BSのトリノ名場面は視聴者のリクエストでなくて、総集編だったようだ。がっかり…。
日本人のメダルがあまりにも少なくて、リクエストが全然集まらなかったのだろう。長野、ソルトレイクと続けてやっていたのでそれなりに楽しみにしていたのだけど。
さて私はフィギュアおたくだから、オリンピック放送を、日本の選手を応援するために見ているわけではない。
日本の選手がメダルを取るの(だけ)を楽しみに見ているわけではない。
日本の選手がメダルを取れば、それはそれなりに嬉しいけれど、そうしたことよりも、各国の選手がどんな演技をしてくれるのか、オリンピックに向けてどんなプログラムを見せてくれるのか、どんなドラマが生まれるのか…、それが楽しみだったりする。
フィギュアスケートのファンなら、誰でも私のような気持ちでオリンピックを楽しみにしていたのではないだろうか。
でも、ほとんどの日本人にとってはオリンピックのフィギュア放送は、単に日本人がメダルを取るかどうかだけが興味なのかもしれない。
だから、スルツカヤ選手がこければいいとか、外国の選手のこけるのを願っているとか、そんなことを思う人がいたのかもしれない。
だけど私には、どうしても、どうしたらそんな残酷な考えが出来るのかが分からない。
どうしてあの時、スルツカヤ選手が転べばいいと思うことが出来るんだろうか。
私ももし、スルツカヤかコーエンが失敗すれば日本人選手(荒川選手)が銀メダルを取るかもしれないとは思っていた(金とまでは全然思っていなかった)。
でも、そのことを願ったことはない。
私は荒川選手は銅メダル狙いでいいと思っていたし、実際、彼女自身もそうだったのではないだろうか。
荒川選手がショートで3位につけた時点で、ごく普通にフリーをすべればそのまま銅メダルが確定しているようなものだし、それで良いと思っていた。
スルツカヤ金、コーエン銀、荒川銅、というのが私の予想で、私の理想で、それがベストの結果だと思っていた。
日本の選手に銅以上は、はなからないと思っていた。
スルツカヤ選手がソルトレイクで金を逃した時は、私はクワンにメダルをあげたいと思っていた。
でもそれは叶わず、そしてスルツカヤでさえ金を逃した。
あの時、既にミシェル・クワンは下り坂だったので、この時を逃したら金はない、と思っていたのでクワンに金を上げたかったのだ。
だから、スルツカヤには今回(ソルトレイク)は我慢してもらって、次のトリノで金を取って欲しい…、
なんて、勝手な都合のいいことを考えていた。
でも、スルツカヤ選手の実力からしたら、それは不可能ではないどころか、かなり濃厚だ。トリノでは90%の確率でスルが金、と思っていた。
だから、彼女がフリーで転倒した時には、はっきり言ってショックだった。
彼女のフリーは、最初からジャンプがおかしかった(コンボが決まらず単体のジャンプ、しかもランディングがいつもより不安定)。
彼女のベストの状態ではないことは、誰の目にも明らかだった。
それでも私はショックを受けた。
スルがジャンプを転倒するなんて、見たことがない。
良く考えたら私はスルツカヤが好きでもなんでもない。特に興味のある選手でもなかった。
でも、彼女がまだポニーテールで、民族衣裳みたいなロリっぽい衣裳を着て元気よくジャンプをしている頃から彼女の演技を見ていた。
10代の頃はなかなかトップに立てなくて、そのまま消えてしまうんじゃないかと思っていたが、ソルトレイクで復活(というか、調子を上げ)て来た時には、根性があるなあと驚いた。
だから、今回のトリノでは彼女が金メダルを取るのが順当で、彼女が金に相応しいし、彼女に金を上げたい、という風に何となく思っていたのだった。
スル自身、フリーの時に調子が良くないのを知っていたのだろう。
病気が治っていなかったとか、体調を崩したとか、いろいろな原因があるだろう。
でも、この、最後の大事な時に…。悔やんでも悔やみ切れないのではないかと思ったけれど、スルツカヤ自身は割りとさばさばしていたようにも見え、キスクラでの涙はなかった。会見でも笑顔があった。
多分、自分の状態を知っていたのだろう。
でも私は彼女がまさか、オリンピックの金メダルに縁のない選手になってしまうなんて、思いもしなかった。
ただ、金を取ったのが、スルツカヤと同じように長く競技を続け、浮き沈みを経験して、スルと同じ時代に戦って来た荒川選手であったのは、幸いだったかもしれないとも思う。
それなら、スルも諦めがつくかもしれないしね。。
閉会式で、朗らかに笑っているスルを見て、少し安堵した。
オリンピックの金は取れなかったが、フィギュアの歴史に長く残る選手であること、私たちファンにとって忘れられない選手の一人であることは間違いがない。
オリンピックで金を取ってもまったく忘れられてしまう選手もいるのだから、どちらがラッキーかなんて、比べられないかもしれない。
スルツカヤの転倒を願ったという日本人は情けない。そんな人には、フィギュアスケートを見て欲しくないような気持ちだ。
日本人がメダルを取ることにしか興味がなく、それだけを見たいなら、何か別の競技を見てくれと言いたい。

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