時々取り上げることが重要。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150121-00000009-mai-sctch
>STAP細胞の論文発表から、間もなく1年がたつ。刺激を与えるだけで体細胞を受精卵に近い状態に初期化させることができたという内容で、再生医療への応用や新たな医療の開発につながると期待された。だが、科学的検証でSTAP細胞は存在せず、既存の万能細胞のES細胞(胚性幹細胞)だったことが確実になった。一連の経緯を振り返ると、論文の主要著者が在籍した理化学研究所が当初、不正の全容調査を渋ったことが騒動の長期化を招き、結果的に真相解明を遠のかせた印象をぬぐえない。理研の信頼回復への道は険しい。【東京科学環境部・須田桃子】
◇疑問点に答える解析には消極的
昨年12月26日、2度目の調査委員会(桂勲委員長)の記者会見で、スクリーンに次々と映し出されたのは、筆頭著者の小保方(おぼかた)晴子氏(31)の研究室などに残っていた試料の詳細な解析結果だった。
それによると、STAP細胞から作られたという「STAP幹細胞」などは、計3種類のES細胞が元になっていた。万能性を確かめる実験で作られた組織やマウスも、ES細胞に由来する可能性が非常に高いと結論付けられた。
調査委が調べたのは、論文公表前の多岐にわたる実験や解析の結果だ。その都度、偶発的なミスでES細胞が混入したとは考えにくく、調査委も、何者かが故意に混入させた可能性を強く疑った。しかし、誰がなぜ、どのように混入させたのかという最大の謎に答えが出せず、不正と断定することもできなかった。
「ES細胞ではないか」という指摘は、疑義発覚後の早い段階からあった。だが、理研本部や、不正の舞台となった発生・再生科学総合研究センター(CDB、当時)の幹部らは、STAP細胞を新たに作製する検証実験にこだわり、解析には消極的だった。
例えば、CDBの相沢慎一・特別顧問(当時)は昨年4月、STAP細胞をマウスの皮下に注射してできた腫瘍(テラトーマ)の切片を解析してはどうか、という私の質問に、「STAP細胞があるかないかという観点からは、その切片をみても何の意味もない」と答えた。今回の解析ではまさにその切片も対象となり、テラトーマはES細胞由来だったと判明した。
調査委が新たに捏造(ねつぞう)と認定した2件の図表についても、昨年4月には、CDBの「自己点検チーム」による論文の全図表類の調査で疑義や問題点が浮かんでいた。ところが、川合真紀理事は5月、「(新たな疑義の検証は)プライオリティーが下がっている」と述べ、調査を実施していたことすら認めなかった。遠藤高帆(たかほ)・上級研究員は同月下旬、公開されたSTAP細胞の遺伝子データの解析で、ES細胞混入を強く示唆する結果が出たことを理研幹部らに報告したが、幹部はその内容を盛り込んだ論文の発表に待ったをかけた。「再調査はしない」としていた理研が重い腰を上げたのは6月末だった。
◇公の場での説明、小保方氏に望む
昨年、理研は、研究者を高額な年俸で雇用できる「特定国立研究開発法人」への指定を目指し、さらなる飛躍を図ろうとしていた。その流れを断たないためにも、「STAP細胞はなかった」という最悪の結論は避けたかったであろうことは容易に想像できる。だが、私は、もっと早くSTAP細胞の存在を疑って試料を押さえ、ES細胞そのものだという結果を関係者に突き付けていたら、より真相に迫ることができたのではないかと感じる。
結局、小保方氏は、説明責任を果たさないまま、調査委の報告を前に退職し、理研もそれを認めた。野依良治理事長は「前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています」との場違いなコメントを発表し、1週間後の調査委の報告に続いて開かれた理研の会見には姿を見せなかった。川合理事は、調査の遅れを問いただす記者からの再三の質問にも「前回と今回の調査の合わせ技で全貌解明にかなり近づいた」と自画自賛で切り返し、有信睦弘理事は「これ以上の調査をやるつもりはない」と強調した。理研は近く発表する関係者への処分で幕引きとするだろう。
STAP問題では、論文の不正や疑惑の多さはもちろん、それ以上に理研本部やCDBの幹部の対応のまずさによって、科学への信頼が大きく損なわれた。その責任を自覚していると思えない幹部の言動に、理研の将来が見えた気がする。数々の実績で国際的評価も高い研究機関だっただけに、残念でならない。小保方氏には、共著者の若山照彦・山梨大教授、丹羽仁史・理研チームリーダーとともに、もう一度公の場で説明してほしいと願っている。