忠盛からの路線を引き継ぐ清盛登場

その才覚と努力によって平家の武力・財力・家格を飛躍的に高めた忠盛。受領としては伯耆、越前、備前、美作、播磨と西国の大国を歴任、官職は中務大輔、右京大夫、右馬頭、待賢門院の政所別当、美福門院の院庁別当、内蔵頭など数々の顕官を務めました。そして、仁平三年(1153年)に死去したときは、正四位上刑部卿にまで達していました。刑部卿といえば太政官を構成する八省の一つ刑部省(罪人の収監や事件の訴訟などを扱う役所)の長官であり、正四位上といえばその上はもう公卿しかありません。もう少し長生きをしていれば、「武士として初めて昇殿を許された」忠盛は、あるいは「武士として初めて公卿に列せられた」人物として歴史に名を残したかも知れません。
忠盛の死については、かの悪左府・藤原頼長が日記に記しています。「数国の吏を経て富巨万を累ね、奴僕国に満ち、武威人にすぐ、しかれども人となり恭倹にして、いまだかつて奢侈の行あらず。時人これを惜む」。巨万の富をなし武名を恣にしながら、奢ることなく鳥羽院に仕え巧みに宮廷を遊泳した忠盛の姿を端的に伝えているといえるでしょう。
忠盛の死の三年後、「武者の世」の到来を告げる保元の乱が勃発、忠盛から家督を引き継いだ清盛のもと、平氏一門は未曾有の発展を遂げることになります。ただ、それは清盛が一朝一夕に築き上げたものではなく、時代が大きな転換点を迎える中、清盛が忠盛の路線をしっかりと継承したからこそなし得た快挙にほかなりません。平家の栄華は、忠盛・清盛の二代が築き上げたといっても、言い過ぎではないのです。
参考文献 上横手雅敬著・源平の盛衰 梶原正昭編・平家物語必携 和田英松著・新訂官職要解 五味文彦著・平清盛 吉川英治著・新平家物語 元木泰雄著・平清盛の闘い 池宮彰一郎著・平家 安田元久著・後白河上皇・平家の群像 下向井龍彦著・日本の歴史7武士の成長と院政 関幸彦著・武士の誕生〜坂東の兵どもの夢 竹内理三著・日本の歴史6武士の登場

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