塩原温泉福渡 今宵のお宿を確かめて
時間まだ有るお昼時 川の向こうへ渡る橋
洒落たホテルのレストラン 軽い食事と立ち寄れば
受付なさり列で待つ それ見て満腹ロビ−椅子
風に吹かせる濡れタオル 先ほど露天湯香り付き
汗も無いのに顔に当つ 鼻で吸う息深くなり
上りカ−ブで気を配り 車途切れてはす向かい
散策マップに記された 天皇の間記念館
大正天皇御用所を この地移築の公園は
今が盛りのもみじ時期 滅多に来れぬと入館券
贅を尽くするほども無く 質素なみかどの保養の間
御厠札立つ便所床 大も小をも畳張り
今は造れぬ板ガラス 精度の悪さで味が出る
格子の枠より透けて見ゆ 景色微妙にゆがむなり
発券案内管理者は 中年ちょい過ぎご婦人で
心の豊さ身にも出て 一人旅先抜く力
風が動けば葉が鳴りて 名前も知らぬ山の鳥
近木に降りて尾をば振る その目に我れはどう見ゆる
開く手の平差し出して ご婦人小鳥に声掛けば
次から次へと入れ替わり 飼われぬ命が手に止まり
ここが一番安心と 思ってくれているのでしょう
母性の笑み出るご婦人に 自他を分かつる衣落つ
人に慣れない生き様が 一人上手の域に入り
されど誠の心根は 誰れぞの止まり木に成りたしと願う
