2011/10/29
平成23年は 愛でる人とて無き桜
気持ちの節目平常を 取り戻せるかと願を掛け
桜木根元に酔う宴 人が群れたは幻か
犬の散歩が前を過ぎ 隅田上りたゆりかもめ
スカイツリ−が陽を受けて 春の影絵は何処に落つ
牽引さる船川下り 津波の無かった海へ出る
一人花見で缶ビ−ル 味が苦いは気のせいか
今を盛りの命花 波にのまれし血が混じり
川風浴びても気は晴れぬ 姿臭いも感じぬが
花のひとひら付着する 放射能の花吹雪
疲れた顔へ向くカメラ 嘘でも作り笑顔ぞと
何を笑えばよいのやら 気休めならぬ木で休み
これで災難終結す いやいや次もござる国
命の儚さ折込みの 桜のお国の人だもの

2011/10/27
財布の中身で物が買え カ−ド渡せばレジが済む
貧しさ嘆くは富豪国 物に埋もれて息苦し
3.11境とし 金を持てども物が来ず
計画停電灯り消え 初耳単位の汚染知る
追悼自粛で立ち消える 季節ごとなる催しも
麻痺した心で見送れば いつの間にやら桜咲き
都内花見のスポットの 隅田に人居ぬ川桜
出勤帰宅の急ぎ足 横目で見上げ過ぐるのみ
鳩が足元舞うて寄る 小雀何をついばむか
キ−ッとヒヨドリ鳴く声を 追えば花間で隠れん坊
戦後の桜は重かりし 経済復興花見酒
今年は開花も知らぬまま 時代を映すか淡い紅

2011/10/21
牛の乳から放射能 乳飲み子命を危ゆうし
東北家畜が懸念さる 今は牛のみ騒がるが
ついに金町浄水場 セシュウム基準値超えたもう
安易に予測も出来た事 松戸に柏はまだ酷どし
空が泣く度地が濡れて 流れて入るは利根川の
生活貯水を誤魔化すは 一千万超す都市憂い
上水道は大丈夫 下水の汚泥は危なきと
つじつま通らぬ安全な 水をそなたが飲みなされ
洗濯物は汚染され 湯舟は願わぬ放射泉
味噌汁コ−ヒ−ラ−メンも 子供に出せない隠し味
お茶っ葉煎じてシ−ベルト 海の単位はベクレルと
日頃の食材目をつむり 知らぬが仏と買出しへ
しかるに水の汚染にて 保身の強き人が群れ
出遅れ観の良識者 カゴに入れるの物が無し
トイレ風呂場も水は出る 洗い物する水もまた
渇水断水でも無きが、口に含むる水が無し
ペットボトルに缶ジュ−ス ビ−ルも製造元を記す
工場取水の明示のみ 見当たらぬのを不信とす
ただちに健康害さぬと 曖昧報道慣れ来れば
いつぞに健康害す時 罪を受けるかアナウンサ−

2011/10/19
物欲薄き生き様は 持たず貯めずの日々暮らし
生粋江戸っ子でもあらず 宵越しの銭身に付かず
足るを知れとは師の教え 失くす物無き幸いを
悟りたごとくの振りをする 無い物ねだりを隅にやり
東日本が身震いし 動脈硬化で物が来ず
危機の意識は集団で 獣のごとくに買いあさる
慌てる事無き性分で どうにかなるさと店へ行き
売り物消えし棚を見て 買い物カゴは空のまま
都心が飢える非常時に 物無き時代がふとよぎる
戦中戦後の貧しさに 子供負ぶうた母を見る
節電間引きの照明に 非常灯の緑映え
余震で揺れても落ち来たる 物の並ばぬ飾り棚

2011/10/6
訝かく揺れるは血圧か 目眩無き足立ち上がり
身体大きく振られたる 踏ん張る足は前や横
ビルのざわめき軋む音 ペンキブロック壁が割れ
台車一人で右左 消防バケツの水が跳ね
半生生きて経験す 地震幾多もやり過ごし
この揺れ幅と永さとを 比較す記憶が見付からず
終わり無きかにシェイクされ ビルの崩壊さえも湧く
ここはたまたま最上階 梁と柱の下に着き
小松左京が著した 日本沈没掠めたり
時は3時の少し前 この日歴史に刻まるか
泥酔酔っぱの足取りで 窓から見下ろすJR
新幹線は緊急の ブレ−キシステム利きたもう
ホ−ムの鉄柱掴む人 その場に腰から落ちた方
ビルを見上げる眼差しは 逃げ入る場所が無い証し
余震続きて夕刻に 各ビル1階解放区
ブル−シ−トにへたり込む 見知らぬ者との肩が触る
八重洲口ではバス待ちの 長蛇の列に諦めて
歩きを決めれば人の河 余震にあちこち声が上ぐ
携帯電話の普及にて 姿減らせた公衆の
少なき電話に人が群る 安否を確かむ人が居ず
動かぬ車を横に見て バス停並びし人哀れ
始発時点で満杯車 それを告げるも忍びなし
エレガントなる通勤着 不似合い頭にヘルメット
ハイヒ−ルはスニ−カ− 避難袋が背で揺れる
寒さに小用もよおせば 飲食店もコンビニも
店内トイレに出来た列 公衆便所はあとわずか
地の利知りたる地元にて 裏露地入り喧騒も
夢のごとくに遠くなる タバコ点して暖を取り
ス−パ−ム−ンの月軌道 マントルさえも動かすか
歩き疲れて部屋の前 当日唯一の写真撮る

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