いつの頃かは思い出せないが、いつだったか、
どのような番組だったかも忘れたが、NHKの番組だったと思う。
その頃、「笑点」で回答者だった春風亭昇太が出演していて、
何となくトークしていた。
そのトークがひどく面白かった。
トーク内容は忘れてしまったが、
その時いっぺんに昇太さんが好きになったのだった。
近畿に住んでいると、なかなか東京の落語を聞く機会はない。
けれどもNHK Eテレで「日本の話芸」という番組があり、
そこで落語を放送している。
春風亭昇太の落語も放送したことがあり、2度録画した。
去年の3月ころに「二番煎じ」という、
火の用心で町内を巡るのを題材にしたものも面白かったが、
最近録画した「御神酒徳利」という落語はもっと面白く、
何度も見て、笑い転げている。
八百屋さんがひょんなことから紛失ものの占いが上手ということになり
(インチキなのだが)、
東海道・小田原の宿で紛失した50両を探す羽目になる顛末を
軽妙に、絶妙に演じていて面白くてたまらない。
先日、BS朝日の「ザ・インタビュー 〜トップランナーの肖像〜」
という、1時間のインタビュー番組で春風亭昇太がゲストで出ていた。
インタビューの聞き手は小島慶子という人。
これも録画した。
小島慶子という人が聞き手に専念していて、
とてもよいインタビュアーだった。
このインタビューも昇太さんの語り口のせいか、話術のせいか、
爆笑につぐ爆笑で、何度見ても面白いインタビュー番組だった。
そこで感じたのは、やはり昇太さんの軽妙なトーク術であり、
彼のひとつの笑いにフォーカスを当てる手法が絶妙だということだった。
昇太さんのおじさんがユニークな人だったそうで、
そのエピソードを昇太さんが語る。
エピソードを一つずつ、重ねることで笑いを生み出す。
笑いのテクニックを熟知しているからだろう。
春風亭昇太は故・春風亭柳昇が師匠である。
昔、柳昇師匠をテレビで何度も見たことがある。
とぼけていて、ほのぼのしていて、優しそうなおじさん、
という印象があった。
昇太は良い師匠についたな、と思ったものだ。
柳昇師匠について、そのインタビューでは、
優しくて、師匠の落語が大好きだと語っていたが、
一方で、師匠は滑舌が悪く、何を喋っているか分からない、
とも言っていた。
滑舌が悪いので有名だった、とも。
けれど一度はまったら堪らない。
ネタではなく、人間が面白い。
ある時、師匠と電車に乗っていて、師匠が昇太さんに、
「昇太、ナスは美味しいね」
と言ったそうだ。
たったそれだけのひと言が、面白かったと。
何か面白かった。
そのなんか面白いを身につけられたら、と。
(それは)
ネタの面白さじゃなくて、人の面白さ。
春風亭昇太自身は、笑いを分析している点で、
頭が良いのだとも思った。
大学の落研時代、若い頃の春風亭小朝の落語を聞いて衝撃を受けたこと、
柳昇師匠の落語は江戸弁ではなく、普通の言葉で喋っていて、
それが良かった、
など、落語の世界に入ったきっかけも話していた。
最近結婚した理由を聞かれ、
「1回くらい体験しておかないと、
してみたら面白いかな、と。
体験したことがないものがあるのもちょっといや、なので」
と言うことだった。
こういう理屈で結婚に至るのも昇太さんらしいが、
それですぐに結婚出来てしまうというのも、ある意味幸運だといえる。
奥さんに対して、
「異質なものがいるのは面白い」とも言っていた。
彼自身は感覚的な笑いというよりは、理論的に考え、
自分自身の笑いの理想を追求するタイプなのだと思った。
2020年1月、NHKの「ファミリーヒストリー」に春風亭昇太が登場した。
それも録画していた。
そこでは昇太さんの父親が「自分史」なるものを作成していたことが、
語られていた。
(ご両親はすでに他界)
全8巻にわたる大作で、それに沿って昇太の先祖を探る構成だった。
昇太さんの父の「自分史」はもちろん手書きのもので、
出版が目的のものではない。
番組の最後に、その父の「自分史」は、
息子の昇太のために書かれたものだということが明かされる。
「ファミリーヒストリー」にありがちな、
俎上の人物を泣かせる演出かと思いきや、
落語家らしく、最後に笑いに持ってゆく幕切れも鮮やかだった。
これからも春風亭昇太から目が離せない。
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