2010/12/6

レジョネアの嵐第67話「皇帝の問い」  大河トラビアン小説

「あれ…。ここは…、どこ…。」
 サンダー★はゆっくりと目を開けた。
(私はあの女と戦って…。!)
 あわてて体のキズを確かめる。彼女の鎧には無残な穴がいくつも開いていたが、その体にはキズ一つ無かった。少し安心してあたりを見渡すと、庭園のようなのどかな草原に、思い思いに兵士達が集まり談笑しているのが見えた。
(とりあえずここがどこか確かめよう。だれか知っている人間がいれば色々聞く事が出来るだろう。)
 サンダー★はあてもなくあたりをさまよう。そしてしばらく経っただろうか、車座になって話をしている男達を見つけた。他の兵士達は皆和やかな表情を浮かべているのに、彼らだけが真剣な顔で話し込んでいる。そしてその中に見知った顔を見つけた。
 
 彼女は全力で走り出した。

「お前は!」
 サンダー★は車座の中央に座る男、レジョネア君に向けて走り出す。
(あれは私達を騙した男だ!今度こそ刃向かえないように殺してやる!)
 サンダー★はまっすぐレジョネア君に向かっていった為、彼の隣の男が立ち上がったことに気づかなかった。レジョネア君に手が届こうとした次の瞬間、彼女は吹っ飛ばされた。何が起こったのかすらわからないまま、サンダー★は地面に叩きつけられる。
「ここは戦闘禁止だ。黙って座るか、どこかへ行け」
「うるさい!私はあのレジョネアに用があるんだ!」
 初めてサンダー★はその男に目を向ける。チュートニックナイトの格好をしているが、腰には斧しかつるしておらず、長い手をだらりと下にさげている。確かにベテランなのだろう。しかし、所詮英雄の敵ではない。
「面倒ね。あんたも死になさいよ!」
 手の中に電光を集めようとするサンダー★。しかし、その男はもう目の前にいない。そしてサンダー★が見回す時間すらなく、なすすべも無く引き倒された。彼女の首に伸ばされた左手で地面に押さえつけられ、身動きが取れない。
「お前は生まれついての英雄だな。死の恐怖におびえた事も無く、自分の命を懸けて戦ってこなかったお前は、戦いとは何かが分かっていない。」
 この男は何を言っている?ただ、自分の力が抜けていく事だけはサンダー★にもわかった。早く立ち上がらなければ!
でも彼女には自分の指一つ動かす事が出来ない。
「英雄の力は所詮借り物にすぎない。確かに地上では、俺はお前には勝てないだろう。だがお前は俺よりも、そこのレジョネアよりも弱い、ただの小娘にすぎない。」
 今の彼女には、なすすべも無く負けた悔しさ、憎しみは無かった。ただただ、目の前の男が怖かった。サンダー★は生まれて初めて恐怖で震えていた。今まで、彼女にとっての戦いは面白いゲームでしかなかった。しかし、この男はサンダー★が知らない死の恐怖と、常に隣り合わせで戦ってきたのだ。
「やめてくだされ。もうやめてくだされ。」
「じいさん…。」
 いつの間にかドルイド538弱々しい声を上げ、男の後ろで押さえつけようとしている。男は鼻白んだようにドルイド538をふりほどいて立ち上がると、サンダー★を捨て置いたまま元の位置に座った。
「相変わらず面倒見がいいな、チュート16。また一人鍛えてやったのか?」座っていたプレトリアンが声をかける。
「ふん、言ってろ。」
 このやり取りをサンダー★は呆然と眺めた。しかし、ドルイド538にうながされ、その場に座り込んだ。チュート16は一瞬彼女をにらみつけたが、すぐ関心を失ったように目をそらした。

「とんだ邪魔が入ったが、話を続けてくれ、プレ315」

///////////////////////////////////////////

「この競争に敗者などいないわ。だれが勝ったかという事に意味は無いのよ」

 バーズ61の言葉がプレ315の心に突き刺る。彼はいままで自分達が払った犠牲を思い返す。インペリたち、無数の防衛戦に消えたプレトリアンたち。そして、地面に倒れたプレ25の物言わぬ顔が目に浮かんだ。
「では、なぜあなた方は僕達を生かしたんですか!なぜ僕らは戦わなければならないのですか!」プレ315の声はもはや悲鳴だった。
 その問いに、皇帝は静かな声で答えた。
「一つ目の質問の答えは分からない。それはレガティ12が決めたことだからな。実際、我々が君をここに招きいれたのは、君達の何にひかれてレガティ12があんなまねをしたのか、その理由を知りたいためでもあった。」皇帝はそこで静かに微笑む。
「だが、今ではその理由が分かる気がする。この世界の兵士達の多くががただの数字のように生産され消費される中で、君達のような存在は奇跡なのだ。愛や憎悪、友情や裏切りという、語るべき『物語』を持った存在は。」
『物語』という言葉に皇帝は力を込めた。プレ315の脳裏には村での色々な出来事が浮かんでくる。
「そして二つめの質問は我々から君達に聞きたい。我々は労力と、犠牲を払いつつこの世界を維持してきた。我々はいわば君達が戦うために存在している。では、君達はなぜ戦っている?」
 その問いにプレ315は答えようとしたが、彼の思いを言葉にすることは出来なかった。突然彼の瞳は光を失い、地面に倒れた。
「皇帝陛下…。これは?」倒れたプレ315を見つめながらバーズ61が問いかける。
「どうやら時間切れのようだな。おそらく彼は村に切り捨ててもらうことで、『庭園』で英雄と合流しようとしたのだろう。」
「つまり、彼はここを偵察しようとしたのですか?」
「いや、彼はこの世界そのものを偵察しに来たのだ。まあいい。この偵察の結果、彼らがどのような答えを出すのか観察しよう。」

///////////////////////////////////////////

「僕の話はここまでです。そしてレジョネアさん、僕はあなたに聞きたい。あなたはなぜ戦っているんですか?」
 その問いに、レジョネア君は静かに眼を閉じた…。
0
タグ: トラビアン



2010/12/13  2:39

投稿者:ゆり

サンダー英雄さんに萌えw

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ