えー、やっと落ち着いて来たところで━
公式サイト
https://artexhibition.jp/prado2018/
2018年6月13日(水) – 10月14日(日)
午前10時〜 午後6時 1,600円
だいぶ前になるが、神戸へプラド美術館展を見に行って来た。
勘違いしていて、7月で公開が終わってしまった、と思って後悔していた所、
10月までやっていると知って、機会を得て、神戸まで行くことが出来た。
(多分8月ころ。いろいろあったので書くのがだいぶ遅くなってしまった)
兵庫県立へ行きつくまでにも色々あったが、まただらだらしてしまうので、
要点だけかいつまんで、なるべくすっきりと(できるのか?)
神戸までは遠い…一日がかりなのだ。
でも美術館のカフェで食べた昼食のサンドイッチはむやみに美味しかった♪
・兵庫県立美術館(神戸市)
http://www.artm.pref.hyogo.jp/
https://artexhibition.jp/prado2018/
東京からの巡回で、今回はベラスケスのカルロス王子がメインのウリ。
プラド美術館の協力で合計61点の絵画が展示されていた。
あまり多くの展示数ではないようだが、かえって集中して見られたので、良かったかもしれない。
ベラスケスと言えば、私のベスト5に入るくらいに好きな画家だ。
ベラスケスの絵といえばラス・メニナスをはじめ、マルガリータ王女が彼のメインになると思うが、
(あれはウィーンのものなので)今回はプラドにあるカルロス王子。
ということで、今回はベラスケスにおいては最重要品ではないが、7点展示されていた。
(もちろんプラド美術館はスペインのベラスケスのお膝元)
同じ部屋にまとめて7点展示されているのかと思っていたら、
各テーマごとに展示室が分かれ、1点ずつの展示だった。
テーマは部屋ごとに
1 芸術
2 知識
3 神話
4 宮廷
5 風景
6 生物
7 宗教
「知識」のコーナーでは古代の哲学者の肖像など。
ベラスケスの「メニュポス」
思慮深い立ち姿で、(架空の)人物描写なのに、実在するかのような迫真性があり、
人物の内面すら、手に取るように伝わって来て、深い。
他の画家の絵も同時に展示されているため、
ベラスケスの、人物の内面へと深く切り込む力量の違いがはっきり分かってしまった。
神話のコーナー「マルス(軍神)」
これも見たかった作品。
ギリシャ神話の戦いの神なのに、闘いのあと、疲れ果てたように鎧を脱ぎ捨て、
放心しているような姿だ。
いっけん軍神とは分からない、逞しい壮年の男性の姿。
イタリア絵画とはまったく違う切り込み方をする画家の力技がすごいと思った。
バロックを経てリアリズムに徹する画家の筆の力量がここでも伺える。
「宮廷」のコーナー
スペイン・ハプスブルク家に仕えた宮廷画家であったベラスケスは、フェリペ4世を当然多く描いている。
この作品は肉眼でもはっきり修正のあとが分かる。
王を理想的に描くことと、そうした中でも、王族人物の内面に深く迫ろうとして、
苦闘している画家の葛藤が分かるようだ。
「バリューカスの少年」
ベラスケスが宮廷内の道化を務める矮人を描いていたのは有名だ。
上から見るでもなく、ただ一人の人間としての存在を鋭く描く。
人物の内面までとらえようとする、画家の誠実な筆が感動的だ。
横に他の画家の矮人の超リアリズムの絵が展示されていたが、やはり違う。
ベラスケスがいかに偉大かが、痛切に感じられた。
「風景」のコーナー
風景描写があるので、ここにバルタザール・カルロス王子の肖像画がある。
馬をせりだすようにわざと描いて、まだ幼い王子を理想的に、気高さが出るように、
風景の中に配置する。
王族への、敬虔な思いと深い愛情を感じられるところがベラスケスの偉大なところだと思う。
もうひとつ、私の好きな画家、ティツィアーノのヴィーナスが展示されていたのが、収穫だった。
ティツィアーノはヴィーナス(とオルガン奏者)のテーマでいくつかの似たような作品を描いているが、
そのひとつ。
結構、危ない感じに見えた。(あぶな絵のような感じ)
女神ヴィーナスを示す事物がひとつも描かれていないらしいこともあってか、
以前見たクラナハよりも何となく…見てはいけないものを見た感じ。
しかし、やはり構図のうまさと女性美に見とれてしまう。
そのほか、ルカ・ジョルダーノ、スルバラン、ムリーリョ、クロード・ロラン、
グイド・レーニ、ジェンティレスキ、ヴァン・ダイク、そしてルーベンス、
見たい画家が思いがけず沢山あった。
見られるとは思っていなかった画家の絵を、思いがけず見ることが出来て、
幸運な気持ちになり、それがうれしい驚きだった。
少ない数でも充実した気持ちになったのは、そのせいであろう。
ルカ・ジョルダーノのとほほさ
(大好きな画家なのだが、描き方が見るからに雑で(笑)、より親しみを感じたり)
スルバランの敬虔さとバロックらしい肉体のテクニック、
ムリーリョの明るい信仰態度、
ジェンティレスキのドラマチックなバロック風味、
クロード・ロランの神秘的な風景画を見ることが出来たのも収穫だった。
ヴァン・ダイクの絵には気品があり、描く対象(人物)に誠実であり、
そして一枚だけのグイド・レーニの聖ヤコブは、レーニらしい劇的で神秘的な人物像で、
レーニらしさがたっぷり見られて、うれしさ一杯だった。
そしてルーベンス。
私は以前からルーベンスには批判的(?)で、あまり好感は持っていないのだが、
(工房で大量生産していたこともあるためである)
実物を見ると、やはり素晴らしい。
聖家族は暖かみと敬虔さがあり、アンドロメダは劇的でありながら下品に陥らず、うまい。
やはり名を残す画家は抜きん出ていると確認できた次第である。
そのほか魅力的で興味深い作品も多くあり、予想以上に見応えがあった。
こういう一人の画家をフィーチャーして、展示会を開く場合、
そのほかの作品に何を持って来るかで、評価が定まると思う。
そういう意味で、このプラドは成功していたと言えるだろう。
もうひとつ、実物を見ていつも思うことは、印刷とは明らかに質感が違うこと。
印刷は、細部まで見せようとするためか、言ってみればどぎつい。
実物はもっと穏やかなのだ。
とくにネットで出回っている画像はコントラストが強すぎ、
実物の良さがあまり再現されていないのが残念だ。
*****
美術館のすぐ向かいに坂本花織ちゃんの垂れ幕が…
出身校だったのだろうか…?
ところで、このプラド美術館展のカタログにミニサイズのものがあり、
(たて約15.5p×よこ13p)
1.300円という安さだったので、買ってみた。

裏
ミニサイズながら、すべての作品が網羅されており、重要な作品は見開きになっていたり、
非常にお買い得品だった。
「視覚と聴覚」
ヤン・ブリューゲルの賑やかな作品も見開きで大きく収録。
ヤン・ブリューゲルといえば、花の静物画の画家だと思っていたが、
テニールスのような「図鑑的絵画」も多く描いていたらしく、興味深い。
(このような作品は、カタログ的意味もあり、それぞれの作品が特定出来るほど
精密なので、重宝されたという)
ものすごくマニアックなジャンル絵画なので、マニアな自分は大喜び。
(この系統の絵が大好きなのだ)
これからの展覧会でも、金欠の人のために、
このようなミニサイズカタログを常時販売して欲しいと思った。
本棚への負担も減るしね。
一筆箋は、美しかった静物画のものを買った。

これは裏
一筆箋は外せないなあ…つい買ってしまう。
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