一昨年度からだっただろうか、保育士を取る学生の為に15回の講義
回数を確保しなければならなくなった。学生達が教育実習に行ってい
る期間の4回分の補講しなければならない(「初等音楽科教育法」)。
3年生が実習に行っている間、院生達(小学校免許を取ろうとする
院生)は居る訳だから、彼等と実習に行かない学部生達の為に,実習
期間中も授業は開講されている。これで合計20(16+4)回になる。
それで済めばいいのだが、時間割の都合上、保育士免許関係の学生
を2つのグループに分けて4回ずつ、計8回のコマを確保しなければ
ならない。結局、1つの講義の為に24回のコマ数を必要とすることに
なる。しかも、保育士関係の授業は他にも存在する。これはもう〜、
クレージーとしか言い様が無い!
今朝もその補講をした。どうせやるなら、採用試験を睨んだような
内容で、なおかつ、初等教員養成の学生の為に有益な事をやってやろ
うと思い、今日は「初見演奏」を中心とした授業をやった(兵庫県の
小学校教員採用試験には、この課題が含まれている)。
音楽コース以外の学生、中でも男子学生にとっては初見で弾くなん
て、とんでもない話である。でも、やり方次第で何とかなるものだ。
今日の授業の流れは以下のようなものだった。
〈ML教室の電子ピアノを使って「初見演奏」の授業〉
1、電子ピアノのメトロノームを♩=80に合わせて、手を打つ。
☆4/4拍子で4小節間
☆音楽がある一定の拍で流れて行く事を体感する。
2、学生は手拍子をし乍ら、私が語り掛けた問いに答える。
☆ここで、手拍子がメトロノームからずれてはいけない。技術が熟
達する事の意味を体験を通して理解する。
3、ホワイトボードに四分音符のみを書き、それを手拍子させた後、
私が八分音符入りの平易なリズム打ちをし、どこの部分がどうい
うリズムだったかを学生に答える。
☆既に書かれている楽譜をリズム打ちするより、学生は集中してリ
ズムを聴く。四分・八分音符の違いを体感するのに効果的である。
☆拍が2つに分割される事を体感させる。その後、八分音符・四分
音符の説明をする。
☆この辺りからの全ての活動はメトロノームに合わせて行なう。
楽譜を読むにはパルス感が最も基本的で重要な感覚であるからだ。
4、私の真似をして四分音符の部分を適当に八分音符に書き換える。
☆書いたリズムをリズム打ちする。
5、一人が四分音符で手拍子をし、もう一人が八分音符を含んだリズ
ムを即興で叩き、2人でリズム打ちをする。
☆ここで、音楽は基本的に、縦(拍子、リズム)・横(音高)・斜
め(音色、音量、etc.)で出来ている事を説明する。この時もただ
説明するのではなく、学生達から自然に答えが出る様に具体的な
実例を提示しながら理解を促す)
6、八分休符を数カ所に入れ、リズム打ちをする。
☆八分休符が幾つか入るだけで難易度が格段に上がる事を体感。
☆同時に、テンポを上げる。その事でも難易度が上がる事を体感。
7、各自に五線紙を配り、自分で♩と♪だけによるリズム譜を
考える。
8、考えたリズム譜を手拍子する。
9、ピアノのドの音だけを使ってリズム弾きをする。
10、五度の範囲内で音高を変えてメロディーを作る。
11、2人を指名して前のホワイトボードに、そのメロディーを板書する。
12、一人ずつ、そのメロディーをピアノで弾く。
☆私がそのメロディーに伴奏を付けて一緒に弾く。
13、2人のメロディーをホワイトボードに書き、同時に弾いてアンサン
ブルを楽しむと共に、2人が正確に弾けたかを聴き分ける。
☆2声を聴き分ける為には、よく聴かなければならない。よく聴く
というのは、音楽学習の原点である。
☆他の学生が作ったリズムや旋律をその場で弾く事によって初見の
力を知らず知らずのうちに身に付けさせる。但し、使用出来るリ
ズムと音は限定的。
上記の活動は、今日、初めてやってみたものだ。しかも、授業をや
りながら、その先を考えるといういい加減なものであった。しかし、
「音楽教育の5つのコンセプト」が、そのプロセスの根底に流れてい
る(プラス:授業展開を速くして学生達を飽きさせない様に!)。
1、楽しい活動でなければならない(楽しさは音楽学習の原点だ)
2、具体(音)→抽象(記号としての楽譜)の道筋で指導過程を構成
3、身体反応を通して音楽を自分の身体に取り込む
4、易から難へ、無理なく習得できる学習プロセスを構築
5、誰もが到達出来るような内容であること
「何だ、とっても低レベルな事をやっているな」と思われるかもし
れない。音楽に精通している人は、平易なメロディーを初見で弾く事
など、そう難しい事ではない。でも、小学校教員養成の学生は、「音
楽が出来る様になるプロセス」を自分の実体験を通して理解する必要
があると認識する。つまり、自分が出来る出来ないよりも、あくまで
も「出来る様になるプロセス」を考える事が重要なのである。そして、
そのプロセスの引き出しを多く持っている人が、いい先生になるのだ
と思う。
今日の授業は、あっと言う間に終わってしまった。
来週は、さらに難易度を上げてみよう〜っと!
忌憚のないご意見・ご感想をお寄せ頂ければ幸甚です。

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