鳴子御殿湯駅で降る 駅前原っぱ下り坂
今来たレールをくぐる道 右手に廃墟の湯宿跡
側溝流れる水音は 田に引く用水初夏音色
齢計れぬ緑木に ちょっと邪魔さる宿看板
外光慣れた瞳にて 玄関暗さにうろたえり
電気掃除機止めて来る 仲居か女将か老婦人
右の廊下はひょうたん湯 真っ直ぐ進み名物の
コールタールの臭い立つ 混浴黒湯へ先ず参ず
浴衣夫婦はご同輩 大沼旅館の名が入り
湯巡り好じ出逢いの湯 脱衣の木棚は上選び
意識すれば臭い立つ 石油の香り苦にならず
湯底ジャリっと感ずるは 石化硫黄の砕け塵
石油の油を湯に変えて 石湯とシャレて濁りの湯
黒湯と言うほど黒くなし 蛇口の黒さを差すものか
二段に分かれた浴槽は 源泉違うを色で知る
滑らぬ様にコケぬ様 タオル捨て置きカメラ位置
高友旅館の個性湯が 肌に浸透する温み
野暮な上がり湯いたさぬが 微かなクセ湯肌着へと移る
