2010/12/31

レジョネアの嵐最終話「与えるもの」  大河トラビアン小説

レジョネア君たちの戦いは終わった。
 防衛兵の被害はそこまで大きくはなかったが、インフラを破壊されたWWは決定的な建設遅れを生じ、事実上競争からは脱落する事になった。食糧管理の問題からWW村の防衛兵も減らされることになり、レジョネア君たちは自村に帰還した。

「よお、レジョネア君、帰ってきたんか。」
「ええ、皆さんは食糧輸送ですか?」
「おう。まだまだ残っている兵士も多いから、これも仕事のうちだあ。」
 レジョネア君は村のはずれで商人たちを見送った。事実上敗れた今も、食料を送る馬車の列は止まらない。ゴールの日が近づいてもなお、日常の作業は続く。しかし、レジョネア君が戦いに必要とされることはもはやないだろう。
「平和ね…。」
 かたわらに座っていたカエザリさんがつぶやく。今のレジョネア君にとって、敗北の悔しさよりも今の平和が心地よかった。



 いつの間にまどろんでいたのだろう?レジョネア君がかすかな物音に目を覚ますと、集兵所から出撃準備の音が聞こえてくる。なぜ、命令は受けてないのに…。
「カエザリさん、起きて。出撃だよ。」
「え、そんな予定はないはずよ?」
 あわてて集兵所へ一緒に向かおうとする二人。しかし、それを待つことなく兵たちは出撃した。雑多な兵種で構成されたその部隊の先頭にはカエザリ2が立っている。カエザリ2は二人の姿に目を留めると静かに馬を降りた。

「レジョネアさん、我々は話し合った結果、最後の攻撃を決行する事になりました。」
「しかし、今の戦力では…。」
「ええ、全滅するでしょう。それでも敵に少しでもダメージを与える事が出来るかもしれない。」
 そう語るカエザリ2の顔に迷いはなかった。その決意は崇高なものだったが、レジョネア君自身はこの攻撃に賛成する事は出来なかった。レジョネア君が何も言えずにいると、カエザリさんがおずおずと切り出す。
「ごめんなさい、カエザリ2。でも、私は…。」
「もし来ると言ったら、力づくでも止めます。」
 カエザリ2はカエザリさんの手を取り、その手にゆっくりキスをした。
「カエザリさん、私はあなたが好きでした。でも私が好きなのは戦うあなたではなく、そうやってレジョネアさんのかたわらで笑うあなたなんです。」
 カエザリ2はそう言ってから馬に飛び乗った。レジョネア君はカエザリ2を呼び止める。
「この剣を。」レジョネア君は柄を向けて、自分の剣を差し出した。それはチュート16の剣だった。
「カエザリ2、武運を祈る。そして、必ず生き残るために戦うんだ。」
「分かりました。お約束は出来ませんが、全力を尽くす事は誓います。」
 チュート16の剣をかかげ挨拶してから、隊列にもどるカエザリ2。見送る2人の目の前で、隊列は見る見る小さくなっていった。

 それからどれだけ時間がたっただろう。あたりは夕闇が近づき、二人は身を寄せ合った。あたりをぼんやりと見つめるレジョネア君の視界の片隅に、一羽の鷹が映った。
「ふふ、仲がいいのねー」
 いつの間にか目の前に、花束を抱えた一人のナタール偵察兵が立っていた。それは、かつてレガティ12と言われた女だった。

「ここも懐かしいわねー。」
 彼女に促され、レジョネア君とカエザリさんは墓地をおとずれた。彼女は知り合いの墓標に1本づつ花を捧げていく。先生、プレ315…。そして、プレ25の墓標で足を止めた。その飾りのない墓標に目を向けながら、彼女は話し始める。
「私の任務は偵察だった。この世界には金貨を湯水のように使い戦いの趨勢を決めるエリートもいるけれど、多くの村長は歯車のひとつとして動く取るに足らない存在なの。そういった取るに足らない村の兵士達がどのような思いを持ち、戦っているのかをしらべるのが私の仕事だったのよ。」
 ふいに彼女はレジョネア君たちに体をむけ、鎧の前をはだけた。彼女の美しい体には、無数の醜い致命傷の傷跡が残っていた。目をそらす事の出来ないレジョネア君。
「私は死と復活を繰り返しながら多くの村を渡り歩いたわ。多くの戦争、略奪…。ただの不注意の為に餓死した事もあったし、無知ゆえに偵察兵でありながら攻撃に出撃した事もあった。そうして無数の村を渡り歩いても、結局私が帰りたいのはこの村だけだったのよ。」
 彼女はレジョネア君をまっすぐみつめ、聞いた。
「レジョネア君、あなたは『庭園』でプレ25に会ったのね。あの人は私の事をなんと言っていた?」
「ええ、会いました。でも、僕は何のメッセージを預かっていません。」
 その言葉に彼女の顔はかげった。レジョネア君は言葉を続ける。
「プレ25は、自分が伝えたい事は自分で伝えると、そして何か奇跡があればまた会えるかもしれないと、そう言っていました。」
「ふふ、それはプレ25らしい言葉ねー。」
 彼女は微笑み、再び墓標に目を向ける。
「ねえ、レガティ12.あなた達は愛し合っていたの?」カエザリさんがか細い声で聞く。
彼女はその言葉に小首をかしげた。
「わからないわ。だから私はそれを確かめたいのよ。」

「いいだろう。」
 何処からともなく声が聞こえた。

 次の瞬間、レジョネア君の顔は血に染まる。そして、ほとんど横に両断されたレガティ12の体がプレ25の墓標に崩れ落ちていくのが見えた。そして、そのかたわらに一人の男が立っている。それは何処にでもいそうな平凡な男だったが、レジョネア君には直感的にそれが誰か分かった。武器を構えたカエザリさんを制し、レジョネア君はその男に問いかける。
「あなたは皇帝陛下ですね?」
 男はゆっくりうなづいた。

「そうか、君がレジョネア君か。」皇帝はレジョネア君たちをまじまじと見つめている。今しがた行った殺りくに関わらず、彼のその顔は穏やかだった。しかし、カエザリさんは武器を下ろすことなく声を上げる。
「あなたは世界の主人なんでしょ!わざわざ、自分の偵察兵を殺しに来たわけ?一体何をしに来たのよ。」
「私は主人ではないよ。」
 その時、レジョネア君は彼を理解した。

「皇帝陛下。あなたは私達、いや、この世界の全ての登場人物の主人でした。そして、あなたは『ホスト』として私達をもてなしたのですね。」
 その言葉に皇帝は少し驚いたようだったが、やがて声を上げて笑った。
「そうか、君はその事にすら気づくのか。確かにそうだ、私達は君たちに世界を与え、もてなした。」
 そして、皇帝は真剣な表情を浮かべレジョネア君に問う。
「レジョネア君、君はもっとも平凡な村の平凡な英雄だ。君たちはこの世界の戦いに影響を与えなかったが、それはほとんどの村がそうなのだよ。多くの人々はただ仲間達を頼りに戦うのだ。
 だからレジョネア君。君をこの世界の代表として認め、問う。君はこの世界を楽しんだかね?」

 レジョネア君は今までの戦いを思い返した。先生と遊んだ穏やかな日々、死んだプレ25の前で突き刺したチュート16の体の感触、サンダー★に灼かれた自分の体、そして、英雄として自分の体に多くの兵士達の一部が宿っている事…。
 そして、自分の背中にカエザリさんの鼓動をハッキリ感じた。

「はい、僕達は楽しみました。」

 皇帝はその言葉を聞いて安どの表情を浮かべた。
「そうか、それならば良かった。」
 
 その時、地平に一筋に光が上った。その光は空全体に広がり、やがて薄れてゆく。
「どうやらここの戦いも終わったようだな。さらばだ、レジョネア君。今はこの安らぎを楽しみたまえ。その時間は貴重なのだから」皇帝は振り返りその場を立ち去ろうとする。いつの間にか下りてきた鷹は皇帝の肩に止まり、プレ25の墓標に倒れたかつてのパートナーに一瞥だけを与えた。
「皇帝、彼女は…?」カエザリさんは、その背中に問いかける。

「彼女はただのレガティ12だ。だから私は関与しない。」
 その言葉だけを残し、皇帝は立ち去った。

「レガティ12、笑ってるわ…。」
 カエザリさんはレガティ12の着衣を整え、その手を組ませた。その無残な最期にもかかわらず、その顔は穏やかだった。
「これもまた、皇帝の与えた贈り物なんだ…。」
 皇帝は彼女をレガティ12として殺した。それは確かに、レガティ12が最後に願った事だった。しかし、なんと美しく、そして恐ろしい贈り物なのだろう。今、彼女は『庭園』でプレ25と再会を果たしているのだろうか?それを確かめるすべは、死の無くなったこの世界ではもはや無い。  

「もう行こう、カエザリさん。僕達は敗れたんだ。」
 しかし、レジョネア君には敗北の悔しさは無かった。なぜなら、彼は自分の守りたい物を守りきることが出来たのだから。

「そうね。でも、もう食べ物の心配をしなくていいのって、素晴らしい事じゃない?」 
3
タグ: トラビアン



2011/1/8  13:39

投稿者:sizuXXXX

遅れに遅れて、やっと読みました><

いい終わりですねー
感想は、もういっこの方に書きます^^

2011/1/2  21:37

投稿者:runesa

最終回が31日に出るのは告知で見ていたのに。
いま思い出して見返しています。m(..)m
言い訳は、ちょっと4鯖が騒がしくてw。

本当に凄い大作になって、回想しながら読ませて頂いております。本年もよろしくお願いします。

2010/12/31  23:07

投稿者:kutan

美しいですね。
レガティさんがきっとすごく幸せだったのだろうと、それだけで十分満たされた感じです^^

最後のカエザリさんのセリフがお茶目で、映画のラストみたいな感じだな〜と思いました。
momoさん、本当に素敵なお話をありがとうございました。心から楽しませていただきました。
また次回作を楽しみにしてます。あ、田中くんシリーズもありましたね^^

http://youandmay.blog12.fc2.com/

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