2020/1/13

「この世界のさらにいくつもの片隅に」2019日  今日の映画

 アニメの当たり年である2019年最後の大きな作品。2016年に「この世界の片隅に」を見た時は衝撃だった。こんなに楽しく、こんなに美しく、こんなに恐ろしく、こんなにつらい作品があるのか。しばらくはこの映画の事しか考えなかったような気がする。今回は原作からカットされた部分を補筆した完全版という扱いになるのだろうけど、見てみると単なるアップデート版ではない、前作と今回の作品を両方見る必要がある作品だった。

 広島から呉に嫁いできたすずさん。彼女は呉の遊郭で遊女リンと出会う。それは幼い日に一度だけ出会った少女が成長した姿だった。心を通わせる二人だったが、リンが語った過去に一度だけ思いを寄せた男性、それが夫の周作だという事にすずさんは気付いてしまう…。



 前作と今作で変更されたところは実は無い。新しく描かれた部分は実は前作の時点でも起きたことであり、ほのめかされた部分がはっきりと描かれただけとも言える。しかし、自分の感想ではこの二つの作品はその意味も変わっているような気がする。

 前作のすずさんは、ある意味理想的なお嫁さんであり、だれもが愛するような魅力を持つ一種の聖女だった。我々はその姿から時々見えるほころびを拾って、その心を類推するだけだったような気がする。
 しかし、今作のすずさんは情念を抱いた生々しい女性として描かれている。自分は正直少しショックを受けた。しかし、情念を抱き、欲望を持つすずさんは前作よりも実在する女性としての重みを感じさせる、息遣いを間近で感じるような人物だった。

 多分、これらの姿を描くことで失われたものもあるのだ。前作が持っていた輝きはすずさんが重くなったことで背景に追いやられた。しかし、今作を見るとひとりの女性の年代記を見たような、ずっしりとした感動がある。

 繰り返しになるけれど、今作で描かれたことはすでに前作で描かれていたのだろう。前作の方が輝いて見えるなら、自分は前作の影の部分を見落としていたのだと思う。しかし、前作を見たことで今作の影の部分をはっきりと見ることができた。そして、この影はすずさんという女性を構成する重要な部分だという事もわかった気がする。
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タグ: 映画



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