はっきりいって溺愛している作品。
怪獣映画に一区切りつけた『怪獣総進撃』の後、メタフィクション的番外編『オール怪獣大進撃』から2年のブランクを経て、のゴジラ復帰作。
低予算のため、一斑体制等さまざまな逆境の中で製作された作品だが、監督を務めた坂野義光の個性による非常な意欲作となっている。
公害問題や若者の風俗、サイケな映像演出、挿入されるブラックなアニメーション、主題歌「かえせ太陽を」など、子供向けとはいえ、子供に媚びた作品作りになっていない。
さらに、怪獣の被害を受け実際に死体をさらす人々、発表される被害者数、主人公の父親はヘドラのために顔面を包帯で覆ったままとなり、準主役の青年はその他大勢の若者とともにたいまつでヘドラに立ち向かいあっけなく死んでしまう。
実にハンパない映画だ。
ちょっと不可解なシーンの挿入も味わい深い。
百万人ゴーゴーを見つめる爺さん達。
洒落てるが意味がわかんない北斎の富嶽三十六景(神奈川沖浪裏)等々、
カルト映画を作ろうとして作ったんじゃないかとも思える。
さてこの映画のゴジラ。
研ちゃんの夢に登場するシーンが印象的だ。
太陽を背に現われるゴジラ。
この映画ではゴジラは大自然、地球の代表として描かれる。
目がつぶれ、右手は焼け爛れて白骨化、それでもヘドラに立ち向かうゴジラ。
最後には空を飛びヘドラを追う。
陰鬱で前衛的な音楽演出から一転、高らかに鳴り響く眞鍋理一郎の音楽も効いている。
人間も地球の一部、だがこれ以上自然を汚し続けるとどうなるか。
ゴジラは人類と共闘してヘドラを倒すが、最後、人間達へ向ける視線は鋭い。
第1作に通じる社会性はピカイチ。
あの時代が生んだ傑作だ。
余談だが、ゴジラがヘドラの体内から取り出す二つの球。
目玉か生命核か、議論が分かれるところ。
昔は目玉じゃなく生命核、目玉なら赤いはずと思ってたけど、あれは目玉だな。
映画前半のオタマジャクシのお化けも乾燥したら目が白くなってるもんな。

0