2019/9/29

「ハローワールド」2019日  今日の映画

 今回は、友人から「ハローワールド面白いかなあ」と聞かれて見に行った映画。絵柄から見ても自分からは見に行くタイプのアニメではないのだけど、そういう映画を見るのもたまには良いかという事で鑑賞。そういえば、原作脚本の野崎まどは短編を読んだことがあったんだった。

 この映画、まず良いのはオーバーチェアがあること。カウントダウンとともに曲が流れており、予告編も、例の映画ドロボーも、注意も無しで始まるのだ。これが許されるのならもっといろんな映画でやって欲しいよ。

 本好きで内向的な少年直美は、ある日三本足のカラスに出会う。そのカラスに図書館の本を取られた直美はカラスを追いかけた先の神社で一人の男に出会う。彼の名はナオミ。彼は直美にこの世界が京都の過去を再現した、仮想現実世界である事。そして、彼は10年後の現実の直美であることを告げる。そして、自分の目的が直美のクラスメートであり、やがて直美と恋人同士になり、しかし次の花火大会で落雷のために死んでしまう瑠璃を助け、自分が果たせなかった直美と瑠璃の人生を仮想現実上で果たしたいのだと言う。直美はナオミから、瑠璃と仲良くなるためのアドバイスと瑠璃を守るために仮想現実上の物質を操るツール「グッドデザイン」を譲り受ける。やがて恋人同士になった直美と瑠璃の前に運命の花火大会の日が訪れる。そして、その時にナオミの本当の目的が明らかになるのだった…。

 このアニメ、「君の名は」フォロワーであることは確かだけど、自分にとっては直美と同じ中学自体に読んだSFの影響の方が大きい。いわば、神林長平の世界でめぐり合う、梶尾真治の恋人たちというのが近いだろうか。

 続きを読む以降はがっつりネタバレです。



 今回の映画では現実が3層になっている。

1.仮想現実世界、アルタラ上に再現された過去に忠実なコピーである2027年の京都。ナオミはこの世界の瑠璃の意識を2037年の世界にインストールしようとしている。

2.「2027年の花火の事故で瑠璃をかばって植物状態になった直美」の意識をサルベージするために2047年の瑠璃によって作られた、「2027年の花火の事故で植物状態になった瑠璃」という現実とは違う過去を持つ2037年の世界。つまり、ここでのナオミ「瑠璃を取り戻すための10年」の記憶は仮想現実上の物

3.2047年現実世界。瑠璃は「2027年の花火の事故で植物状態になった直美」を助けるために、仮想現実上の意識をサルベージし、直美にインストールしようとしている。

 そして、サルベージの条件は、植物状態になった時に近くなること。つまり、2037年のナオミは「直美に恋する瑠璃」が必要で、2047年の瑠璃にとっては「瑠璃に無償の愛をささげるナオミ」が必要だという事になる。

 本来であれば現実である2047年こそが唯一の真実であり残りの二つは所詮仮想である。しかし、劇中でも語られる通り、我々は自分の現実を成立させるフォーマットを意識することはできないので、2027年の直美も2047年の瑠璃も彼ら自身の現実と言う意味では等価なのである。
 2047年の瑠璃はナオミを助けるために、「仮想現実上に再現された過去の直美+自分がシミュレートした10年分の仮想の記憶を持つナオミ」を作る。しかし、それは本当にナオミなのだろうか。2037年にサルベージされた瑠璃は自分がナオミにとっての瑠璃ではないと直感的にわかったのに。

 実は、この物語においては2027年の直美と瑠璃、2037年のナオミと2047年の瑠璃は運命的に結ばれており、この絆は世界の構造よりも強固なのである。この無条件の絆が梶尾真治を連想させるところで、多分この映画の背骨となるところなのだろう。ただ、神林長平ファンである私にとってはこの部分が飲み込みづらいところであるし、ここをもっと掘り下げればいいのにと不満に思う所でもある。つまり、仮想現実と言うハード上で動く意識はおのずと現実とは違う変容を見せないのか?

 ただ、そういった掘り下げはこの映画の仕事ではないのか。彼らは困難を乗り越えて愛を成就させた。それこそが重要なのであり、そこがどの世界なのかは関係ない。それは梶尾真治の登場人物も神林長平の登場人物もたどりついた場所であり、普遍的なハッピーエンドなのだろう。

 ちなみに、劇中でうつる直美の本棚には笑ってしまった。あの本、全部家にあるわ。
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タグ: 映画



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