2020/10/29

「異端の鳥」2020チェコ、スロバキア、ウクライナ  今日の映画

 今回は正直見るのがためらわれた作品。予告編や評判を聞くたびにあまりに重いしパスしようかなと思っていたんだけど、どうやら今年を代表する映画でもありそうだという感じになってきた。今年はヨーロッパを中心に戦争を見直す映画が多いこともあり、これはやはり見なければなるまい、という事で足取り重く映画館に向かいました。

 意外にも、そこまで重くはない、なんなら見やすい映画だった。

 黒髪、黒い瞳の少年は戦争の難を逃れるため家族から離れ一人祖母と暮らしていた。しかし、その祖母の死をきっかけに少年は一人家族の元へと帰ろうとする。しかし、少年にとって外の世界は偏見や暴力に満ちた厳しいものだった。白く塗られたカラスのように迫害され、自身も多くの悪を目の当たりにした少年はやがて変貌していく…。



 時代としては第二次世界大戦中、場所は東欧のどこかという設定だけれど、映画ではそこがどこかははっきりしないし、わざわざ使われていない言語を劇中で使う事で場所が特定できないようになっている。これは出版されたポーランドで発禁になったようにナチス以外のユダヤ人迫害がまだタブー視されていることもあるけれど、「いつ、どこでも起こりうる」という効果もあると思う。

 旅に出た少年が最初に生活するのはまじないを生業とする老婆。彼女が少年を召し使いとして買い取ったのか保護したのかはわからないけれど、中世的な徒弟制度を思い出させる。そして、嫉妬に狂い妻を虐待する男や共同体の外にいて体を投げ出すニンフォマニアックな女など中世から近代にかけての罪のショーケースを見せられている様である。
 中でも最悪の虐待がキリスト教会の庇護のもとに発生するのも興味深い。教会の名のもとに共同体から追い出された少年はついに声を失ってしまうのだ。

 と、言葉にすれば厳しい事ばかりだけれど少年はそれらを何とか切り抜け、家族の元へと近づいていく。去年で言えば「存在のない子供たち」に近いけれど、少年の心が折れないから観客も映画を見続けることができる。
 ただ、ここが私の不満点でもある。人間の罪を一身に浴びる少年。しかし、逆に言えばこれらの人間の罪が少年が耐えうるだけのレベルに下げられてしまっている気がするのだ。その為に、これだけ力強く悪を描きながらも現実を描き切れてないと思ってしまう。
 もちろん、全てをフィルター無しで描いてしまえばそれはもはや映画ではないかもしれない。そもそも見ることが人には無理という可能性だってあるだろう。しかしそれでも、「一人の子供の物語」という枷を外して見てみたかった。

 しかし、この映画が過去の悪ではなく今にも通ずる悪を描いていて同時代性を感じてしまうのは悲しい事だ。
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タグ: 映画



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