国宝展4期のつづき
http://kyoto-kokuhou2017.jp/#visitor
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https://twitter.com/kyohaku_gallery
4期は
11月14日〜11月26日まで
もうあとわずか
奈良で正倉院展をやっていた時は、国宝展との
カップリングツアーのバスも来ていた。
遠くから来ている人もいるんですね…
さていろいろ面白いものが出ていたのに
触れられなかったものいくつか
おさらい
平成知新館を入って、
まず3階から2階、1階へ行くという導線
3階は考古、書跡
2階は仏画、中世絵画、中国絵画 近世絵画 肖像画など絵画部門
1階は陶磁、彫刻、金工、染織、絵巻物など
〈考古〉
・金銅威奈大村骨蔵器(こんどういなのおおむらこつぞうき)
大阪四天王寺 奈良 通期
これは通期で出ていたもの。
まん丸の球体が気になっていたのだ。
ほぼ完全な球体のように見えて、異彩を放っていた。
骨蔵器というから、骨をおさめて葬ったものらしい。
威奈大村というのは人の名前で、
その人が越後の国をよく治め、その功績を
器の表面に漢文で刻んだものということだ。
骨蔵器をこのような見事な造形にしてしまうところが
昔の人のすごさですねえ…。
考古では3期から引き続き
・金銅藤原道長経筒 奈良 金峯神社 1007年
も出ている。↓
http://purple.ap.teacup.com/isabeau/838.html
1階になるが、
〈染織〉
・古神宝類(熊野速玉大社伝来)和歌山県 一括のうち 南北朝
・彩絵檜扇(さいえひおうぎ)
お雛様が持っている、あの扇、檜扇です。
14世紀のものだそうだが、実にきれいに彩色が残っていて、
美しく、また大型の檜扇で、目を引く。
古神宝として神社に奉納されたものということで、
使うためのものではなかったらしいが…

・挿頭華(かざしのはな)
これは本当に小さく、片隅に置かれていたもので、
アクセサリーとかブローチのような大きさで、
何に使用されたのか分からない。
ただ、刺繍のような感じで糸や裂を用いて、
花のかたちに作り上げたもののようだ。
ほんのちょっとした、昔の人の内職のような小さな
作品が残っているのが微笑ましくも感動的だった。
同じく1階
〈彫刻〉
・多聞天立像 京都 浄瑠璃寺 平安 1期、3期、4期
清凉寺の薬師如来が2期に展示されていた時期以外に、
展示されていた多聞天。
長く京博に寄託されているもので、
浄瑠璃寺の四天王のうちの多聞天だ。
多聞天は毘沙門天とも言い、とてもカッコいいポーズの
仏さまだ。
四天王の四方のうち北方を守る仏、
これは浄瑠璃寺のほかの仏像と同様、彩色もよく残っていて
華やか。
・八幡三神像のうち僧形八幡神坐像 奈良薬師寺 平安
これも彫刻の部屋に通期で出ていたもの。
触れる機会がなかったが、神仏習合の典型的な像だと思う。
神仏習合の神像でもっとも有名なのが僧形八幡神だと思うが、
神像は、仏像よりはなかなか評価されにくく、
有名なものも少ない。
でもこの八幡神は名のある仏師が作ったと思しく、
技術も確かで立派で、仏像と変わらぬ威厳や神々しさがある。
さてそろそろ絵画の部屋へ…
〈中世絵画〉
・瀟湘八景図襖 狩野松栄 京都聚光院 室町・桃山

部分(左側)
永徳の父。
永徳の絵で有名な聚光院の襖絵は、親子で描いた。
その何面かある中の父の松栄の図。
永徳の襖は2期に出ていた↓
http://purple.ap.teacup.com/isabeau/838.html
ひとめ見てうまい、と思った。
山の位置があるべきところにあり、空間の中での配置が的確で、
見事で申し分がない。
真ん中の襖に小さく描かれているふたつの小屋が何とも風情があり、
ほっこり。
山の前の川の空間も見事。
その川に小さな小舟が小さく小さく3隻描かれ、
二人ずつ小舟に乗っている。
船に弱い私にはぐっと来た。
一番左の襖には小山を登って帰りに着く小さな農民の姿。
息子、永徳の先鋭さとはまた違う、優しい優しい松栄の襖絵だった。
瀟湘八景図とはもともと中国の名景を描いたものだろうが、
日本的情緒に溢れていた。
〈近世絵画〉
・燕子花図屏風 光琳 東京・根津美術館 江戸
いよいよ燕子花図へ。
教科書でもおなじみの、今回の国宝展でもさんざん
広告に使われ、絵ハガキにもハンカチにも
これほどまでに浸透している絵だから、
見る前からもう見ている気がする。
国宝展の看板にも使われていて、それだけでももう
見た気になってしまう。
これだけさんざん複製物で見た気になっている
燕子花図の実物を見て、
果たして新たに見たという感動があるものか、
実物を見たというだけの確認作業になるのではないか、
それがこれを見る時の危惧であった。
ところがやはり人だかりがすごく、
最前列で見るには右端から順番に少しずつ動きながら、
ちょっとずつ現れて来る燕子花を見る、という作業になった。
まず印刷物とは背景の金地がまったく違う。
描かれた当初はさぞやキラキラと煌めいていたのかもしれないが、
いい具合に渋く変色していて、
画集などで見ていたものとはまったく別物だった。
この金地の背景の色だけでもあっという感じだったが、
とにかく少しずつ順番に歩きながら見ていくので、
少しずつ現れる燕子花の花がまるで音符のように
ポコポコとリズムを刻んでいる。
楽譜を見ているような絵だった。
葉っぱだけの部分もあり、いっそうそれが
背の高い花とバランスがとれていて、リズミカルだ。
そして左隻へたどり着くと、
そこには低い位置から燕子花の花がふいに顔を出す。
何という小粋さ、心憎い演出。
ここでつぼみを持ってくるかというような、
絶妙なアクセント。
憎い憎いこのデザイン感覚、バランス感覚。
音楽が流れているようなリズム感。
少しずつ花が頭を出して来るというこのアイデアは
宗達からか。
スタンプを押したように、
同じモチーフを繰り返して描いていると言われるが、
それも音楽のリフレインのようだ。
同じ伊勢物語を題材にして10年後、
光琳は八つ橋図屏風を描いたというが、
橋をあえて描かなかったこの燕子花図は、
燕子花という花の存在のみを主張しようとしたのではないだろうか。
緑と群青の色の取り合わせ、
太田神社のかきつばたを見た時は、
これが自然の作り上げた色の取り合わせの妙、
自然の作った何という美しさかと感激したが、
かきつばたの緑と緑青を描き残してくれた光琳に
思わず感謝を捧げたくなった。
・夜色楼台図 与謝蕪村 江戸
あでやかな燕子花図の横にひっそりと掲げられていた
蕪村の掛け軸。
見る前はてっきり横長の絵巻かと思っていたら、
軸物に表装されていた。
蕪村は分からない…
でもこの冬の雪の積もる夜景色には
沁みるものがあった。
ひっそりと雪が積もり、家々にはほんのりと明かりが灯る。
静かな景色の中に確かに人のぬくもりがあるのだ。
深閑として激しく主張はしない、ひっそりと
遠慮がちにそこにある。
やがてしんみりと絵の前から去りがたい余韻を残す
良い絵だった。
蕪村はなあ…もうひとついい絵が京都にあるのだが…
〈漆工〉
こちらもあでやかで華麗な技巧が冴えわたる
漆工作品の中から・・
・籬菊螺鈿蒔絵硯箱(まがきにきくらでんまきえすずりばこ)
神奈川・鶴岡八幡宮 鎌倉
要するに硯箱なのだ…が、
蒔絵に螺鈿が施され、
ふたの裏にも丁寧にびっしりと紋様が刻まれている。
硯も筆も水入れも劣化することなく残されている。
誰が使ったものか知らないが、
日常生活で使うものにまで意匠を凝らし、
技術の粋をつくして磨き上げた工芸品。
もちろん名のある人のものだろうが、
この工芸技術には絶句である…
しかもほかにもいくつも展示されていた。
・琉球国王尚家関係資料 那覇市歴史博物館
玉冠
通期で琉球国関係は展示されていたが、
これは1期のもの。
簪のついた冠はエキゾチックで琉球王国の
繁栄を偲ばせた。
〈染織〉
・懸守(かけまもり)大阪四天王寺 平安

懸守の画像を入手したのでアップ。
この小さなお守り、欲しいと思ってしまう。
バッグの持ち手にぶら下げたり、
キーホルダーにしたりも出来るのではないかな
なんて思う。
いよいよ最終番、ここからがクライマックスなのだよ…
〈絵巻〉
・源氏物語絵巻 竹河 平安 徳川美術館
人ごみの中からかき分けかき分け覗いて見た。
薫が主人公となり女たちが邸内の屋根を取り払った
手法の描き方から顔を覗かせている。
この手法、アイデアが斬新だ。
・平家納経 分別功徳本第19 厳島神社 平安
いちどは見たい平家納経。
金粉を散らした華麗な表紙?から、
お経を書いた上下の余白にも蓮の花などの小さな装飾が施されていて、
華麗な上にも華麗、
書かれた楷書の文字もものすごい集中力のまるで印刷のようで、
これも熱い信仰によるものだろうが、
それが艶やかさ美しさのエネルギーになって発散されていて
圧倒される。
・一字一仏法華経序品 香川善通寺 平安
これがあっと驚く経典だった…
法華経のお経を書いてある字の横に、
なんとひとりひとりの仏さまの小さな絵が描いてある。
文字どおり一字に一仏、
大きさにすれば2センチくらい?
その小さな仏さまにちゃんと一人ずつ表情が変えて描いてある。
あっち向いたりこっち向いたり、
…
なんやこれは!
誰もがこれを覗き込んでびっくり仰天。
お経の本というよりエンターテインメントだよ…
面白くて楽しくて笑ってしまう。
ちなみに法華経は大変流行った。
その影響は日本美術にも大きい。
・一字蓮台法華経 普賢菩薩なんとかかんとか
奈良大和文華館 平安
これもまたあっと驚く法華経経典…、
お経の文字の一字ずつが丸で囲んであり、
その丸の下方に小さな蓮の花が(葉っぱ?)が
いちいち描かれている。
一文字ごとに蓮の花。
それもひとつごとに彩色が違っていて、
淡い色や青やらで、上の文字を装飾している。
お経の文字を一文字ごとに飾る、
こんなことが経典の世界で行われていたとは…。
お経を書く、丁寧に書く、信仰のために、
信仰を示すために書く、
だけでは飽き足らず、ここまで行ったかという
究極の信仰世界に驚嘆し、…呆れはて、…
いやいやすごいすごい、すごかった。
さてさて名残惜しやの国宝展
面白いものを見たなあ。
「国宝」という名がついているからというわけではなく、
日本という国の豊かな歴史、豊かな文化を堪能した。
見に来ている人は、
光琳は呉服屋さんのぼんぼんで…とか
其一の朝顔図も…とか
よくご存じで…。
皆さんとてもよく知って見に来ておられました…。
さて
博物館の美しく紅葉した庭もまた美しく、
重要文化財の古都館もまた美しく
わが愛する宮廷建築家・片山東熊の、京都に残してくれた
美しき遺物をあとに帰途についたのだった…
http://isabea.web.fc2.com/archi/haku/haku2.html
参考)国宝展図録
書くのに疲れたわ〜
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