京都新聞に2006年1月1日から12月31日まで、毎日朝の新聞の第一面の小さなコラムに連載された「菓子ひなみ」。
それが単行本となって発売されたのがこれ。
なんと驚くべきことに京都新聞には出版部があって、その京都新聞出版センターから出版された。
単行本化に際しては、新聞休刊日分も補充してある。文字通り、365日分のお菓子が網羅されている。
帯がリバーシブルになるという、粋なのか無駄なのか良く分からない仕掛けつき。
ひなみとは日次と書き、まあ日ごとというような意味なのだろう。連載の時初めて知った言葉だが、よい日本語だと思った。
これが新聞紙上に連載されている時には、新聞を読むのが格別に楽しみだった。食い意地の張っている私にぴったりのコラムだ。毎日が雲に昇るような気分であった。
それが一冊の本になったのだからこの私が買わいでか。
この連載を楽しみにしていたのは私だけではなく、多くの京都人民がそうであったようで、単行本のリクエストも多かったと聞く。当然の成り行きであろう。
京都だけでなく、滋賀県のお菓子屋さんのお菓子も掲載されている。
当然、すべて和菓子で統一されているが、しかしこの連載の特徴は、和菓子といってもジャンクフードも当然のように含められている点。
つまり、河道屋の蕎麦ぼうるや、飴やおせんべいやカステイラ、こんぺいとうや八つ橋や甘納豆やところてん、ふたば屋の豆餅まで掲載されているのだ。
なんと楽しい。と思うのは私ばかりではないだろうと確信する。
京都の和菓子といえばお上品なお茶席に出て来る、お上品な、見ためはたいそう美しいが、美味しいんだか不味いんだか良く分からないお茶菓子を連想するが、そういうのだけではなく、とても庶民的なところがさすが京都新聞。嬉しいではありませんか。
そして、当然のように6月30日には水無月の紹介、5月5日にはちまきという風にその日に食べる定番お菓子。
五色豆もあればあじゃり餅も。松風もかま風呂も調布も。
昔食べた、贈答品でもらって食べたあのお菓子の数々。
鍵善のくずきり、美玉屋さんの黒みつだんご、加茂みたらし茶屋のみたらし団子、幽霊子育て飴というように、お店限定のお菓子も。
ほうらほうら、涎が出て来たでしょう。
この前にみかさについて書いた薀蓄も、この本からの引用でありました。
「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出し月かも」
阿倍仲麻呂が中国で故郷を思いながら詠んだ歌、とある。
この本の最大の欠点は、いくらお菓子の写真をじろじろ見ても、実物を食べられないことだ。
終いにはヒステリーを起してページを引きちぎり、それを口に入れてむしゃむしゃ食べてしまいそうだ。

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