2019/9/28
優しい男 演技賞
育ちの良さか 聖人か
釣った魚に エサやらず
乙女浅はか 尺度かな
気弱な男 半歩引く
上から目線 もう半歩
こうべを垂れて 顔隠し
声に出さない 毒を吐く
冷めた男は 疑問形
それで?どうして? 腑に落ちず
面倒臭いが 先に立つ
心のひだの 角質化
うぬぼれ男 姿見を
顕微鏡にて 見る近視
背景世界 別次元
見せてやりたや 望遠鏡
嘘つき男 幼少期
作り話しに 毛を生やし
人を軽んじ 舌を出す
女上手と まだ知らず
真面目男は 自分流
相手の歩調 気に掛けず
几帳面さが 「我」に出でて
きしむ摩擦の 音聞かず
燃える男は 悪癖な
周り巻き込む 演出家
いつも情熱 空回り
他とのギア比を 考慮せず

2019/9/19
台風銀座 九州で
生まれ育った 幼少期
嵐は急に 来る時代
衛星ひまわり 空に居ず
怪獣ごとく 木々暴れ
坂道V字 えぐる雨
風きり音が 電線を
切れば暮らしは 江戸時代
懐中電灯 手探りで
点けて仏壇 蝋燭に
灯す明かりに 揺らぐ影
部屋を流れる 隙間風
雨戸魔物が 連打する
ここには誰も 居ませんよ
息を殺して 身を伏せて
怯える目玉 落ち着かず
令和の年に 15号
東京湾に 夜明け前
猛威もういい 暴風雨
波のごとくの 外の風
地下鉄乗りて 皇居前
横断歩道 冠水し
運河ごとくの 交差点
見慣れたタクシー 水上車
風に敗北 街路樹を
よけて通勤 OLの
忠誠出勤 あの企業
千葉の停電 まだ知らず

2019/9/12
東武北口 花川戸
浅草ならの 焼きカツ屋
永くこの地で 暮らす故
店の主人の 老いも見ゆ
毎朝通る 七時前
店の前をば はき掃除
開店時刻 間が有るに
シルバー世代 時間軸
アジサイ鉢に 朝顔や
もてなす四季に ホウズキも
人に慣れたる ハトが寄り
下町風情 裏通り
ラジオ聴きつつ 打ち水は
店の前過ぎ お隣へ
おっと行き過ぎ その隣
近所付き合い 良と知れ
店の名前は 桃タロー
夕暮れ時に 待つ客は
赤い敷物 長椅子で
とうに乾いた 路地景色となる

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