衣替えの季節である
5月末の夏と今の季節には
制服のスカートの丈直しを依頼されることが多い
大体は紺のプリーツだが洒落た格子柄も多い
大抵はお母様が10センチ〜20センチの丈詰めを
割と必死の形相で持ってこられる
私が女学生の頃は、皆、丈を長くしていた
少しでも大人っぽくみせるのが流行っていたようだ
私はしなかったけれど・・・
きちんと決められた丈のスカートを
毎日布団の下に敷いてプリーツを整えていた
病気になった気になって学校を休み
小説に読みふけったり
音楽を聴きながら編み物をしたり
違う意味での不良だった
最近の膝が見えるようなスカートも
最初は何だ?と思ったけれど
眼が慣れてくると結構可愛いものではある
自立するのも最近の子は遅いのではないか?
私がこの子達の頃は何でも自分で決め
後から知られて叱られた
少しでも早く自立したかった
ある意味、今の子達のほうが 親孝行なのかもしれない
今月は祝日が多く、従って休日が多い
うちには保育園児がいて
こんな日は 仕事にならない
朝食が終わったと思いきや
玄関先で外を指差し外出を要求される
あまり子供に合わせてばかりいると
ストレスが溜まるので
自分自身の楽しみの為の外出に
子供を付き合せているのだと発想を転換し
バランスを保つことにしている
百貨店に行き、まずはアフタヌーン・ティーでお茶
可愛いお菓子を一緒に頼むと
子供も満足しお利口さんだ
CDショップの1000円均一コーナーを覗き
ギター・デュオ、ジャズアレンジ其々の
シャンソンやスパニッシュ・ギター音楽を買い込む
ラジオの話し声をうるさく感じる少々お疲れめの時は
好きなヨーロッパ音楽をBGMにする
無印コーナーに
300円台でミニ観葉植物が置いてあり
眺めていたら、また緑が恋しくなってきた
あれやこれや違う種類を7鉢
窓辺に並べることにした
帰宅後、今日はこれで終わりかと
虚無と満足の入り混じった心持で
子供を寝かしつけていると
近所の奥さんがお孫ちゃんの給食用のエプロンと
お帽子を作って欲しいと生地を持ってこられた
これからのわずかに静かなひと時は
窓辺の緑に眼を休めながら白いキャラコを縫い
遠いパリの町並みに想いを馳せる事にした
秋分の日
この季節決まって思い出す小説がある
作家、原田康子さんのベストセラー【挽歌】だ
秋分の日の朝、目覚めた主人公、怜子は
近くの丘に散歩し、一人の中年男性、桂木に出会う
この二人の不倫を扱った物語だと
一言で言ってしまえば味気ないが
ストーリーそのものよりも
怜子のファッションやニヒルな感性
舞台となる北海道釧路の、一昔前風景が
なんともロマンティックで
ちょうど長袖が恋しくなる今の季節の気分と
リンクして切ない
着古した黒いタートルネックのセーター、格子のシャツ
父親の女友達が営む洋装店で作った
ボートネックの黒いベルベットのドレス
桂木婦人の煙った眼差しと
仕立てのよいオーバーコート、手袋etc...
中学生だった私が魅せられ、以来愛読書となり
今の職業に就くこととなったきっかけの
一つといっても過言ではない
わけあって全ての本を一度手放したのだが
記念事業の一環として
この本の新聞連載の復刻版があることを知り申し込んだ
まもなく手元に届き、再び記念すべき一冊となる日も近い
しばらくなにをしていたかと言うと
最初の何日間かはデジカメ&ホームページ作り
その後は
ひたすら大物の着物のコートを縫っていたのです
呉服の展示会があって
サンプルで何種類か作っている縮緬のコート
これがまた、普通のデザインとは違い
かなり凝った物となっている
こういうものをご注文されるお客様と言えば
かなりのこだわり奥様が多い
場所も取るし気も使う
私自身、本当はかなりの飽き性なのだが
こういうものを作るときは
エイっとエンジンを入れなおして
息をひそめ食べるものも食べず
ガソリンがなくなるまで
ひたすらひたすら作り続ける
ひそかにひそかに息をひそめて・・・
聞こえてくるのは、低いラジオの音と
小鳥のかさかさとした羽ばたきとサエズリだけだ
お客様からとてもうれしいメールを頂いた
昨日お渡しした先日ご依頼の女の子のダンス服
今日、レッスンに来て行かれたら
先生がとても気に入ってくださって
一緒にタップを踏む二人の服も
女の子と同じデザインに統一しましょう・・
ということになったのだそうだ
発表は明後日なので、二人の服を作られた方は
どうされるのだろうと少し気の毒になったけれど
それはさておき、わざわざレッスン場から
ご連絡いただいたのもうれしかった
こういうことがあるからやめられない
さあ、気持ちを引き締めて
これからもがんばりましょう
ここしばらくパソコン三昧の日が続き
ご注文をそのままにしていることに
かなり後ろめたい気がしていたのだが
今日は結構集中して仕事をした
土曜日に
可愛い小学2年生の女の子とお母様がご来店され
お友達とダンスの発表をするのだが
それが20日なのだそうだ
よくよく考えると結構日が迫っている
わりと特徴的にうちのお客様は
かなり日が迫っているか
いつでもいいからやっといて・・と
2、3シーズン先のまで持ってこられるか
どちらかが多い
さっそく何はともあれ掛からなくっちゃ・・と
さっそく型紙と生地を手に取った
小さい子の服は
じられないほどの小さなパーツの組み合わせで
こちょこちょやっているうちに
いつのまにかできてしまう
それに、うちには、女の子がいないから
何となく得をした気分になれる・・・
前に水玉ワンピースのお客様を
紹介してくださったIさんが
たくさんのリメイク服を持って来店された
もう10年も前の服、これは4、5年前の・・と
少し照れたように説明されていたが
長い人生において、就職、結婚、引越しなど
節目の時期が否応なく訪れて
人生の選択と共に持ち物の選択というものを
迫られる時期が来る
その何度かの厳しい選択の眼をクリアし
持ち主さんと共に長い時間をすごしてきた
もの言わぬ愛しい服たち
中には捨てられなかったけれど
一度も日の目を見ずひっそりと衣装箱の中で
自分の運命を待っていた服もいる・・・
また、捨てられなかった持ち主さんの気持ちもある・・・
そう思うと、たかがリメイクというような
簡単な気持ちにはなれない
実行するにはスピードと思い切りが肝心だ
でもその心構えは
決してあやふやなものであってはならない
鋏は持ち主さんと共に暮らした長い時間を
断ち切るために入れるのではない
これからの新しい時間を再生するため
まさに、人生をre・makeするために入れるのだから・・・
ちなみにこのリメイクは
ベストの前身ごろが前面スネーク柄で派手だったため
切り取って黒いニットの地色を多く出し
切り取った部分で、共布のバッグを作ったものです