一昨日、ようやく振替休日をいただき、映画「
選挙」を観に行ってきました。
平日の午後ということもあり、他のお客さんといえば年配の方5人ばかりでしたが、いよいよ来月には参院選選挙があるわけでもあり、監督自身、ぜひとも参院選前に封切りにもって行きたかったというだけあって、とても興味深く観ることができました。
舞台は一昨年、平成17年秋川崎市議会議員補欠選挙。自民党議員が参議院議員に鞍替えしたために、市議会の勢力図は自民18:民主18の同数になってしまったため、何が何でも勝たなければならない選挙に、自民党は公募をかけて候補者を選んだわけです。
ここで山内和彦さんという東京大学出身の40歳の切手・コイン商の方が名乗りをあげ、そこから始まるのが今回の映画なのです。
この映画の凄いところは、台本作らず、”やらせ”一切無しの、それこそ目の前(正確にはカメラの前)に起こることを行き当たりバッタリで撮影したもの、つまり全く先入観なしでひたすら現実を追ったものだということです。
監督(実は、候補者山内和彦の東大の同級生なのだが)自身も驚くほど予期した以上のことが起こり、スリル満点の映像の連続で、ナレーションなし、説明のテロップなし、特殊効果なし、音楽も一切なしという特異な映画にもかかわらず、非常に楽しめた2時間でした。
ニューヨーク在住の監督の視点から見ると、日本の選挙は相当物珍しかったようで、候補者山内和彦が、選挙活動の一環として「老人会や保育園の運動会に参加する」「早朝のラジオ体操に参加する」「秋祭りの神輿を担ぐ」といった活動を通じて、人縁・地縁のない地域への「落下傘候補」というハンディを凌駕していく。そこには、国会議員・県会議員・他の市会議員、それから地元政財界のお偉いさんといった自民党の伝統的とも言うべき選挙戦術も加わり、「ズブの素人」を「公認候補」として形作り、やがて戦える候補として祭り上げていく・・・。
自民党という巨大組織といえども、選挙ではこんな地道な活動をやっているのか、と感心しましたが、「3秒に一回は名前を連呼する」「バス停に並んでいる全員の人と握手する」「握手の手を離すときは必ず相手の目を見て訴える」「大型団地に向かって演説する」「必ず”小泉自民党の”やまうちかずひこです!という」などなど、マニュアル化されたその内容には”なるほど、そこまでするんかいな”という気がしなくもありませんでした。
また、「よく自民党がそこまで撮影させたな」と別の意味で感心しました。
今日、いろいろ調べてみると、この映画の反響の大きさをあらためて感じたのですが、海外からの声として特に多かったのが、「一切政策について言及しない候補者が当選するなんてわが国ではありえない!アンビリーバブル!!!」というものでした。
まさに、日本の常識は外国の非常識。
「電柱にもお辞儀作戦」など、そういったことに違和感を持たない私はいかに「日本人」なのか痛感しました。
全国20都市のミニシアター(広島では「横川シネマ」でかかっています)のみでの公開なので、観るのが困難な地域もあるかとは思いますが、ベルリン国際映画祭フォーラム部門ワールドプレミアを始め、数多くの国際映画祭から正式招待を受けるなど、海外での評判は高く、ある意味「逆輸入」のような形で日本での公開が決まった経緯もあるようですが、参院選を前に、選挙の予習の意味で機会があれば是非一回はご覧いただけたら・・・そういう映画だと思います。

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