しばらくネット繋いでなかったので、
テーマ定めた意味がもはや、あるんだ、ないんだか・・・という感じですが。
今回は重松清の「見張り塔から ずっと」です。
この本は、3篇の短編からできています。
どれも、家族を軸に物語が書かれていますが、
どの作品もホームドラマ的な要素はありません。
以下、順番に。
「カラス」
バブル期に都市開発を目指して山奥に作られた新興住宅マンション。
ところが、バブルの崩壊と共に、都市開発がストップ。
大型都市になるはずだった山奥のマンションが舞台になります。
そこに、ある日、引っ越してきた一家。
ささいなきっかけから始まった引っ越してきた一家へのいじめは、
日増しにエスカレートして・・・
この話は、読んでいて「怖いなぁ」と思いました。
別に、幽霊が出てくるとかいうたぐいの話ではありませんが、
人が「いじめ」という行為を通して、活力を経、
コミュニティーが成り立っている・・・という構図が、
閉鎖された住宅の中で行われているんだけれども、
それが、実際に自分の住んでいる世界にも往々にあるわけで、
「いじめ」は認めたくないし、してはいけないことなんだけれども
それでも起こってしまう怖さ。
そして、取り返しのつかない結末・・・
背筋がゾクゾクする緊張感がありました。
「扉を開けて」
幼い乳児を亡くしてしまったマンションに住む若い夫婦。
ある日、同じ階に引っ越してきた一家の息子は、
死んだ子どもと生きていれば同い年になる、同名の子どもだった。
サッカー遊びに興じる子どもを受け入れられずにいる妻。
夫婦は、自殺者が多いために施錠された屋上に上がる非常口の鍵を手にするが・・・
「自殺」ということで、つい先だって読んだ「舞姫通信」を思い出しました(作者同じだし)。
なんとなく暗い雰囲気が、悲しい結末に向かっていうことを予感させますが、
この3篇の作品の中でも、登場人物一人一人の描写がしっかりしていて、
読み応えのある作品でした。
「陽だまりの猫」
主人公は20歳の専業主婦。
高校卒業と同時に結婚した彼女は、
姑から嫌われ、夫からも愛想をつかされ、
理想と現実のギャップの中で、自分を表出できずに過ごしていた。
姑がガンで倒れ、死期が迫った時、
彼女はある行動に移るが・・・
いたって暗い内容ではあるが、
文章のせいか、ほのぼのとした感覚もあり、
前の2作に比べて、落ちついて読める作品でした。
自分を客観的にとらえる語り口がユニークで面白いなぁと個人的には思いました。
全体的に、「世にも奇妙な物語」とか好きな人には
お薦めですね。

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