2013/7/7

「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」飛 浩隆著  今日の読書

「グラン・ヴァカンス」といえば2000年代で最高のSF小説の一つであり、オールタイムでも絶対に上に来るであろう傑作である。しかし、仮想空間上に築かれた美しい浜辺で巻き起こる殺りくと蹂躙は、最もおぞましい読書体験の一つだろう。私は何回も読んで、何回も気分を悪くしてる。はっきり言ってしまえば、これを一般コーナーで売ってるのは絶対おかしい。うちの本棚でも、これとイアン・ワトスンの「オルガスマシン」はエロスの面でもグロテスクの面でも異彩を放つ本なので、あまり人の目にふれない場所にしまってある。

 そんなわけで映像化されるはずのない「グラン・ヴァカンス」だが、なんとこのたびコンテンポラリーダンスの大橋可也&ダンサーズが舞台化した。

 グラン・ヴァカンス HP

 絶対いやな思いするんだろうなあと思いつつ観劇。



 コンテンポラリーダンス、言ってしまえば前衛演劇なので具体的なストーリーは無い。主人公ジュールもヒロインジェリーもそれらしき姿があるだけである。それでも、この舞台は確かに「グラン・ヴァカンス」だった。上位の存在になすすべなく蹂躙され、ねじくれて死んでいく人々の死も、おぞましい食欲も、隠された情欲もすべてがある。あまりにグラン・ヴァカンスなので、正直途中で気分が悪くなってしまった。今後、この本を読むときは必ずこのヴィジュアルが目に浮かぶだろう。ドリフト・グラスが降り注ぐエンディングまで息絶え絶えでたどりついた時は、本当にほっとした。

 周りの客はダンスのファンが8割で、SFファンが2割といったところか。周囲の客は「よくわかんなかった」と言ってて、帰りに本を買っていった人も多かったようだ。これからまた悪夢にはまる人がいると思うと心が痛む。
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