夏場になると、私はフィギュアスケートのことをすっかりまったく忘れ去ってしまうのだが、今年はなぜか真夏にスケートのテレビ放送があった。
関西では7月21日の土曜日の夕方に何となく地味に放送された(「ドリーム・オン・アイス」というタイトルだったと思う)。関東ではもっと早く放送されたらしい。
当日、新聞のテレビ欄で初めて放送を知った。
スケートにはまったく興味をなくしていたのでびっくりした。でもとりあえず録画した。
関西テレビ、8チャンネルで関東でいえばフジテレビ、だからあの塩原氏の声が聞こえて来た時にはまたこいつか、と一瞬絶望の淵に沈み込んだ。
ああ、またあの冬場の苦痛が甦る。懐かしくさえあるあの苦痛。
フジテレビは成長とか、研究とか精進とかいう言葉を知らないようだ。
去年とまったく同じ構成で同じメンバーのゲストで、もう飽きたわ。テーマソングまで同じだよ。
ただ、この番組が貴重なのはひとえにデンコワ・スタビスキーが見られたことで、特にスタビスキーの膨張ぶりがこの目で確められたことだ。
忘れもしない世界選手権のエキシのテレビ放送。
その時私の家では偶然に一家が勢ぞろいしていて、私の姉や姪が皆してエキシを見ていた。
そしてデンコワ・スタビスキーがテレビ画面に登場するや、茶の間は阿鼻叫喚と化し、怒号が飛び交ったのだった。
ブタ、デブ、なんやあの趣味悪い服、信じられん、ガハハ!
と、考えられる限りの侮蔑と非難と嘲りの嵐だった。
ファンである以上、"いや、彼らは滑りがとても素晴らしく…"、と弁護に努めようとしたが、それ以上は出来なかった。
私も同じように思ったからだ。
スタビスキー、ブタすぎ。
そしてスタビスキーはあの時よりさらにデブになっていた。
けれど、驚いたのはデブぶりだけではない。
あれほどデブりながら、ステップやエッジワークの見事さ美しさ。
あんなに動けるデブを私は知らない。
私はあのプログラム「リベルタンゴ」を初めて見たのだ(と思う)。
いつかのシーズンのオリジナルダンスのナンバーだ。
これでスタビスキーがスマートだったらどんなに凄いだろうか。
お願いだからもう少し痩せてくれ。恋人のデンコワは何も言わないのか。あれで良いのか。諦めてるのか。
デンコワさんよ、あんただけが頼りだ。ほんとにあれでいいのか。あのままでいいと思ってるのか。
それほどリベルタンゴに夢中になった。
ひどいカメラワークだったが、にも関わらず、その素晴らしさは伝わって来た。
ああ、久しぶりにアイスダンスらしいアイスダンスを見たような気がする。
ステップやエッジ使いの見事なテクニックと、豊かな感情表現が両方ブレンドされ満たされている。
私が見たかったアイスダンスとはこういうものだ。
彼らがなぜ、トリノでメダルに届かなかったのかが未だに分からない。
なぜ、ナフカ・カスタマロフがあれほど長い間タイトルを保持出来たのか、どうしても分からない。
どう考えても、身体の芯が熱くなって来るようなあの演技が、ナフカの味気ないダンスに劣っているとされる訳が分からない。
うむ、久しぶりに毒を吐きたくなった。
当分、リベルタンゴに浸るぜ。

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