2007/11/23

ボストン美術館No4…印象派の影響を受けたアメリカ絵画T  ボストンの思い出

ボストン美術館のアメリカ絵画に分類される絵の中で、私はジョン・シンガー・サージェントの絵…「エドワード・ダーリー・ボイドの娘達」(1882年)が、脳裏に焼きついて離れなかった。この絵は2007年春、名古屋ボストン美術館に「アメリカ絵画-子供の世界」という題目で来日しており、私は今回、この絵と海を越えて再会する形となった。サージェントの絵は、アメリカ絵画に分類されているものの、サージェント自身は、1856年イタリアで生まれ、少年時代をフィレンチェで過ごしている(両親の国籍がアメリカ)。12歳から絵を学び始め、14才でフィレンツェのアカデミア・デッレ・ベッレ・アルティに通い、1874年には18才で官立美術学校に入って学んだ。
クリックすると元のサイズで表示しますエドワード・ダーリー・ボイドの娘達
[221.9×222.6cm] (※写真は全てクリックで拡大)


やがてサージェントは、1877年パリのサロン(官展)に出品し、一躍脚光を浴びる事となるが、1884年に出品した『マダムX』という実物大の肖像画(メトロポリタン美術館蔵)が、当時にしては肌の露出が多く官能的で、実在の女性…ゴートロー夫人と明らかに酷似していた為に(実はサージェントが、夫人にモデルを頼み込んで描き、「マダムX」として名前を伏せていた)、一大スキャンダルとなり、翌年パリを離れてロンドンに移り住んだ。しかしその実力は群を抜いており、ロンドンでも肖像画家としての地位を得ると、ロイヤル・アカデミーに出品、1897年には同アカデミー正会員となった。そして1891年、ボストン公共図書館の壁画制作にと白羽の矢が立った。この仕事の為にボストンとロンドンを行き来しながら活動をしていたサージェントは、更に1916年、ボストン美術館移転の際、建物のロトンダ(円形大ホール)の吹き抜けの天井絵を任される。サージェントは、この天井絵をギリシャ、ローマ神話等から想を得て描くと共に、装飾のレリーフを含めるロトンダの空間全体の設計に携わった。
ロトンダの天井絵  クリックすると元のサイズで表示します

さて、時間が前後するが、本題の絵…「エドワード・ダーリー・ボイドの娘達」は、サージェントが若干26才の時に描いている。19世紀当時に描かれた家族の肖像画の多くは、子供達皆が対等な位置にいて、両親と共に座っていたり、遊んでいる姿が描かれていたが、この絵は、そのセオリーとは違い、意図的に異なる技法でボイドの4人の娘達の持つ、個々に独立した個性を強調している。まず、向かって右前方に立っているのが、この絵の主役のような8才のメアリー、少し後ろにいる2人の姉、12才のジェーンと14才のフローレンス。この姉2人は部屋の後部に立ち、まるで召使のように控えているように見える。そして床に座っている末っ子のジュリア(4才)。ジュリアはこの絵の中で唯一の玩具である人形を抱いて無邪気な表情をしている。このように等しい重要度でモデル達を描くという慣例が破られ、姉妹それぞれの個性を強く表して描かれている。※以下は姉妹それぞれの拡大写真(部分)

クリックすると元のサイズで表示します ←三女、メアリー。

次女ジェーンと長女フローレンスクリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します ←末っ子のジュリア。

この作品は、例の「マダムX」出品の前年…1883年のサロンで、大変な注目を浴びた作品で、批評家の間では、過去に例のない構図と少女達の笑顔がない表情に、賛否両論ではあったが、パリの日刊紙「ルヴュー・デ・ドゥ・モンド」は『作品に潜む心理的な不可解…観る者に家族間の関係について疑問を呈している事…を上手く表現している』と絶賛した。またサージェントは、ピアノを弾いたりして、子供達の機嫌を損ねる事なく肖像画を描き続けた。更にサージェントは、1980年代中頃から、モネの住むジヴェルニーを訪ね、1885年、モネをモデルにした「木の脇で写生するクロード・モネ」という作品も描いている。
絵の中にある有田焼きの壷 クリックすると元のサイズで表示します
(実物の写真…江戸後期〜明治初期作成)


一般的には、上流階級の人達を描いた肖像画家として、知名度が高いサージェントだが、1907年頃から肖像画の注文を一切断り、晩年はボストン美術館のロトンダ製作に携わる傍ら、水彩で風景画を描いていたという。サージェントは、アメリカの画家達に印象派の技法を伝える共に、絵画コレクターの良きアドバイザーとしても活躍した。更に前記したロダンダの設計と、展示してある自らの絵画で、ボストン美術館、そしてアメリカ絵画の発展に大きく貢献していると言えよう。   ※最後は問題となった[マダムX」の絵(メトロポリタン美術館蔵)
クリックすると元のサイズで表示しますマダムX(ゴートロー夫人)1884年
[208.6 x 109.9 cm]…思わず息を呑んでしまう程の美しさである。
サージェントが、生涯唯一依頼ではなく、自らモデルに頼み込んで描いた作品だったという。

John Singer Sargent's Galleryより引用→http://www.jssgallery.org/
0



2007/12/5  4:58

投稿者:ほたる

メリンダ社長さん、返事が遅くなりました。ごめんなさい。

>ほたるさんこんにちは
メトロポリタンのアメリカ絵画コーナーでは
印象に残るものが少なかったのですが、

そういえば、社長さんは、メトロポリタンへ行って居られましたね。

>こうして拝見してみると本当に引き込まれる
ような絵ですね。

はい。写真を超越した絵画というか、とてもリアルで吸い込まれそうです。

>きっとメトロポリタンでは見逃していたのですね。

此方の美術館では、何気に飾られていて見逃す事が多いですね。
私も次回NYへ行ったら、必ず観たいと思っています。

>いずれも影の描写が巧みで引き立たせているので
しょうか?
リアルな描写に奥の深さを感じさせますね。

そうなんです。サージェントは、恵まれた才能+絵の基本をしっかり学んでいただけあって、
肖像画として描かれた作品は、恐ろしいほどリアルです。でもどの作品にも、
共通して「美しさ」があると思います。水彩画も力強くまた味わいが違って良いですよ。

>絵も見る人の想像を膨らませてくれるところにも
深い魅力がありますよね。

正にそうだと思います。私は今回美術館のロダンタもまじまじと観ましたし、
サージェントの絵を中心にじっくり観る事が出来て、益々ファンになりました。

>「ボストン美術館の思い出」をお裾分け頂き
堪能させてもらいました。

とんでもないです。まだまだ印象派やアメリカ絵画等、沢山写して来ています。
少しずつ載せて行きますので、また見てやって下さい。



☆メリンダ社長さんへ

2007/12/1  0:46

投稿者:melinda

ほたるさんこんにちは
メトロポリタンのアメリカ絵画コーナーでは
印象に残るものが少なかったのですが、
こうして拝見してみると本当に引き込まれる
ような絵ですね。
きっとメトロポリタンでは見逃していたのですね。
いずれも影の描写が巧みで引き立たせているので
しょうか?
リアルな描写に奥の深さを感じさせますね。
絵も見る人の想像を膨らませてくれるところにも
深い魅力がありますよね。
「ボストン美術館の思い出」をお裾分け頂き
堪能させてもらいました。

2007/11/29  5:53

投稿者:ほたる

みきさん、こんにちは。LAに続いて今度はボストンが暑いくらいの日がありました。
やはり異常気象ですよね。気温が安定しない中、くれぐれもお体、ご自愛下さいね。

>サージェントの女性肖像画は一度見たら忘れられないような強烈な印象を残しますね。

はい。気にかけてサイトで他の絵も見ましたが、鼻筋を通して美しく描いています。
ボストンのもう1つの美術館…イザベラ・ガードナー邸でサージェントが母子の肖像画を
描いている写真がありましたが、かなり美人に描かれていました。
かと言って別人のようではなく、筆によって魅力的になる…という感じでした。

>マダムXも謎めいているし、

この絵は、特別ですよね。しかし本人からは受け取り拒否をされて、最後まで、
サージェントの手元にあった絵だそうで、アトリエのこの絵の前で絵筆を持つ姿も写されていました。

>少女達を描きながら笑顔がないというのも、とても斬新な構図だったのですね。

そうですね。四人姉妹だと若草物語みたいな、元気溌剌で笑顔のイメージですが、
絵ほ通じて何か訴えているような目(表情)をしている気がします。

>あと、水彩の風景画をスケッチ代わりにたくさん描いていたようで、そのコレクションを見たことがあるのですが、

まぁ、実物をご覧になってのですね。私は美術館の本屋さんで画集を見ました。
伸び伸びと描かれていて、サージェント自身本当はこういう絵が好きなんだなと思いました。

>そちらは肖像画とは全く違った淡々とした雰囲気で面白かったです。

そうでしたか。。
仕事で請け負って描く絵と、趣味で描く絵の違いがあるように思いました。
仕事の絵は、相手の価値を上げる為に、様々な工夫がされているように感じました。


☆みきさんへ

2007/11/29  5:40

投稿者:ほたる

恵雅さん、こんにちは。ボストンは少しずつ冷えて来ていますが、まだまだ暖かいです。

>「エドワード・ダーリー・ボイドの娘達」って写実的で吸い込まれそうな絵ですね。

肖像画としては、珍しい構図ですよね。
仰るように、絵には素人の私でも観ていると時間を忘れてしまう絵の1つです。

>特に末っ子のジュリアの愛らしい事、愛情を感じる絵です。

はい。メアリーとともに、特別扱いですよね。
ダーリー・ボイドも画家さんだったそうです。
サージェントの名前を売る為に、貢献した後押しした画家だとか。。
ジュリアの持っている人形…唯一の高価な玩具
…も見事に描かれていますよね。


☆恵雅さんへ

2007/11/29  5:35

投稿者:ほたる

こひ〜さん、こんにちは。
新しくUPしましたが、カジノへ行きました。こひ〜さんのお知恵を拝借したかったです(笑)

>末っ子のジュリアの絵、絵じゃなく写真みたいですね!

今にも話し出しそうなほど、リアルですよね。
僅か26才でこの絵を描いたのですから、天才ですよね。

>頬の影の具合なんか、すげぇ!

写実的な中にも、力強い筆使いが見られます。
後々、印象派の影響も受けて作風が変わって行くのですが、
絵だけでなく、立体的なレリーフも見事で、改めてサージェントの天才ぶりに驚かされます。


☆こひ〜さんへ

2007/11/28  13:08

投稿者:みき

サージェントの女性肖像画は一度見たら忘れられないような強烈な印象を残しますね。マダムXも謎めいているし、少女達を描きながら笑顔がないというのも、とても斬新な構図だったのですね。

あと、水彩の風景画をスケッチ代わりにたくさん描いていたようで、そのコレクションを見たことがあるのですが、そちらは肖像画とは全く違った淡々とした雰囲気で面白かったです。

http://diary.jp.aol.com/applet/aujzpye6s4d2/323/comment#commentform

2007/11/27  18:45

投稿者:恵雅

 こんにちは。

「エドワード・ダーリー・ボイドの娘達」って写実的で吸い込まれそうな絵ですね。
特に末っ子のジュリアの愛らしい事、愛情を感じる絵です。

http://sky.ap.teacup.com/keiga/

2007/11/27  17:05

投稿者:こひ〜

末っ子のジュリアの絵、絵じゃなく写真みたいですね!
頬の影の具合なんか、すげぇ!

2007/11/26  15:06

投稿者:ほたる

>サージェント展があるときっと マダムXを人々は見たいと思います。

私も調べていて、思わずNYのメトロポリタンへ行こう!と思ってしまいました。

>私もサンフランシスコの美術館で何回か見ているのですが、ほたるさ
んのブログでさらに詳しく学びます。うれしいです。

サンフランシスコへ行った事があるのですね。
日本にも来て欲しいです。でも名古屋はパスされそうですが(笑)

>肖像画やアメリカ絵画の歴史ではきっと『マダムX』について学びま
す。

そうですか。確かに欠かせない絵という感じがします。

>2メートルもある美しい人から(肖像画)見下ろされると引きつ
けられ竦みます。浮き彫りの横顔の線が美しい。テーブルに置いた手
が美しいと思います。

そうですね。彫像的な滑らかさと立体感がありますね。
写真で観ただけでも、吸い込まれるような美しさです。
私も実物を是非、観たいと心に誓っています。

>アメリカの美術館では、許可を貰うと絵の前に敷物を敷いてスタディ
をしている人がありましたが、9-11から鉛筆画だけが許可かも知れま
せん、時々写真も撮る事ができないところもあります。感謝です。

ありがとうございます。
今日はサージェントの絵に、かなり接近して撮っている人もいました。
フラッシュ無しならOKって寛大ですよね。
それにしても、どの世界にもテロの影響は大きいのですね。



☆takakoさんへ No2

2007/11/26  15:05

投稿者:ほたる

takakoさん、名古屋ボストン美術館は確か1999年にオープンしました。
でも、現在常設展はなく、ボストン美術館から借りて企画展示されています。

>ほたるさん 名古屋ボストン美術館を知りませんでした。

今日25日も行ったのですが、窓口の若い係りの人は知りませんでした。
名古屋の会員でボストンに来るなんて、そうそう無いみたいです。

>名古屋ボストン美術館のメンバーに成るとボストン美術館と特別展の切符も手に入ると言う事かなと しばし考えました。例がないですよね。

そうですね。姉妹館になっていて、一応年間会員ですと、
名古屋で開催される展示にフリーパス、そして図録が無料、
更にミュージアムショップは10%引き、という特典に、ボストンも無料と書かれていました。
問い合わせて来たのですが、必ず入れるか?という問い合わせも、
名古屋では初めてだったらしく、なかなか使われないみたいです。

>スペシャルメンバーに成ると幾つかの美術館の入場がひとつのメン
バーカードで入れたりしますが、、、

そういうスペシャル会員の特典もありますね。でも高価ですよね。
名古屋の年会費は5000円、それでボストンの17ドルがフリーですから、
ボストン自体のメンバーより安過価という事になります。
私ももっと早く知って置けば…と今更ながら後悔しています。


☆takakoさんへ No1


※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ