息子ゴジラには顔の表面処理が違う2種の状態があることはご承知の通り。
一方は、ラテックス製のベースにフォームラバーでヒダを貼り付けただけのもの、もう一方は、その上からオガクズを混ぜたラテックスで叩いてイガイガを増したもの。
『大ゴジラ図鑑』などでは撮影本番用とその前、といった表現をされるのだが、手直し前の状態でも本編に使われている。
手直し前の状態が確認できるのは、赤い沼のほとりでミニラがゴジラの尻尾を飛び越えて遊んでいるシーンと、同じく赤い沼のほとりで放射火炎の特訓をするシーン。
どちらもゴジラ親子のみの登場シーンとなる。
おそらく『ゴジラの息子』特撮班の撮影は順撮りではなく、ゴジラ親子のシーンを先行して撮影していたのだろう。
ゴジラとミニラの絡みをパイロット的に撮影したのか、クモンガやカマキラスが完成していなかったのか・・・。
さて息子ゴジラだが、手直し前と手直し後ではオガクズの叩きの有無だけではない違いがある。
写真で比較してみよう。
細かい頬の肉取りも、オガラテで溝が埋まっただけでない違いがあるようだが、大きく違うのが下アゴであろう。
どうも改修によって一回り肉がそぎ落とされているようだ。
これにより前から見た際の下膨れの顔がいささか緩和され、ややシャープな印象となる。
また、息子ゴジラの特徴である上アゴの口角のラインがスーッと首筋につながっていくのも改修後に顕著になっている。
なぜこのような改修が行われたのだろうか。
言ってしまえば、どちらの顔も今までのゴジラとはかけ離れた面相であり、今の我々からするとあまり意味はないように思える。
息子ゴジラに入った役者は、大仲清治と関田裕である。
大仲氏が指を怪我したために降板し、関田氏と交代となった、という。
書籍などで中島春雄氏が入った、体型にフィットしてない息子ゴジラとされるのは、おそらく関田氏の入った状態を指すと思われる。
『サンダ対ガイラ』における中島氏と関田氏の身長差を考慮しても、関田氏より大仲氏の方が長身であり、代役であった関田氏が入るとダブつきは避けられなかったのであろう。
なお中島氏は今作では南海ゴジを改修した海ゴジのみの出演である。
本編やスチールをよく見ていると、ゴジラが役者にフィットしているのはおおむね改修前であり、改修後はダブついているよう見受けられる。
ひょっとしたらゴジラ役の変更に伴い小改造やメンテナンスが行われたのかもしれない。顔面の相違はその際に生じたものではなかったか。
オガクズの叩きに関してはあるいは副次的なもので、下アゴの小型化こそが改修の主目的であり、下アゴの表面処理と顔面の調子を合わせるために施されたものとも考え得る。
息子ゴジラについては謎が多い。
顔の極端な間延びは着ぐるみの大型化を図ったためとして、
なぜ背ビレが独特の意匠を施されたのか、よくわからない。
そういった面を含めて、魅力的なゴジラと考えている。

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