2006/4/12

淡水魚と海水魚が同居出来る水槽(ナノバブル)  日記(今日思うこと)

友達からメールが届いた。「1年前は、万博会場にいて暑かったね」今日の名古屋は、嵐のような天気だった。平野部に咲いた満開の桜が散ってしまう…と懸念していた。そうか1年前は、満開の桜をリニモの車窓から眺めながら、私は万博会場へと向っていたのだ。普段から人混みは得意ではないが、私にはどうしても自分の目で見てみたい物があり、並ぶのを覚悟して出かけて行ったのだ。平日だった為、入場ゲートはそんなに混んではいなかったが、入場すると人気のパビリオンには長蛇の列が出来ていた。私は真っ先に目的のパビリオンへと向った。それは長久手日本館…私が観たかったのは新聞紙上で紹介されていた「ナノバブルの水槽」だった。長久手日本館の1番の売り物は、ゾーン2にある、世界初の360度全天球型映像システム「地球の部屋」。それは美しい地球を心の中に刻み込む事をコンセプトに造られた映像空間だった。多くの人がこの「地球の部屋」を目的として、2時間以上並んでいた。
愛地球博会場を走るリニモ。 クリックすると元のサイズで表示します

その「地球の部屋」を出て、ゾーン3に入ると、「自然と生命」「人と技術」「技術と自然」の繋がりをテーマに、森林のような空間になっていた。その一角に私が見たかった水槽はあった。その水槽の中には、当たり前のように鯛(たい)と鯉(こい)が同居していた。順路に添って進む人達は余り気にも留めず通り過ぎて行った。水質は海水の3分の1の塩分濃度と書かれていた。しかし何故海水魚と淡水魚が一緒に泳いでいられるのか…。その話はそこから9年前に遡る。

宮城県のとある町で生活排水などによる地下水汚染で、水族館の魚が大量に死ぬ事態が起きた。当時排水浄化処理会社の社長をしていた千葉氏は、浄化力のあるオゾンを”封入”した微細な泡「マイクロバブル」の発生装置を水中で作動させると、いつものように汚染は消えて行った。その日は「いつもより効果が速い」と思いつつ、ふと水族館の水槽を見て目を見張ったそうだ。瀕死だった魚が元気になって泳ぎ始めるという現象が起きたのだ。「この水の影響か?」千葉氏の半信半疑の気持が、確信に変わったのは、その海水魚の水槽に金魚を入れた時だった。酸素を泡に”封入”した水の中で金魚はすいすい泳いだという。
クリックすると元のサイズで表示します 長久手日本館内の水槽(鯛と鯉がいる)

何が起きているのか?千葉氏は、5人の学者に浄化データを見せたが、常識では有得ないと誰も信じてくれなかった。その泡に拘り続けた千葉氏の会社は業績が上がらず倒産した。それでも千葉氏は諦め切れず、ベンチャー企業「REO研究所」で研究を続けたが、やはり理由は見つからなかった。「もうやめよう」と思った矢先の2003年3月、産業技術研究所(茨城県つくば市)の主任研究員、高橋氏と出会った。高橋氏は、自身の研究でマイクロバブルより小さなナノバブルを僅かだが確認していた。直径200分の1ミリ以下のマイクロバブルがサッカーのグランド大なら、ナノバブルはボール大。直径1万分の1ミリ以下という桁違いの小さな泡を「世界で初めて発見した」と思っていた。しかし、千葉氏の水を分析すると、理論付けはされていないが、既に実用化されていたのだ。高橋氏は感嘆した。

ナノバブルを巡って異なる背景の2人の研究者が出会った。2人は異なる経緯で、ナノバブルの不思議を探求していたのだ。ナノバブルは顕微鏡でも泡を確認することは出来ず、一見普通の水だが、半年後も6割強が水中に残るという。マイクロバブルが刺激で潰される瞬間に生じた高温、高圧がナノバブルを作り、泡の長期持続時間を長くするらしい。ナノバブルの数多の力が明らかになった。例えばマイクロバブルでは入れない牡蠣の体内に浸水し、食中毒を起すノロウィルスの活動を完全に止める事が出来た。そして2004年、国際ナノテクノロジー展の生命工学部門賞を受賞。その後8つの大学などが応用の研究を進めている。更にホルマリンなどの薬品を使わない魚の養殖や癌、アルツファイマー病の治療の可能性を指摘する学者も現れた。用途は広がっているが、以前謎も多いままで水槽での海水魚と淡水魚の同居、あの水族館の魚のように生命を回復させる力のメカニズムは、まだ学者達でも解明しきっていないそうだ。

しかし論理が解明されて居らずとも、私の目の前には、同じ水槽内で鯉も鯛も金魚も平目も平然と泳いでいた。通りがかった団体の中の男性の1人が、「何だありゃ?鯉と鯛か?」と大声をあげた。私は少し嬉しかった。すると他の男性が答えた「あれは、鯛に似た鮒だ、何かの力で鮒が大きくなったのだろう」と。その言葉には妙に説得力があり、その団体の人達は納得して通り過ぎて行った。水槽の横の説明はあまりに小さく、人混みでは読み難かった。私は呼び止めて説明したかったが、とてもその人達を納得させられる説明は出来そうもなかったので諦めた。千葉氏が、こだわり続けた「はてな」。科学とは、当り前と思っている中に「はてな」を見つけそれを解明して行くことではないかと思った。

帰りのリニモの中で、再び桜を眺めながら、ソメイヨシノの歴史を思い出していた。ソメイヨシノは、江戸後期に「大島桜」と「江戸彼岸」の交配で誕生した人工種である。生育が早く何より特徴的なのは葉が出るより花が咲き揃う事だ。しかも咲いている期間が短く、一斉に咲き一斉に散る。その姿を人生の散り際を重ねあわせるのも人気の秘密だ。今では日本列島の桜の8割を占めるという…この革命の花…ソメイヨシノでさえ、その交配の理論は明かされていない。それ以前は山の桜で花見を愉しんだ日本文化も、ここ100年の歴史で桜と言えばソメイヨシノが当り前のようになった。当り前でなかった時代もあった事を忘れないでいたい。
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2006/4/12  10:16

投稿者:じんのじん

『ナノバブル』初めて知りました。
プロジェクトX、のような展開で興味深く読ませていただきました。

人の行く 裏に道あり 花の山

ボクの友人達にもいます、常人が考えもおよばないようなことに情熱を注いでいる男達が。
でも、例外なく貧乏だなー。
彼達にも、今日の記事読ませます。

『私の現在が成功というなら、私の過去はみんな失敗が土台づくりをしていることにある。仕事は全部失敗の連続である』(本田宗一郎)

http://jinnojin.jugem.jp/


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