2020/8/4

「アルプススタンドのはじの方」2020邦  今日の映画

 今回は、高校演劇大会で大賞を取った戯曲の映画化。昨年ラジオの影響で「フートボールの時間」を見てから高校演劇には興味があったものの、自分はあまり見ない青春物という事もありパスする予定だった。しかし、これまた周りからの熱いプッシュもあったうえに最近お気に入りの「佐久間宜行のオールナイトニッポン」でも絶賛されていたので、これは観ないとまずいなという事で鑑賞。中々合う時間がなかったため会社を早引けすることになったが、上映回数が増えてきており人気が出てきたみたい。

 そりゃ当然だよね。こんな傑作なんだから。

 甲子園の一回戦、強豪校と対戦中の高校。学校を上げての応援のアルプススタンドのはじの方に、この熱狂にのれない生徒たちが固まっていた。女子演劇部員の安田と田宮、元野球部の藤野、帰宅部でおとなしい女生徒宮下だった。熱血漢の先生厚木のうざいからみやブラスバンド部部長で野球部のエースと付き合っている久住との反目など、スタンドはめんどくさい事ばかり。しかし、回を追うごとに彼ら自身の問題に向き合う事になり、やがて応援の声を上げることに…。



 高校演劇は60分までがルールなので、この脚本を元にしたこの映画も70分。これは物語が始まる5回から9回までのほぼリアルタイムの時間である。
 高校時代は遠い昔だけれど大学で弓道部というはじの方の部活に所属していた身としては、こういう威勢の上がらない応援というのは実はけっこう経験している。そりゃルールが分からないスポーツを見ていても面白くないわな。もっとも、犠牲フライというよく考えれば不思議なルールについて演劇部が考えるシーンが映画館で一番笑いが起きたところである。色々なルールに詳しい私は藤野のポディションだったので、ここで二人を泳がす気持ちはよくわかる。
 しかし、一番重い気持ちをしょって野球を、いや、ピッチャーを見ていた宮下が物語に加わることで物語は一気に回転していく。宮下を演じた中村守里さんはアイドルらしいけど、結構アイドルを知っている自分も知らない人。ただ、この危うさを感じさせる佇まいは印象に残った。
 ここから実は4人が抱えていた鬱屈や悩みが開示されていく。それらの悩みは安田が印象的に言うセリフ「しょうがない」に象徴されるようにすぐには解決できるものではない。しかし、彼女らは最終的には関心がなかったフィールドの選手たちに励まされ、彼らを応援することで彼女ら自身も自分たちを鼓舞するのである。
 今まで多くのスポーツ映画があったけれど、「なぜ応援するのか」という点にフォーカスしたこの映画は観ている観客にも新しい感動を与えてくれる。映画館の中で、フィールドの選手たち、そしてこの4人を応援したくなるんだよね。

 そして、この映画はエピローグが素晴らしいと思う。あの時間が実はこの4人にとって人生を決定づけるよな時間だったことを優しく伝えてくれるんだよね。そして、私の様な大人の観客にとってのどに刺さったとげの様な宮下の「先生もスタンドじゃなくて監督として指揮をとりたかったんじゃないんですか」というセリフに先生がどう答えたかを教えてくれる。こんな一言のセリフにも物語を感じるほど、すべての登場人物がいとおしくなるんだよね。
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タグ: 映画



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