鬼怒川駅前案内所 今夜の投宿決まらずで
漠然過ぎたるご相談 お宿の斡旋致し兼ね
観光パンフを受けもらい 老眼焦点合わぬ文字
携帯電話を押す際に 紙面近付け離したり
予約も無しに一人客 迷惑承知で頼み聞く
お部屋ご用意出来ますと ペコリと礼言う鬼の前
市営のバスに乗り込めば 2時間近くを山に入る
途中休憩有り難し トイレのついでに2本点け
川俣ダム湖に平家塚 蛇の形の滝が見え
間欠泉はと覗き込む バス酔いいつから忘れたか
バスの終点夫婦渕 降りれば硫黄が香り来る
リュック姿の人群れに 場違い普段着我れ一人
ここから先は山歩き 見上げるばかりの山緑
お宿に予約をした方は マイクロバスの迎え有り
トレッキングが目的の グル−プ個人が山に消え
デコボコボディ−の加仁湯バス どうやら我れの専用車
一般車輌は行けませぬ 手動で上げるバリケ−ド
いきなり渡る橋の下 湯舟行きかう人が見ゆ
ガタゴト揺られる未舗装路 懐かしきかな嬉しやら
バスの後輪滑る坂 眼下小さく夫婦渕
ガ−ドレ−ルがグネグネと いびつに曲がるは事故跡か
因果関係バスの傷 ハンドル持つ方いぶかしむ
加仁湯の提灯お出迎え 従業員と犬までも
雪かき車輌のショベルカ− 潰れたレ−ルの意味悟り
部屋を出てから6時間 昼時とうに過ぎし刻
出せるは蕎麦かラ−メンと 仲居さんが茶を注ぐ
俗世届かぬ山景色 川に落ち来る白き滝
風に遊ばる蝶が舞い 加仁湯と書いて秘湯ぞと詠む
