寒すぎて手が凍えて何も出来なくて、する気が起きない。
しもやけが痛くて手を洗うのも一苦労で、オロナインをつけるのも手間で、
外へおつかいをする気にもなかなかなれない。
洗濯物を干していたら、手が冷たく感覚がなくなり、つらい。
朝晩は手指がちぎれそうなほど痛い(T_T)。
早くこの季節が過ぎていくのを待つばかり…。
++++++++++
だいぶ遅くなったが、お正月の1月2日にNHK総合で放送された、
「ライジング若冲」を録画しておいた。
若冲もついにテレビドラマ化されるほどになったとは感慨も一入だ。
ただ画風が派手な絵師ほど実生活は平凡だったり地味だったりする。
どのように絵師の生涯を描くのだろうと考えていたら、
伊藤若冲を認めた相国寺の僧、大典顕常とのBL風味(驚)を添え、
生涯ではなく、
「動植綵絵」を描き上げるまでの葛藤と情熱をドラマ化したものであった。
まず若冲役の中村七之助の京都弁がほぼ完璧なのに驚嘆した。
少年時代から先斗町に出入りして覚えたものだろうか。
「絵」を「絵ぇー」と発音するのは、京都の人間の特徴で、
それをよく表現していた。
京都の人は一音を何でも伸ばす。
「歯が痛い」は「歯ぁが痛い」、
「蚊に噛まれた」を「蚊ぁに噛まれた」と言う。
それをちゃんと発音しているのには、七之助、さすがだと思った。
そして彼は育ちの良さからか、
何とも品の良い、はんなりした若冲像になっていた。
本物の若冲の人物はまったく分からない。
が、ドラマ上ならどのようにでも描ける。描いても良い。
品があるが、芯が通っており、
いざとなると絵画への止みがたい情熱を迸らせる人物として描かれていた。
同時代絵師として、池大雅、円山応挙が登場するが、
応挙が少しカリカチュアライズされていて、
三枚目風に描かれていたのが少し気の毒だった。
応挙はきわめて生真面目で、人としては真摯なイメージがあったのだが。
池大雅は酒飲みの大らかな人物として描かれ、役得だった。
曽我蕭白も登場して欲しかったところだ。
そして売茶翁に石橋蓮司が大変いい味を出していた。
石橋蓮司が登場すると場が引き締まる。
ロケは京都を中心に行われたのではないか。
相国寺が出て来るし、大覚寺も出て来た。
相国寺は威厳があって良い画になっていた。
若冲は絵師になると決め、家督を弟に譲った時から、
「動植綵絵」に手を染め始めた。
「動植綵絵」は若冲の絵師としての帰結点ではなく、スタート地点であったのだ。
そのことには、今も驚嘆するのであるが、
ドラマは若冲が止むにやまれぬ絵を描くことへの渇望から、
相国寺の僧・大典との出会いを経て、大作を描き上げるまでを
大典との友情を軸に、ドラマ化していた。
画家の生涯というものは、起伏がおそらく少ないだろうし、
絵を描く場面ばかりになり、
ドラマ化は難しいと思うが、大典との交わりを中心に描くことで、
アクセントをつけていた。
絵師(特に若冲)の当時の絵の描き方もおそらく、忠実に再現しているのだろう。
裏彩色のやり方や、スケッチの仕方など、も見どころのひとつ。
七之助はさすがに描く時のポーズが決まっており、美しい。
相国寺の僧、大典顕常役は永山瑛太で、二人が情熱的にハグする所や、
手を握りあう意味深な場面があるが、抑制はされていた。
確かに(若冲は)大典とは仲が良く、若冲の理解者であったし、
最後に出て来る淀川下りも実際の出来事で、
畢生の大作を描き終えた若冲が友の大典と船に乗り、
川下りを楽しんだことは事実である。
この淀川下りは若冲の拓版画「乗興舟」という、
見事なモノクロ画に結集されている。

(最後のところ)
私の好きな若冲作品のひとつだ。
それにしても伊藤若冲がテレビドラマ化され、
そこにBL風味を加味されるなど、想像もつかなかったことだ。
確かに若冲は生涯独身で、大典とは深い友情をはぐくみ、
噂をされていたこともあったにせよ。
「動植綵絵」が完成し、若冲はそれを大典に見せる。
「動植綵絵」は全33幅をその場で見ると、眩暈を覚えるほどの作品群である。
相国寺に寄進した作品だが、
釈迦三尊像(中国作品の翻案)を中心に、宇宙を形成している。
それは生きとし生けるものへの神経質なまでの眼差しである。
仏へ捧げた敬虔な宗教的作品であるとの解釈がされているが、
それ以上に魔的なまでにすべてにおいて過剰である。
初めて見た大典も驚愕したことだろう。
ドラマでは「動植綵絵」のうち、「芦雁図」と「老松白鳳図」に焦点を当て、
若冲が黒い鳥「芦雁図」は大典であり、
白鳳は自分であると説明する。
この解釈にはものすごく驚いた。
このドラマのクライマックスであろう。
「老松白鳳図」の白い鳳凰は、どこか媚びを売るような目つきも、
くねくねとうねる羽根の奇妙な艶やかさも、
艶めかしいほどに妖しく女性的だ。
「芦雁図」の雁は、一直線に水面に落下してゆくような不安感が、
画面全体を覆っている。
不吉な予感をも感じさせるのだ。
この二つを結び付け、若冲と大典の関係を象徴させ暗示させたのは、
このドラマの最大の見どころだった。
確かにこの二つは同時期に描かれている。
そこに目をつけたようだ。
ドラマの後の若冲紀行もドラマ以降の若冲の消息を手際よく描いていて、
なかなか良かった。
参考)
もっと知りたい伊藤若冲
もっと知りたい伊藤若冲改訂版 生涯と作品
(アート・ビギナーズ・コレクション)
1,980円
人気ブログランキング
美術館・ギャラリーランキング
にほんブログ村
映画評論・レビューランキング
にほんブログ村
フィギュアスケートランキング
にほんブログ村

15