岩手花巻北上の 支流に出湯は鉛の湯
いささか重い湯の名前 しかるに訛りはなお重い
清流面し建つ湯宿 藤三旅館の名物は
猿が見付けた湯来(由来)あり 話の種にと参り来た
珍湯百景数在れど 立ち湯で浸かるも稀れ湯船
胸元深さに怖じ気付く 既に手の平立ち泳ぎ
ソーラン節の歌詞で知る 五尺の体は命取り
子供禁止の文字も無く 腰の曲がるも危うかれ
先ほどロビーで知り合うた メダカのご婦人湯に入り
あっぷあっぷで息を継ぐ 共の熟女と鯉になる
気位高気な奥様は 湯から上がるに尻を向け
肛門様への身筋見せ 大股へりへと足を掛く
失礼したものお見せした 侘びる口元笑みが出て
いえいえ何のと礼を言う のどかに響く笑い声
簡易な脱衣所ほどく帯 浴衣の下には下着無く
混浴慣れした立ち姿 会釈見上ぐる湯の深さ
旅館部からと湯治部と それぞれ廊下に続く戸に
見上げる階段覗くるは 小心者の婦人客
恋の季節の山鳥が 天涯湯気を抜く枠で
見事声高ラブソング 裸婦より視線を外せたり
丸型湯船は適温で 比重の分だけ湯が溢る
砂漠の民には申し無き 湯音に混じる安堵声
湯底の岩より湧く湯元 爪先立ててまさぐりて
やっと見付けた手を上ぐる メダカのご婦人少女の顔になる
