秋分の日
この季節決まって思い出す小説がある
作家、原田康子さんのベストセラー【挽歌】だ
秋分の日の朝、目覚めた主人公、怜子は
近くの丘に散歩し、一人の中年男性、桂木に出会う
この二人の不倫を扱った物語だと
一言で言ってしまえば味気ないが
ストーリーそのものよりも
怜子のファッションやニヒルな感性
舞台となる北海道釧路の、一昔前風景が
なんともロマンティックで
ちょうど長袖が恋しくなる今の季節の気分と
リンクして切ない
着古した黒いタートルネックのセーター、格子のシャツ
父親の女友達が営む洋装店で作った
ボートネックの黒いベルベットのドレス
桂木婦人の煙った眼差しと
仕立てのよいオーバーコート、手袋etc...
中学生だった私が魅せられ、以来愛読書となり
今の職業に就くこととなったきっかけの
一つといっても過言ではない
わけあって全ての本を一度手放したのだが
記念事業の一環として
この本の新聞連載の復刻版があることを知り申し込んだ
まもなく手元に届き、再び記念すべき一冊となる日も近い