言葉数にこだわらない和句のリズムで心根を詠っています。
2021/1/12
煩悩の 数を打つ鐘
百八つ
気付かぬふりの 罪も年越す
恒例は 雷門より
続く列
カウントダウン 機動隊のみ
新年の およろこびをと
言えぬ年
はばかる言葉 「おめでとう」なり
元旦の 今年こそはの
欲願い
そんな邪心の 無き祈り人
浅草寺 ゆく年くる年
立ち合えば
そ知らぬ顔が 自粛と見ゆる
都心にて 感染せぬは
まぬがれぬ
高齢域で 夏を見るかな

2020/12/9
オリンピックの 年明けと
仲見世通り 人の列
白い吐息と 人群れと
香焚く煙 かすむ空
豪華クルーズ 客船が
横浜港に 停泊し
どのチャンネルに 合わせても
ニュース番組 ワイドショー
病外から 来るものと
一般庶民 傍観者
一人発病 テレビにも
遥か遠くの 他人事
お笑い大御所 急に逝き
お茶の間女優 後続き
さすが呑気な 国民性
手洗いうがい マスク無し
オリンピックは 据え置かれ
高校球児 涙顔
自粛規制の 飲み屋街
地方のシャッター 街に似る
雷門と 本殿の
仲見世動く 頭無く
やっと耳慣れ 中国語
ハングル奇声 聞かぬ日々
発症人数 新記録
そんな話題も 疎くなる
今月家賃 いかにする
師走自宅に 待機なり
後数日で 年の瀬を
世界の歴史 残る年
皮肉風邪さえ ひかぬまま
2020の 時を刻みし

2020/12/8
東京20 3区には
市町村まで 在る都
何故に棲み家に 台東区
心の師逝く 隅田川
上野目指した 出稼ぎ者
雪国家族 仕送りを
仕事終わりに 立ち飲みへ
覚えパチンコ 競馬場
怪我に弁当 自分持ち
日雇い労務 あぶれれば
3本立てで 500円
浅草六区 映画館
そんな人等が 暮らす街
なをも落ちれば ホームレス
当たり屋稼業 山谷道
労災指の 値踏み人
言問い通り ひとつ越し
当時日本の スラム街
吉原大門 泪橋
タクシーまでも 乗車拒否
時が流れて きちん宿
外国人の 客増えて
荒れた街筋 歳を取り
ジョーがつぶやく 明日はどっちだ

2020/12/6
浅草六区 演芸場
乙女ヌードは ロック座で
馬券外した ろくでなし
首がもつれた ろくろっ首
仲見世通り 伝法院
ホッピー横丁 煮込み臭
大衆演劇 のぼり揺れ
アナログ景色 立つツリー
南伸介 寅次郎
お笑い人等 顔写真
街路灯にて お出迎え
欽ドン欽どこ 欽曜日
16当時 松竹で
若手漫才 ツービート
テンポネタには 毒は無く
漫才ブーム 4年前
たけしの歌に 出る飲み屋
くじら屋号の 看板に
寄り添う様な 街路灯
シャイなたけしの 予約席

2020/10/7
彼の日旅した 東北路
乗り継ぎ列車 間が有りて
駅前出れば 八幡社
豊後の神が この地まで
深川八幡 大神輿
鶴岡八幡 鎌倉に
天下統一 秀吉の
遥か昔に 神は成す
ご神体様 天皇家
神話と民話 混ざる時期
文化交流 遣唐使
大仏建立 馳せ参じ
八幡様は すぐあそこ
日本一なる 分家数
町や村やら 集落に
祠残しつ 今も在り
マイナーイメージ 大分県
アジやサバをば 祀り上げ
「温泉県」すら 叩かれて
カボスすだちに 置いてかれ
そんな九州 国東の
宇佐八幡が 本やしろ
方言言葉 通じぬに
全国感化 流布の旅
遣唐使なる 「唐」の字を
唐揚げ読ます 時代風
中津唐揚げ 逃げ切れず
宇佐八百が 鼻差差し切る

2020/9/30
生まれ育ちも 九州で
田舎風習 身に付いた
おっとり気立て 世の流れ
そぐわぬ歩調 ビリっケツ
ツーシーターの フェアレディー
布団テレビを 押し込めて
首都高迷子 21
当ても無いのに 浅草へ
就職雑誌 分厚くて
正に世の中 バブル前
部長月収 2億なり
19の課長 2千万
自分が惚れぬ 商品を
コーディネイトの 嘘で売る
騙すつもりは 無きけれど
欲がからんだ 餓鬼が寄る
仏心を 得るために
捨てた故郷 遠くなる
家賃払うの 就業は
真摯な初心 そむくなり
肉体いつか 高齢者
残す家族も 居るで無し
ふいと見上げる 提灯に
次の世ではと こうべ垂るなり

2020/9/26
風に従う 雲が来て
影も無いのに 猛暑時
母に抱かるを グズったか
横断歩道 落とし物
せめて名前を マジックで
入れた世代は 昭和族
名無しごんべい 持ち主は
一人歩きも 出来ぬ歳
見くらぶ足は 28
大きく育て 真に受けて
ノッポのサリー 大人版
この子の靴に 記憶追い
何故かうろたう ママが見ゆ
困った顔の パパも見ゆ
本人だけが 大らかに
靴は成長 せんからに
プリーズミスター ポストマン
宛先住所 名前無き
無理な願いを 赤箱に
靴を託して 三度振り向く

2020/9/24
先の内閣 政策の
働き方の 改革で
支払い増して 休み増え
財布に余力 文字見えず
同じ時刻に 靴下を
履いて身支度 日常も
仕事無ければ 目が開かず
タバコが切れて 外に出る
趣味は「旅」だと もう言えぬ
ブログ更新 ネタも無し
それでも届く JR
割引パンフ ゴミ箱へ
コメントくるる 同郷者
秋を味わう 京都旅
そんな便りで 回顧録
心に残る レール音
政府後押し 旅企画
いかなるものか コロナ風
風見鶏では 羽ばたかぬ
休みふところ マッチせず
あぁもう一度 あの湯場へ
当時の湯治 当事者は
見た目似合いの 歳となり
馳せる想いは 四分六分の湯


2020/9/22
皇居見下ろす オフィスビル
地下の1階 端くれに
追いやられたる 愛煙家
広さ6畳 イモ洗い
自身の煙 気にせぬが
充満スモーク 寄せる眉
身動き出来ぬ 距離感で
前の婦人の 髪に吐く
世界レベルの 流行り病
絵に描く三密 喫煙所
「閉鎖」張り紙 バリケード
何処ぞで吸える ビル巡り
飲食店の 喪が明けて
旅行後押し 国策に
待ってましたの タバコ吸い
入場制限 4人まで
スモークルームに 列が出来
休み時間が 待ち時間
箱の四隅の 灰皿に
辿り着けるは 幸運者
吸い方吐き方 個性有り
気にはならない 今までは
飛沫煙で 見える部屋
よしてくれよの 癖多し
その吐く息は ブーッ!ざます
フーッ!とわざわざ 音を出し
ジェット噴射の 煙来る
顔に届いて うぅ〜〜っ…と見る
ブーフーウーを イジメるは
オオカミ荒息 家飛ばす
あんた吸い方 危ないと
心で小声 発すブタなり

2020/9/2
背なにおわれる 子の頃に
嵐となった 夜のこと
一人家族の 婆さまが
カッパを見たと 大真面目
便所の隅に 身を隠し
その手伸ばして 尻こ玉
抜いて悪さす カッパ談
ウンチの時は 祖母を呼ぶ
相撲ごっこで 投げられて
赤チン痕が 増す手足
カッパ相撲は 天下一
取らせてみたい 双葉山
次回映画の ポスターは
絵具手描きの 時代なり
モスラ ラドンに ガッパも居
ゴジラ ガメラの 影隠れ
清流日焼け 夏休み
銀色ハヤに 追い抜かる
お前の母も 川少女
妙な自信の カッパの子
不思議世界が 世のブーム
ネス湖ツチノコ UFO
カッパ所業を 考査する
妖怪よりも 異星人
月日流れて 京伏見
カッパの酒の 展示館
格闘相撲 強いはず
通りの向こう 「月桂冠」
みちのく秘湯 湯を巡り
酸ヶ湯下北 大湊
川のせせらぎ 吹く風に
男女浸かるは カッパの湯
ちょちょいのちょいで 屁のカッパ
そんな世の中 甘く無し
しばし噂も 途絶えたが
皿を降ろして 皿に乗るなり

2020/9/1
朝夕報道 ワイドショー
今日のコロナの 話題から
個人の苦痛 「数」となり
ひとっからげに 縛られる
金銭欲は 「夢」を見す
ブランド志向 縛る罠
自粛要請 受く人は
今月家賃を いかにする
がんじがらめの 「愛」が有り
縛りきれない 赤い糸
リモートワーク 待機では
出会うえにしも すれ違う
社会縛られ 安堵感
他人縛って 優越感
こそく家族に 縄を張る
真結びなのに すぐ解かれ
亀甲縛り 癖は無く
人を縛れる 徳持たず
お縄頂く 罪も無し
手枷足枷 縄が食い込む

2020/8/27
梅雨の雲間に 天の川
短冊願い にじむ文字
小枝運ぶは つがい鳩
ベランダゴミと 片付けり
雨よけ陽よけ 風もよけ
ネコやカラスに 気付かれず
無精の主は 窓開けず
マイホームには 一等地
去年近所の 苦情受け
神経質な 愛鳥家
羽ばたく音に 首を上げ
鳴かねばいいに 腰も上ぐ
巣に成りかけを レジ袋
可燃ゴミ日に 集め出す
わざとカーテン 荒く開け
ここはダメだと 仮の鬼
出物腫物 何とやら
排卵周期 読めなくて
避難ばしごの 隅に産む
小枝まばらに 二の卵
家族身寄りの 無き我が
フライパンの 広さ分
夫婦親子の 安住地
間貸しするのも 菩薩道
巣とは呼べない 形状に
温泉タオル 下に敷き
卵乗せ替え 親鳥に
酒の肴の レーズンを添ゆ

2020/8/23
浅草寺まで 徒歩5分
仁天門の 仁王前
スキップすれば 約2分
足がもつれて 転ばねば
アイドリングの 人生路
回転数は 1500
不必要なる トップギアー
いつもつまずき ノッキング
ワンツーパンチ 人生は
チータは足が 速いもの
3歩進んで 2歩さがる
何歩歩けば 幸来たる
コンドロイチン グルコサミン
階段部では 膝が泣く
真近ゴールが 見えぬゆえ
歩幅を狭く 手探りで逝く

2020/8/21
故郷の味は 味噌醤油
九州人は 甘味好き
無い物ねだり 浅草で
黒いうどんの つゆを吸う
幼き日々に 大分市
アーケード前 三角地
祖母に連れらる ラーメン屋
「東華そば」なる 醤油味
豚骨スープ 臭い吹く
換気扇の ぬるい風
油汚れの 店構え
良い味出すの 尺度なり
上京したて 青い頃
揺らすおかもち 出前カブ
スープこぼさぬ ラップ掛け
メンマナルトが 浮く器
いつの間にやら 東京は
各地ご当地 ラーメンや
創作店が 話題寄せ
見付け難きが 地元味
愚痴をつづった パソコンに
ネット仲間が くる返事
歌舞伎座裏の 銀座の地
大正時代の 味が在り
店の屋号は 「満福」で
屋台オヤジが 店を出し
今の店主は 三代目
「ラーメン」書かず 「中華そば」
銀座に似合う レトロ風
我も昭和と 若返り
これぞ東京 ラーメンと
湯気の向こうに 祖母の笑み見ゆ

2020/8/20
流行り病で 職止まり
ながい盆だと すり替える
昼と夜とが 逆転し
それをとがめる ひとも無し
まぶたを重く するクスリ
缶コーヒーより 安い酒
それも効かずに YouTube
好み出るのか 旅動画
生まれた赤子 捨てた母
今日は彼女の 誕生日
里に背を向く この身では
生死音沙汰 届かざり
残りタバコの 数かぞえ
重い腰への 言い訳に
入れたコーヒー ぬるくなる
時計横目に もう5時だ

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