始発電車で赴いた 軽き気持ちで高尾山
子供時分の遠足と 思い馳せれど足が来ず
薬王院にて戻ろうか あの杉越えたら帰ろうか
折り返し点をば何処とする 弱気心が顔を出す
苦労と見ゆる上り坂 景色楽しむ余裕無く
我慢比べのしかめ面 生きる姿とさも似たり
この期逃せばいつ来れる 余生の薄き日めくりを
ふと胸元に感じつつ 今を生きると腿を上げ
頂上到着誇らしく 我にとってはチョモランマ
憩ゆる登山者背を向けて 万歳三唱手首だけ
リュック弁当広げたる グル−プ横目に思い出す
早朝よりの空腹と 乾きとニコチンレベルゼロ
やまびこ茶屋が目に入りて 吸い寄せられて席に着き
食券買うを気付かずに 山菜とろろの蕎麦頼み
清水舞台さながらに 谷にせり出たテラス席
旨さは水だとよく聞くが タバコも空気で味が増す
遠く近くでウグイスの 声の掛け合い肴とし
過ぎ行く刹那を惜しむよに チビリチビリと飲むビ−ル
登り着いたら降りるのみ 芝居の幕もいつか引く
人生舞台の足跡に ここに心を置いて逝く
