮る壁を作ったという、苦肉の策であったが、その上を観客席として活用した所、最もホームランボールが飛んで来易く、また見晴らしが良い為、大人気となった。定価約1万5千円のシートも時にネット場では、5万円から10万円以上出しても手に入らない事さえあるそうだ。
クリックすると元のサイズで表示します 記者席から見たレフトスタンド側

また、ファミリー向けに、選手達がバッティング練習している時、グランド後部で球拾いが出来る権利付のチケットを販売、定価約3万円はけっして安くないと思うが、ボールを拾えるだけでなく、選手達と同じグランドに立てるという感動も手伝ってか、人気の的となった。私がフェンウェイパークを訪れた時も、センターの後のブルペンの横に仕切られた区域があって、子供達がボール拾いをしていた。抽選か何かで選ばれた子供達かな?と思っていたが、そういう特権付シートがあったのだと、今更ではあるが納得した。他にも、フェンウェイツアーと題して、球場の記者席やダックアウト、グリーンモンスター内等を見学出来るガイド付のツアー(大人18ドル)をシーズンを通して行っていたり、公式ショップは年中無休で営業するなど、シーズンオフも売り上げを伸ばしている。その背景には、親会社の宣伝目的という日本プロ野球の指針と違い、独立した企業として収益を上げるという確固とした経営理念がある。
外野席増設等改装中のフェンウェイクリックすると元のサイズで表示します
(以上2007年11月フェンウェイツアーにて撮影)


ヨハン・サンタナのメッツへのトレードというニュースが届き、レッドソックスのストーブリーグには、大きな動向はなく、主力選手は揃ったままで、データ的には二連覇を狙えると言えよう。しかし、ヘンリー氏は、自身の言葉で語っている。

「I don’t believe that I am the only person who cannot predict future prices.」
(私は将来の価格を予測することはできない。それは誰にも出来ない)

レッドソックスの春季キャンプの日程が、2月22日からと決まり(投手陣は2月16日)いよいよ、選手達も始動する。首脳陣はキャンプ中にも新たな戦力発掘の為に視察をし、データを集積し続けるという。(選手名敬称略)。

◎参考 
・NHKスペシャル…『日本とアメリカ』「日本野球は“宝の山”〜大リーグ経営革命の秘密〜」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/080203.html
・マイケル・コベル(Michael Covel)著
「トレンドフォロー入門(トレンドの魔術師達の売買戦略と成功の秘密)」
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