ベルギー奇想の系譜
高い図録まで買ってしまった。
何しろクノップフ先生が出品されているから…
まずボス工房の奇想の絵がメイン。
「トゥヌグダルスの幻視」
というまったく覚えられないタイトルの奇想絵。
これがメインで宣材になっている。
とにかくどうしたらこんな想像力豊かなものを生み出せるのだろうと
思われるような絵だ。
これはヒエロニムス・ボス本人の描いたものではなく、
工房作品ということなので、
ボスには工房があり、そこで沢山の画家が働いていて、
ボス風の作品を大量生産していたらしい。
ボスの奇想の絵が当時、いかに流行したかということだろう。
確かにボスの奇抜な発想の絵は当時とても評判になり、
追随者も沢山現れ、大流行したのだという。
そりゃそうだなと思う。
今見てもボスの絵はびっくりするほどシュールで大胆で、
全然古びていないし、むしろ新しい。
どうしたらこういう発想が出て来るかというような
デペイズマンに溢れている。
今見てもびっくり仰天する。
絵が描かれた当時に皆がびっくりしたのも無理はない。
美術館内部
そしてブリューゲルもはじめ、ボスの追随者として
ボスの絵をもとに、ボス風の原画を描き、
それをエングレーヴィングに仕上げたものを大量に発表していた。
この展示のボス風ブリューゲル作品(モノクロ版画)を見ていたら、
ボスなのかブリューゲルなのか分からなくなって来るくらい、
ボスそのものなので、混乱してびっくりした。
ブリューゲルがはじめはボスにこれほど影響を受けていたのだと
初めて知った。
ブリューゲルがボスのあとに出て来た画家ということも知らなかった。
(なんと無知)
ほぼ同時期か、お互い何の面識もなくて、
ブリューゲルがボスの影響を受けていたとは思ったこともなかった。
まったく影響など受けておらず、ブリューゲルは独自の画家だと思っていた。
でも確かに北方のフランドルの画家だからそうだよなあ…
と我が認識のうすさにあらためて驚くのだった。
それにしてもボスの発想の突飛さは今見ても新鮮そのもので、
現在の我々でも考えもつかないシュールさ。
なぜあのころにこれだけの想像力が発揮出来たのか、謎だが
とにかく見ているだけでも楽しい。
お客さんは多くなかったが、見ている人はみなガン見していた。

嫉妬
そのあとルーベンスの原画によるエングレーヴィングがいくつか
展示されているのは良かった。
特にわたくしの好きな聖ミカエルはちょっと盛り上がる。
ルーベンスもフランドルの人だったな…
それから展示は一気に世紀末へ。
何の脈絡もなくいきなり19世紀へ飛んでしまうが、
それでも見てしまう。
ベルギーは不思議な国だ。
時折えっと驚く画家を輩出し続ける。

天使
ここで愛するクノップフ先生の作品を久しぶりに見た…
久しぶりだ…
うれしい…
うれしさのあまり、数が少なくてもいいのだ…
小さくてもいいのだ…
カタログに載っていた全部が出ていなくてもいいのだ…
堪能したのだ…

これは明らかにティツィアーノ?
妹を愛しすぎたクノップフをヘンタイと人は言うけれど、
それでもいいのだ。
変態でもいいのだ。人間だもの いろいろあるさ
(さんざん格闘したが、クノップフをサイトに上げるのに失敗、
間に合わなかった…あとでゆっくりアップしよう…)
世紀末の画家でほかに出ていたのはフェリシアン・ロップス、
この画家はわりとあざといので…
と思っていたが、
しかし展示されていた作品を見ていると、
反キリストの思想がものすごく濃厚で、
なんだかキリスト教を呪ってさえいるような猛烈な反抗心を感じた。
既存のキリスト教的倫理観を拒否したかったのかもしれない。
つまりそれまでの倫理観に真っ向から反逆していたのだろう。
いかにも世紀末らしい、既存の思想が根底から揺らいでいた
時代を感じさせる。
ものすごく過激なものもあったけど、それは載せない方がいいんだろう…
ジャン・デルヴィルも同様に薔薇十字の思想に染まっていたのだろう。
ロップスほど強烈ではなくて、もっと神秘主義的。
(赤死病の仮面はすごかったが)
確実にモローに影響を受けている一人だ。
アンソールもちょこっと出品されていた。
もう何十年も前、単独の展覧会を見に行ったことがある…。
それ以来、あまり再評価をされていないみたい?なのが残念だ。
彼の場合は、自分の不遇を呪っているようなところがあった。
私の好きでないポール・デルヴォー…、
でも今回は髑髏や骸骨などのテーマの絵が少しばかり展示。
何となくベルギーの地続きな感じがあって、
印象は悪くなかった。
デルヴォーも或いは死の世界、静謐な眠りの世界、
あちらの世界を夢見ていた人だったのかもしれない。
そしてシュルレアリスト、マグリット。
私の好きでないマグリットの、しかし大好きな「大家族」
マグリットはまだ著作権が生きているらしく、
自由に画像を使えないらしい。
(公式からはダウンロードも出来たんだが、それを
使っていいのかどうか分からない)
私は昔、子供のころ、年賀状にこの「大家族」の絵を
真似して描いたことがある。
それくらい好きな絵だった。
海の上で、青い大空に大きな鳥が羽ばたいている…
でも、大空はその鳥の中にあり、
鳥はシルエットなのだ…
鳥の背景は曇り空なのだ…
海の波が、絵の下方に絵の具が盛り上がるように描いてあり、
感動した。
それ以外のマグリットの絵もあったが、
それらは正直微妙…
わたし的にはマグリットは出来不出来が激しいかと…
見終わると、併設のカフェでランチ。
タコライスというのを。
注文を取りに来てくれると思って待っていたら、
自分が先に注文しないといけないのだった。恥…
環境のいい、吹き抜けがいい美術館だった。
安藤忠雄の建築は、いくつか行ったことがあるが、
あまり好きでも嫌いでもなく、
それほど興味の対象ではなかったが、
今回知らないで行ったから、驚いた。
建物の中にいるととても心地よい。人に寄り添っている気がする。
実力がある人だ…
神戸へ来るのは最近2回目。
縁があるなあ
もうひとつの展覧会は諦めた。
くくく…ブロンツィーノさんさようなら…
人気ブログランキング
美術館・ギャラリーランキング
芸術・人文ランキング
にほんブログ村

4