2021/1/18

「薬の神じゃない」2019中  今日の映画

 今回もまた事実を元にしたフィクション映画。2020年はいったいこの言葉を何回言ったことだろうか。中国の社会派映画については政府による検閲も頭に入れておく必要はあるのだが、それを差し引く必要もないエンターテインメントであり、正義についての映画だった。

 香港でインドから輸入した怪しい強壮薬を売っていたチョウは、女房には逃げられ店も立ち退き寸前の状況だった。ある日、大家から白血病の患者リュを紹介される。中国では白血病の正規薬が高すぎて一般民衆には買えず、インドで売られているジェネリック薬を密輸してほしいという依頼なのだ。断り切れず始めた薬の密輸は大成功し、ダンサーのスーフェイや患者の英語を話せるリウ牧師などネットワークにも知られていく。しかし、それは摘発、逮捕の危険を増すことでもあった。やがてチョウは危険を回避するために密輸から手を引くが、かつての仲間の危機に彼が取った行動とは…。

 エンターテイメント映画だと、その国の人にとって最もヒロイックな行為は何なのかが見えてくるような気がする。日本だと傍観者だった人間が自分の意志で状況に飛び込む瞬間だと思うし、韓国なら利己的な人間が純粋に人の為に犠牲になることだと思う。アメリカなら様々な特徴を持った人間たちが団結する瞬間だし、インドなら強い男が女性にかしずく事だろうか。そして、中国では自分の利益をなげうって人の為に費やすことのような気がする。

 今回の主人公チョウは最初は何も持たない人間だが、密輸が軌道に乗った時に仲間たちや客たちにも自分の富を分け与える人間として描かれる。この時点で彼は優れたリーダーであり、実際に彼は密輸から手を引いた後にもそれを元手に成功するのだ。しかし、彼が真のヒーローになるのは自分が持っている物を手放す覚悟をして帰ってくるときである。彼は無欲で善良な人間ではないが、欲を知る人間が欲を捨てて行動する姿は欲を持つ人間、つまりすべての人間にとって美しい。
 もう一人のヒーローはチョウを追う立場の刑事である、義弟のツァオだろうか。彼もまた刑事としての権力を持ちながらその力を疑う知性を持つ。嫌っていた義兄チョウが犯罪者になった時に初めて兄を尊敬する。そして、その苦しみを隠しきれなくなっていく。

 実際に起きたこの事件の原因は中国の薬価の不公正さによるものであり、この薬については解決した。だからこそ映画化できたわけで、そこに欺瞞を感じる部分もちょっとある。しかし、過去の問題であれエンターテインメントとしてその問題に触れることは決して間違いではない。
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タグ: 映画



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