2020/10/12

「鵞鳥湖の夜」2019中  

 今回は中国の映画。今中国は発展の最中であり、すでに日本を追い抜いた部分も多いけれど、特にジャンル映画を見ていると韓国がそうであるようにまだ若い国だな、と思うことがある。「鵞鳥湖の夜」も今の日本からは生まれない、成長期の国の成長痛のような暗い痛みの映画のような気がするのだ。

 ヤクザ者チョウは縄張り争いの混乱の中、誤って警官を射殺してしまう。全国手配され報奨金をかけられたチョウは別居中の妻子の元に向かい、報奨金が家族にわたるようにしようとする。しかし、連絡員として現れた娼婦アイアイは、家族は来ないという。警察からも犯罪組織からも追われるチョウはアイアイとともに行楽地鵞鳥湖で身を潜め、家族との合流を果たそうとするのだが…。



 この映画、ストーリー的にも映像的にも昔の大映や日活の影響を大きく受けている。「このライティングは三隅監督だな」とか「このシーンは鈴木清順だな」とかいくらでも指摘できるし、にっかつがロマンポルノに行かなければ1970年代後半にこういう作品ができててもおかしくないと思った。
 というか、「セックスシーンがないロマンポルノ」という表現が一番近いと思う。すでに行き止まりにいて、終わり方だけを選択しようとする男。愛でも情でもなく。ただ状況に流されるままに男と行動を共にする女。ほとんどスラップスティックともいえるアクションは生き残る欲望ではなく投げやりな印象を感じた

 去年見た中では「ガルベストン」が一番近いかな。あの作品もエル・ファニングが映画の運命を決めてしまったが、この映画の主演女優のルイ・グンメイもまたはかない、しかし強い光を放っている。決して彼女がこの事態を招いたわけではないし、男の運命を決めたのは彼女ではない。しかし、男の運命を暗示する蝶のように見えるのだ。チョウも観客の我々もふらふらと飛んでいく彼女を追っていくしかない。

 最後にアイアイが決める選択。あれは情のように見えて、彼女自身の防衛本能のような気がする。自分が決めた報酬以外は取らない、それは彼女のクレバーさを表してるのだろう。
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