ポ−ッと汽笛が軽く鳴り カンカン踏み切り置いて行く
鼻が恋する煤煙の 香り入るため窓を開け
山肌迫りて鳴く汽笛 これはトンネル近いぞと
両手広げて窓下ろす 昔取ったの杵柄か
大井の河原を見て下る 上げる煙は白き雲
この速度こそ丁度いい 汽車に驚きサギが飛ぶ
狙ったSL無きけれど 引き上げ時が功を成し
若返りの湯の後に 機関車我をば子に戻す
名物車掌は杉森さん 案内合間にハモニカで
リクエストまで受けて立つ 間違いトチリもご愛嬌
金谷の駅へと近付けば 実年齢へと巻き戻し
も少し居たい幼子の 心の部分が駄々をこね
越すに越されぬ大井川 奇妙なタイムスリップに
越して心の素直なる 幼き日の我湯気と消え行く
